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42話 「憧れの人との登校」

 職員室前の廊下に1人佇んでいると背後から足音が耳に入った。

 ……もしかして大輝先輩が戻ってきた?

 思わず振り返ると梨奈と翔子がこちらに歩いて来るのが視界に飛び込む。


「大輝先輩には会えたの? 」

「うん……」

「何その反応、もしかして弟君退学になっちゃったとか? 」

「そうじゃなくて」


 混乱しながらも2人の助けが必要とに先程の出来事を説明する。

 すると2人の表情はより深刻なものとなった。


「それって……自白したみたいなものだよね」

「梨奈もそう思う? ワタシもそう思う……ただ」

「ただ……弟君がそれを言うメリットはないよね」

「そうだね」


 翔子の意見に同意する。例え大輝の言ったことが全て事実だとしてもそれをわざわざ伝えるメリットは彼には一切ないように思えたからだ。


「もう推薦貰えなさそうだから開き直っちゃったとか? ほら人って非合理的な行動もする生き物だって言われてるし」

「相手を病院送りにする喧嘩なんてしたら確かにもう推薦は無理そうだよね」


 ……大輝先輩。あんなに内申点を気にしてたのに何があったんだろう。


 2人の会話を聞きながら一生懸命考えるも満足のいく答えは見つからなかった。


 ーー

 翌朝、詩織がバス停に向かって歩いているの肩をトントンと叩かれた。

 ……誰だろう? もしかして、大輝先輩?

 恐る恐る振り返るとそこには笑顔を浮かべた潤が立っていた。


「おはよう詩織」

「潤先輩、どうしてここに? 」

「詩織が心配で来ちゃったんだ」

「心配ってそんな……先輩の方こそ大丈夫ですか? その絆創膏」


 潤の右頬に貼られた絆創膏を見ながら詩織は尋ねると彼はそこを撫でて見せた。


「平気だよ一応検査したけど異常はなかったし、まあアザにはなったけどスポーツとかには支障ないから」

「ごめんなさい」

「なんで詩織が謝るのさ」

「それは……ワタシが倒れたりしたから。多分それが原因かなって」

「いやいや、それはない。俺が詩織のこと何も知らなかったのが悪いんだ」

「え……」


 ……ワタシの暗所恐怖症を知らなかった?

 ピシリ、と心にヒビが入った気がした。今まで信じてきた前提がひっくり返った衝撃で頭が真っ白になる。

 するとフッと温かい感触が両手に広がる。見ると潤が手を握っていた。


「だから、もっと詩織のこと知りたいなって。今度の日曜日、どうかな? 一緒に遊びに行かない? イオンとか」

「遊びにってそれって……」


 それは数分前までの詩織にとっては夢にまでデートの誘いで即答するだろうと思われるものだった。ただ今の詩織はそうすることはできなかった。


「すみません、考えさせてください。最近、成績が悪くて勉強しないといけないかもなので」

「わかった、じゃあライン交換しようか。これが俺のやつ、返事はラインで構わないから決まったら聞かせて」

「はい」


 言われるがままに潤とラインを交換したその時、視界の隅にバスが走ってくるのが見えた。


「先輩、バスが来ました……急ぎましょう! 」

「おっと……わかった」


 詩織が駆け出すと潤も彼女の後を追うように走り出した。



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