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16話「参考書」

 先程とは打って変わり大輝に手を引かれ詩織は3階の書店へと辿り着く。


「あの、先輩、実はワタシお金が」


 余りに彼の目が輝いているので気合入れて何冊も選ばれたら買えないと正直に白状する。


「そう言う事なら、さっきのお礼も兼ねて奢らせてもらうよ。1冊だけだけど……」

「ありがとうございます、有難いです」


 ……2つの意味で。

 イメージしていた大輝と話を合わせるために夜中まで数冊の参考書を勉強する姿を打ち消し安堵(あんど)のため息を漏らす。


「そこで相談なんだけど、世界史と日本史どっちが良い? 」


 ……どうしよう、最初に聞かれてから数日経ったのに決めていなかったよ。

 不意に尋ねられて詩織は頭を抱えるとそれを見て大輝が笑いながら


「その様子だと決めてなかったか、先生曰く世界史は横で日本史は縦の繋がりを意識するらしい……あれ逆だったかな? とにかく今、参考書を見ながら決めよう」


 と言う。それを聞いて詩織も笑った。


「ちょっと待て、何でそこで笑うんだ」

「いえ、大輝先輩も勉強の話題で曖昧な所とかあるんだなって」


 そう言うと彼が面食らったようだった。


「そんな風に見えてたのか……俺も天才じゃないからな、何度も繰り返して頭に叩き込んでいるんだよ。逆を言えば頑張れば俺と同じレベルにはなれるってこと」

「先輩と同じレベルって……四条のトップで何でここに来たとか言われるレベルじゃないですか」

「まあ、そんな感じ。そういう意味では推薦の1つは貰えて安泰かもしれない、四条には国公立と公立への推薦も1人分くらいはあるみたいだから」


 ……知らなかったけど、四条にそんな凄いのがあるんだ。

 国公立の推薦と聞いて心が弾む。通常、国公立大学に合格するには3年生の1月に行われるマーク式の大学入学共通テストと言うので国語、数学、理科、社会、英語の5教科からさらに数学と文系なら社会から2科目を足した5教科7科目で高得点を取り、かつ筆記の2次試験で数科目を選択し、そこでも高得点を取る必要があるのだが、推薦があればこれらの試験を飛ばして面接だけで合格を決めることが出来る、謂わばプラチナチケット、それが国公立の推薦だった。そして、そのプラチナチケットを誰に渡すかは学校側の判断に一任されるため成績はおろか普段の生活、部活動への取り組み等も評価されている。

 ……先輩は推薦で安泰何だろうなあ、凄いなあ。あれ、でも推薦って面接をやるんじゃなかったっけ?


「先輩、面接は大丈夫ですか? 」


 詩織が尋ねると思いの外クリーンヒットだったようで大輝は苦笑いを浮かべた。


「……ここでその話を蒸し返すとは。詩織さんってもしかして俺より頭の回転が速いんじゃない? 」

「別にそういうつもりじゃ、ただ心配になっただけで」

「それなら、いざ学校生活の事聞かれたら今日の事を上手くまとめて答えるよ」

「なっ……」


 思わぬ逆襲に詩織の顔が熱くなる。

 ……やっぱり大輝先輩には適わない

 と彼女は思った。

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