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28話「押してもダメなら」

「バラバラ殺人の犯人って捕まったんじゃないの? 」


 暫くして生徒が作業に戻り始めると詩織は2人に尋ねるも2人は肩をすくめた。


「真犯人は他にいる! とか? 」

「あーミステリーで定番の? でも警察が捕まえたなら間違いないんじゃないの? 」

「それが犯人は未だに容疑を否認してるんだって、そこも誤認逮捕を疑った理由じゃないかな? 」

「そうなんだ」


 相槌を打ちながらこっそりスマートフォンを出して事件について検索する。

 ……本当だ。

 そこには逮捕の決め手は2つの現場で男性を見たという目撃証言だったこと、梨奈の言う通り逮捕された男性が容疑を否認していることが記されていた。


「思うんだけどさー弟君が犯人なんじゃない? 」

「え、大輝先輩が? 」


 ……大輝先輩が犯人だなんてどうしてそんなことを言うんだろう。


「その根拠は? 」


 突然の翔子の一言に詩織は戸惑っていると莉奈が冗談交じりに尋ねる。


「いや、弟君なら替え玉とか簡単かなって、頭良いし」


 ……それぐらいかあ。

 明確な根拠がないと知り安心した詩織は口を開く。


「大輝先輩には無理だよ、そんなことできるならストーカーなんてしないだろうし、それにストーカーされてるワタシが無事なのもおかしいし」

「む……詩織は随分弟君の肩を持つんだね」

「えっ……あ、違うよ。でも殺人とかはしないかなって、ストーカーだけど」

「でも、弟君みたいな頭良い人ってストレスの解消法とかえぐそうじゃない? 」

「そういえば、詩織は大輝先輩の趣味とか聞いた? 」


 莉奈に尋ねられて大輝との会話を思い出してみる。しかし、趣味などの会話をした記憶は思い浮かばなかった。


「聞いてない……かな。この前も参考書買っていたし」

「それはまずいよ詩織、翔子の説を否定できない」

「待って、でもエアホッケー凄い上手だった。ぼこぼこにされちゃったよ」

「なるほど……エアホッケーね。誰とやっているんだろう」


 言われて詩織はハッとする。エアホッケーは1人では出来ないからだ。大輝はプライベートでも彼女ばかりか友人とも仲良くしている様子はなく基本学校でも図書館にいるイメージだった。

 ……大輝先輩、誰とエアホッケーしているんだろう。

 ガムテープを手にグルグルと巻きながら考えたその時だった。


「うお、詩織。前! 前! 」

「え」


 言われるまま前を見るとそこには本来2重で良い所を何重にもガムテープを付けられた段ボールの姿があった。


「どうした、大丈夫か? 詩織」

「平気平気」

「何考えていたのさ」

「え、まあ……エアホッケー自信あったのに負けて悔しいな〜って」

「あーテニス部としては屈辱だよね」

「関係あるのそれ? 」


 詩織は咄嗟に話を()らすことができて安堵のため息を漏らしながらガムテープに手をかける。


「待った、今剥がすと段ボールまで剝がれちゃうかもしれないからそのままでいいんじゃないかな? どうせ本番は暗くて外側の様子何て分からないし」

「そ、そうだね」


 莉奈の指摘で詩織は手を引っ込める。

 ……剥がしたかったのになあ。

 と詩織はいびつなガムテープのの重なりを見つめながら片付けられないことを悔んだ。


 ~~

 20時過ぎ、詩織は下校するべく莉奈と2人で懐中電灯を手に歩いていた。


「今日も乗せてもらって悪いね」

「そんなことないよ、最近は本当に迷惑かけてるし……でもお母さんが迎えに来てくれているとはいっても校門まではこうやって歩かないといけないのは慣れないな〜」


 詩織が身を震わせる。暗所恐怖症の彼女にとっては校門までの僅か数十メートルすらも苦痛だった。


「まあそうだよね……」


 梨奈が神妙な面持ちで答えた直後だった。


 ドンドンドン


 2人の背後で足音が響く。懐中電灯を持って歩くのは目立つため敢えて生徒が帰ったであろう時間まで作業をしていたため2人は思わず立ち止まってしまった。


「あっ……忘れ物したかも」

「えっ……あっそれは大変」


 梨奈が咄嗟に立ち止まったことを取り繕ったのだと気付き詩織は慌てて付け足すと背後に気を配りつつ懐中電灯とともに梨奈のバッグを覗き込むフリをして顔を近づけた。


「もしかして、またストーカー? 」

「……かもしれない」


 2人が立ち止まると背後の足音も止んだことを意識しながら詩織は答える。


「でもどうして? 」

「もしかして、詩織がしばらく家庭教師を断ったから……とか? 」

「それで? 」

「寂しい思いになっちゃったんじゃないの? 」


 梨奈が肩をすくめる。

 ……それだけで? それじゃあ弟というより甘えん坊の息子みたいじゃん。

 恐怖よりも呆れが勝った詩織は思わずため息を吐いた直後、スマートフォンが揺れた。そこには母から校門付近に到着したとのメッセージが記されている。

 ……もしかしてこれはチャンス?

 思わず詩織の口元が緩んだ。

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