33話「ゲーム」
詩織、大輝とその妹、友恵の3人ですごろくゲーム柿太郎電鉄が表示されている画面を見つめる。詩織はこのすごろくゲームをやるのは初めてだったが流石人気のゲームということもあってルールも分かり易くあっという間に慣れてしまっていた。
「あ、とっかえっこのカード。じゃあ兄ちゃんの持ち金頂き」
「待った、そういうのは今1位の俺にじゃなくて強運NPCのサクタのために取っておいた方が……」
「やりーこれで1位」
「じゃあワタシもスリのカードを大輝先輩に」
「待った待った俺一転して4位だぞ! ? 」
とゲームの力で信じられないことに打ち解けた詩織と少女は結束して大輝を追い詰めていった。
そして数時間後……
「やったーワタシ2位! 」
「私3位、流石です詩織さん」
「友恵ちゃんも凄いよ」
詩織はすっかり仲良くなった友恵とハイタッチをする。その傍らで大輝は1人うずくまっている。
「案の定サクタが1位じゃないか。何で2人して4位の俺を集中砲火するんだ。こんなの柿鉄じゃない……」
「まあまあ、良いじゃないですか」
「そうだよ兄ちゃん、たまには私が勝ってもいいよね。というわけで4位の兄ちゃんがジュース持って来て」
「うぐっ……分かったよ」
と大輝が立ち上がった直後だった。フッと明かりが消え辺りが漆黒に包まれる。時刻は既に18時過ぎ、遅い時間ではないが秋に差し掛かった季節では日が落ちるに十分な時間だった。
「あ……」
……何も見えない、ここはどこ? 嫌。誰か助けて! 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い……
突然の暗闇に詩織の脳内はパニックになり恐怖心に包まれる。
「嘘、停電? 」
友恵の声が遥か彼方で聞こえた気がしたがすぐに恐怖心により記憶から消え、詩織の体が震え動悸が早まる。
「ハア、ハア、ハア」
「ちょっ、ちょっと詩織さん大丈夫? 」
尋常でない様子を心配したのだろう。友恵が声をかけたその時だった。パッと暗闇に小さな光が生まれる。
「これで少しはマシになるかな? 」
声の主は大輝だった。その手にはスマホが握られている。
「ハー……ハー……」
……良かった、大輝先輩と友恵ちゃんがいる。僅かな光を頼りに2人の姿を捕らえた詩織の呼吸が整い始める。それを確認すると大輝は腰を落とし彼女と目線を合わせる。
「同じようにスマホでライト機能を使って灯りを、友恵もそうしてくれ」
僅かに震えが残る手で言われるがままにスマホを取り出しライトを作動させる。友恵も同じようにしたお陰で部屋は随分と明るくなった。
「よし、多分ブレーカーが落ちたんだろうから戻しに行って来る。2人はここで待っていてくれ」
「それなら、ワタシも行きます」
「無理しなくていい。ブレーカー直すのなんて慣れているし1人で行くよ」
詩織の提案を拒否すると大輝は1人で廊下へと消えて行った。
「ごめんね、急に驚かせちゃって」
「いえ、こちらこそごめんなさい、詩織さんが暗い所が苦手なこと知らなくて」
「初めてだから仕方ないよ、ワタシも話していなかったし」
謝罪のつもりが友恵からも謝罪の言葉が来たため慌ててフォローをする。
……これだと、初対面じゃない人には話しているみたいだなあ、大輝先輩には話していないんだけど。
大輝が自分の暗所恐怖症をどうして知っていたのか、会話の流れから友恵に振ることもできない詩織は答えを探るべく頭を働かせ始めた。




