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19話「作戦会議」

「それで、その後はどうなったの? 」


 翌日の日曜日、詩織は莉奈を部屋に招き昨日の大輝との出来事を話していると急かすように言う。


「どうって、何ともなかったよ」

「何もなかったってそんなわけないよ、だってストーカーに抱えられてるんだよ? 家に連れ込まれたりしなかった? まさか(おど)されているとか? 」


 テーブル越しに身を乗り出して食い気味に莉奈が尋ねるも詩織は首を横に振った。


「本当に何もなかったんだって、バス停の近くまで来たら降ろしてくれてバイバイって」

「……信じられない」


 莉奈が額に手を当てる。実際、これは詩織にも未だに信じられない事であったが、大輝は追跡者を撒いたと見るや否や詩織を下しバス停まで連れて行き彼女を見送ると去って行ったのだった。


「あ、でも1つだけ」

「何? 」

「走ったせいで大輝先輩のたこ焼きがぐちゃぐちゃになっちゃった」

「……は? 」

「ごめん、でも本当に本当にそれくらいしかなくて」

「あれかな、自分といる間は何もしないで離れそうになると狂暴化するタイプなのかな? 」

「……」


 言われて考える。確かに1日無事に過ごしたからと言って安全とは言えない。むしろ、見かけたのは自分が潤とデートしていた時だった為、離れて行くときにと言う莉奈の説はあり得るかもしれない、と詩織は結論を出した。


「でも、どうしよう。それなら諦めて貰うしかない……」

「そうだね、詩織が意図的にやったのは参考書を選ばないとたこ焼きを食べなかった……か。たこ焼きを食べなかったのは正解だよ」

「どうして? 」

「何入ってるか分かんないじゃん」

「でもお店のだよ」

「そうだけど、ゲームセンターの近くで待ってたなら買ってから持ってくるまでに何か入れられてる可能性があるでしょ? 」

「そっか……そうだね」


 莉奈の言う事に同意を示す。だが、引っかかるところがあった。


「……でも、大輝先輩はそういう事しないと思う」


 理由は分からない。ただ、詩織は伝えられずにはいられなかった。しかし、これには莉奈も眉をひそめた。


「そういう事しないって……ストーカーだよ? ストーカーに常識は通用しないと思うけど」

「そう……かも」


 反論をしておきながらすぐに自分の意見に肯定した煮え切らない態度の詩織を見て莉奈は怪訝(けげん)そうに尋ねる。


「もしかして……惚れちゃった? 」

「え……? 」


 思わぬ莉奈の発言に詩織の頭が一瞬真っ白になるもすぐさま我に返ると両手をぶんぶんと振る。


「そそそ、そんな事はないよ! だってストーカーかもしれないんだよ! それにデートなのに制服で苦し昼休みはいつも1人でいるし服も自分で買えないし」

「……いや、ごめん。そこまで必死に否定するなんて」

「するよ。それは、ワタシは潤先輩一筋だし運命の人だし……ただ、弟みたいとは思っちゃったかも」

「なるほどねえ、シスコンの弟って事か」


 ため息を吐きながら莉奈は口にする。


「まあ、詩織がそれならそれでいいんじゃない。でもそうなると大変かもね」

「何が? 」

「この後の話、何か今日は予定あって会えないんでしょ? それで本命は潤先輩だから学校内でも悟られないようにしているとなると会う機会無くなるじゃない」

「今まで通り放課後で良くない? 」


 意味深な事を言うので詩織は警戒したものの何の変哲もない事だったのでさらりと答える。しかし、これに対して莉奈はまたもやため息を吐く。


「やっぱり先生の話を聞いてなかったか」

「話って? 」

「昨日言っていたでしょ? ここ一週間何もなさそうだったら部活も再開して文化祭の準備も始めるって」

「そういえば、そんな事聞いたような気も……え? 」

「そう、もう準備が忙しくてしばらく放課後は勉強会どころじゃないよ」

「嬉しいような、悲しいような」

「やっぱり悲しいんだ」

「そういう事じゃなくて、ほら放課後ゆっくり出来なくなるな~って」

「なるほどねえ」

「それに、弟にしばらく会えないのを寂しがるのはお姉ちゃんとして当然だよ」


 詩織が何とか自らの感情を正当化しようとすると莉奈はすかさず


「自分と同じ位弟思いのお姉ちゃんを持って先輩も幸せだね」


 と皮肉めいた返しをする。

 ……莉奈にも適わないなあ。

 としみじみと思った。

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