表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

うちのダンナ詩集

命は光る・光れないわたし

作者: 陸 なるみ

「うちのダンナ詩集」の一編です。死別・喪失の苦手な方は読まないでください。



グラジオラスの球根を掘り起こした

20年前から砂利の間に咲くその花は

どんどん増えて色も場違い

移植先は決めたけれど

お饅頭のような塊が

いくつもいくつも、そう30個も

砂利の下の土層から出てきた


大きな球根が固まり合って

その周りにできたての子供たち

どんなに気を付けて拾い上げても

砂利と泥に紛れてしまう

小アジアから来た野生の花は

繁殖力も旺盛でほんの小粒から数年

また咲き始めてしまうだろう


軍手を脱いで無数の粒を抓み集める

砂利と泥を敷石の上に薄く延ばして

小指の爪の四分の一ほどの

オーガニックな茶色を拾う

なぜ拾えるか、考えた――

土だって似たような色

同じサイズの砂利もあるというのに


曲率、生き物の持つ丸みだろうか

涙の形の完璧さだろうか

皮がひげのようにささくれてるからか

モノとの、石との違いの究極は

なぜか光るからか――

まるでここだと自己主張するように

自分も連れて行ってくれと


生きているということだろうか

ではあの日最後の息を吐いたあと

みるみるうちに黄色く変わったあなたは

いつから物体だったのだろう?

部屋から追いたてられても居座れば

あなたと死体の違いがわかったのか?

お棺のあなたは見せてもらえなかったから


命は光るのだろうか

と思ったところで頭上にコマドリの鳴き声

ひとしきりさえずると降りてくる

わかっているから手を止めた

敷石の上の私の膝小僧の先10センチ

ひらりと舞い降り横目で見つめる

濡れ色に光るみみずをついばむ


英国では小鳥は

死者の魂を乗せるらしい

ではコマドリはあなたか

光るくちばしと光るみみず

グレーとオレンジの羽毛の光沢

ぴょんぴょんと前を横切っていく

光れない私を繋ぎ止めていく


球根や小鳥に心を預けるほど

私はまだまだ危うい

光れない私はきっとよほどあやうい……





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i517735
バナー作成:秋の桜子さま。ありがとうございます。
― 新着の感想 ―
[一言] 命は、光るのかもしれないと思えました。 少なくとも、魂、想いの欠片というものは胸のうちで光る、輝きを放つように思えます。 それは相手から想いとしていただけた、その命の欠片のようにも思えたり…
[一言]  物を夢中でさわって、じっくり見て、少しずつ思考を飛ばす過程が、私の詩と似ているような印象を受けました~ (良い悪いではなく見てて懐かしいなぁ~と感じました。)  自然を見られて、触れて、感…
[一言] 生きている それだけでいいんです 太陽だってきっと自分が光ってることは知らないんです 自分の光を反射してるものを見て 「お、あいつ光ってるなー」 なんて思ってるんですよきっと ねえさまも光っ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ