第21話 待たせたね
大町小町の妹、小梅は信州のM駅に降り立った。
姉の跡を追って、この地までやって来たのである。
「わあーー、気持ちいいーーーー」小梅は思わず声を上げてしまう。
駅ビルを抜けて駅前広場に出ると、都会とは違う爽やかで心身を優しく包み込んでくれるような風というか空気を感じた。その感覚は同時に、どこか懐かしさを想起させるかのような感覚だった。
空は青く晴れ渡り、柔らかな清々しい風が身体中を清らかにするとともに鋭気をも与えてくれるかのように思える。
姉である小町の現在位置を確認するため、スマホを取り出して位置情報アプリを開くと、姉の位置を示す赤いマークがマップ上で点滅している。
姉がM駅から歩いた軌跡も表示されているので、その軌跡を辿って追いかけることができる。
小梅としては気持ちに余裕があった。姉の所在は把握できているから。
まるで一人旅を満喫するかのような表情で改めて街並みを見渡した。
「よ〜し! この爽やかな風に乗って、いざ、お姉ちゃんのもとへGO!」
足取り軽く小梅は城下町を歩き出した。
▽ ▼ ▽ ▼ ▽
――亮の祖父母の屋敷――
亮の祖母が用意してくれたご馳走をしっかり平らげた愉快な仲間たち四人は、亮が例の理由を語り出すのを持ち侘びていた。
「いや〜、亮のおばあさんの料理は最高だね。あまりに美味しいので残さずに全部食べてしまったよ」
冲也が切り出した。
「本当に美味かったぞ! こんな美味い飯は久しぶりだったし、毎日でも馳走になりたいものだな」
料理の話に達也も乗っかってくる。
「そうよね。私もこのお料理はとっても気に入ったわ〜。滅多に見ない山菜や川魚も美味しいし、なんと言ってもお蕎麦が美味しくて最高〜!」
小町も喜んでいる。
「そんなに喜んでもらえたら祖母も大変喜びますよ。祖母の手料理が皆さんの口に合って僕もホッとしました」
「ところで、亮。みんなもしっかり満腹になったことだし、さっき冲也に言ってた通り、そろそろ俺たちがここへ来た理由を教えてくれてもいいんじゃねえのか」
楊枝を咥えながら史龍がそう言うと、冲也も達也も、そして小町も真顔で亮に視線を向ける。
「そうですね。皆さんの早く知りたいという気持ちはよ〜くわかります。しっかり腹ごしらえも出来たことですからね。では皆さん、僕について来てください」
「どこか別の場所へ移動するのかい?」冲也は素朴な質問を投げた。
「行くのは、この家の敷地内ですよ。あっ皆さん、念のため貴重品なんかは身につけてきてくださいね」
亮はそう言って座敷を出る。そこへ祖母がやって来て声をかけた。
「あら、皆さん、もうお食事は済んだの? お口にあったかしら?」
「おばあさん、ありがとう!! と〜っても美味しかったです〜♡ 最高のお料理でしたわ」
小町が全員を代表するように亮の祖母に感想と礼を述べた。
他の三人も続いて礼をした。
「亮ちゃん、お出かけなの?」
「皆にこの家の中庭や蔵なんかを案内してあげようと思ってね」
「ああ、そうだったわね。おじいさん、今日は一日出掛けていて留守だけど、亮ちゃんが蔵の中に入ることを許してくれたわよ。今、蔵の鍵は開けてあるからね。でも、中の物を壊さないようにくれぐれも気をつけてちょうだいね」
「おばあちゃん、ありがとう! 大丈夫だよ、気をつけるから」
亮たち五人は玄関口を出ると屋敷の裏手に建つ大きな蔵へと向かった。
三國亮が諸葛亮の転生者(生まれ変わり)だということを思い出したのが、この蔵の中だった。
「さあ、皆さん、この古い蔵の中に手掛かりがあります。ここから先は僕でも予測不能なことが起こるというか、呼び覚まされることになるかもしれません。だから心の準備をしっかりお願いします」
亮はそう言って重たい鉄の扉を開いた。




