27話「行方不明者」
放課後、詩織達が文化祭の準備をしているといつもは職員室にいる中井先生がガラリと入ってきた。
「先生、ちょっと……」
「何かしら」
中井先生は先生と何やらヒソヒソ話を交わすと先生は血相を変えて振り返り詩織達に視線を向ける。
「皆さんは引き続き準備をしておいてください」
大きな声でそう言うと先生は扉をピシャリと閉めて出て行った。
「なんだろう? 何かあったのかな」
「弟君がストーカーしているのがバレたとか? 」
「ワタシストーカーのことは2人以外に話してないから」
「違う違う。他の子他の子、ほら日曜日に限っては用事があるだとか言って詩織に見向きもしなかったんでしょ? ああいうのって1人だけを狙ってるとは限らないから」
「そういうものなの? 」
「そういうものだよ」
「いやまだ先輩だとは決まってないっしょ」
断定するような口調の翔子に梨奈がツッコみを入れる。
「じゃあ梨奈はなんだと思う? 」
「何って……先生の身内に何かあったとか? 」
「なるほどその線もあるね。詩織はどう思う? 」
「え? 」
……どうって何も浮かばないんだけど。浮かんでいたらとっくに喋っているよ!
詩織の心の叫びは翔子には届かず彼女は無言で詩織を見つめる。
「どうって……少なくとも良い話ではなさそうだよね」
「だね。しかもわざわざ職員室に行くってことはとびきり」
「バラバラ殺人が続いてたとか? 」
「「……」」
「え、あ、いや……それはないよね、流石に物騒すぎるし文化祭も無くなっちゃうかもしれないし」
何となしな思いつきな発言に対して2人が目を見張ったので慌てて取り繕おうと試みると梨奈の顔が余計に強張った。
「……それかも」
「え? 」
「いや梨奈、詩織の思いつきだから」
「でもあり得るよ。バラバラ殺人なら文化祭が出来るかも分からなくなって会議が必要だろうから」
「いやそれは……」
詩織は何気ない一言がここまで広がったことに困惑しながら自らの予測が外れていることを祈った。
〜〜
それから数十分、バラバラ殺人の話で盛り上がる2人に相槌を打ちながら段ボールを貼り付けているとガラリと扉が開き先生が息を切らしながら教室へ入って来た。
「ぜえ……皆さん……はあ……緊急ですがホームルームを始めます。作業を止めて着席……は無理ですね。その場に座ってください」
準備のため教室の後ろへと追いやられた机と椅子を一瞥し先生は言う。
「なんだなんだ」
「もしかして……」
突然の作業中断に驚く生徒に加え何かを悟ったような生徒がいたが、大人しく生徒が座るのを待ち先生は話を始めた。
「お知らせがあります」
「バラバラ殺人に進展でもあったかー? 」
「……」
「……マジかよ」
突然の生徒の野次に黙る先生、言葉はなかったものの野次に対して強気に出られないその態度が深刻な事態を物語っていた。
「……まだ関連性は分かりませんが、三原高校の生徒が3日前の日曜日から家に帰っていないことが判明しました。現在警察が捜索していますが手掛かりもなく……」
「都会と違って監視カメラとかないからね」
1人の生徒がポツリと呟く。
「そういうわけで、文化祭ですが……警察が犯人を捕まえた以上現時点ではバラバラ殺人との関連性はないものと考え、文化祭を行うこととなりました」
先生の文化祭を行うという宣言に普段の勉強しなくていいというクラスのメンバーなら大歓声を上げていただろうが、今回はそうはならず誰一人として言葉を発さなかった。
「皆さんの不安も分かりますが、当日は警察の方も万が一を考えて見回りに来て下さるということで、勿論他にも色々と安全を考慮してさせていただきます……ではこれで、皆さん準備に戻ってください」
先生はそう締めると教室を後にした。
……準備に戻ってくださいなんて言われても。
詩織が重い空気が流れている教室を見渡したその時だった。
「考えてみりゃ被害者は全員女性なんだろ? それなら俺達には関係ねえわ」
「言われてみりゃそうだな。お前、頭良い~」
田中と中田が突然そんなことを口にすると笑い出す。直後にバン! と床を叩く音が響く。
「ちょっと、あんた達、そんな他人事みたいに」
「そりゃ他人事さ、だって俺達、狙われる価値ある女性様じゃね~もん」
「そうだ品川、もし犯人が殺す相手に困っていたらお前を推薦してやるよ」
「バカなこと言ってるんじゃないわよ、田中と中田じゃ犯人を突き止めるなんて100年かかっても無理だろうし出来たとしてもその時点で交渉の余地なく殺されているわよ」
「ったく、冗談だって。冗談通じねえのかよ」
「言っていい冗談と悪い冗談があるわよ! 」
眼鏡をかけた品川がピシャリと言う。彼女はいつもこのように田中と中田の冗談交じりの言動に反応しては注意を行っていた。
……いや、そもそも犯人はもう捕まったんだよね? なんで犯人がまだ捕まっていない体で話しているんだろう?
詩織は3人の会話に疑問を抱くも言葉にすることは出来なかった。




