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43話 「運命の人の手掛かり」

 部室の前で潤と別れ部室に入るや否や背後から背中を押され直後ピシャリと扉が閉められる。


「ちょっと何」

「くぉらぁ! それはこっちのセリフだよ。何、潤先輩と何2人で一緒に登校してるの! ? 」


 そう声を荒げたのは翔子だった。隣で梨奈がため息をついている。


「ちょっと翔子そんなに詰めたら詩織は困るだけだって……でもアタシもびっくりしたよ。いつも通り待ってたら2人で歩いてくるんだから。何があった? 」

「何がって……それがワタシにも分からないんだよ。登校するつもりで家を出たら潤先輩がいて。デートに誘われて」

「「デート! ? 」」 

「う、うん……」

「やったじゃん詩織! 漸く運命の人と結ばれるんだね」

「そう……なのかな? 」

「詩織? 」


 二人は予想と詩織の反応があまりにも違ったのか心配そうに顔を覗き込む。その様子を見て詩織はありのままを打ち明ける覚悟を決めた。


「実は、気になっていたんだけど……潤先輩って本当に運命の人なのかなって」

「「え? 」」


 突然の告白に二人が目を見合わせる。


「……詩織はどうしてそう思ったの? 」

「文化祭の時、潤先輩ワタシが暗闇が怖いってこと知らなかったみたいだから」


 幼稚園の頃の思い出、昔のこととはいえ印象的なハプニングを忘れるだろうか? というのが詩織の考えだった。

 そのことを告げると二人は考え込む仕草をする。


「確かにそうそう忘れることじゃないよね。誰だか分かっていなかったとか? 」

「でもそのあと、先生とお礼を言いにも行ったよ」


 その時のことは鮮明と思い出せた。

 詩織は迷路から脱出し落ち着いた後、保育士に連れられ上級生のグループにお礼に行ったのだ。その際に自ら名前を名乗りお礼をした際に助けてくれたのは「おかだ」という名前の男子だと知ったのである。以降、潤は詩織の中で運命の人となった……はずだったのだが、ここにきてその前提が崩れてしまったのである。


「それで、詩織はどっちが好きなの? 」


 沈黙の後、梨奈が尋ねる。この問いに詩織は動揺した。


「どっちってどういう意味? 」

「潤先輩とその運命の人……どっちが好きなの? 」


 梨奈の問いが予想通りで思わずため息を吐く。潤が運命の人ではないという疑惑が生じた時点で避けられない問題だったのだが、詩織には答えにくい問題でもあった。それに何より……。


「大輝先輩の件もまだ解決してないし……」

「弟君がどうしたの? 確かに弟君の行動は謎だけど、今気にすることじゃないよね」

「ははは、そうだよね」


 翔子の指摘を笑って誤魔化すも詩織の心には大輝のことがずっと引っかかっていたのだった。


 〜〜

 放課後、家に帰った詩織はボーッとしていた。

 運命の人、潤、大輝。我ながら気になっているのが3人もいて決められないというのが贅沢に感じていたのだが、彼女の手元にのスマホの画面には『ごめんなさい』と潤宛のメッセージが表示されていた。

 ……運命の人はどうやって探そう。確実なのは、卒園アルバムはあるかな? 当時お世話になった幼稚園の田中先生に連絡を取ってみるとか?

 詩織が考えを巡らせているとビュオオと風が窓を叩く。

 ……停電とか大丈夫かな?


 家には自分しかおらずふと不安に駆られて懐中電灯を取ろうと窓に向かった時だった。


「どうして……」


 電柱の影に見えたものに対して思わず声に出す。彼女の視線の先には電柱で身体を隠しながらも彼女の家の様子を伺う大輝の姿があった。

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