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裁判記録〈上〉

投稿〜

 「『異様に早かった』…それはどいうことだ?」

 

 女騎士は役員の気になる発言に目を鋭く光らせながら質問する。


 「ちょ、そんな怖い顔で聞かないでくれ」

 「されたくなければ、さっさと質問に答えろ」

 「答えるからその怖い顔はやめて、ほんとお願いだら!?」

 

 役員は睨んで質問する女騎士に落ち着く様に話すも、女騎士には逆効果であり、余計に問い詰められてしまう。

 

 「君も見ていないで、助けてくれよ!」

 「え、あ!すみません!」


 女騎士に問い詰められていた役員は自身が招いた事とは、自覚しながらも青年に助けを求める。

 青年は役員の言う通りに女騎士を問い詰める止めて、なんとか落ち着かせる。


 「すまない…少し熱くなった」

 「いや、気になる様な発言をしてしまった僕にも原因があるから…仕方がない」

 「それじゃあ、落ち着いて来たのでそろそろ聞かせてください」


 青年は役員に目的である本題へ質問する。


 「はぁ…わかったよ。実はね、この裁判記録をまとめたのは、僕だからさ」


 役員は迷いなく手に取った分厚い裁判記録書を見せながら、これは自身が書いたものだと、話始める。


 「貴方が?」

 「そうだよ…。実はこう見えても、僕は王宮図書館の役員だけでなく、裁判記録係でもあるんだよ」


 自身が書いた証拠を見せる為に胸ポケットから何かを取り出して「あ、これが裁判記録係の証ね」と机の上に置いて見せる。

 それはペンと天秤が張られたバッチを見せる。

 青年は女騎士に顔を向けて、本物かを聞くと頷いているので、本物の様だ。


 「裁判を記録する者として、ちゃんと記録つもりで書いていたからね。例えば、逮捕された被告人の日付や開始された裁判日時も間違いなく書いたよ。まぁ、見てみてみたらわかるよ」


 役員は裁判記録書を開いて、青年と女騎士に見える様に机の上に置かれる。

 裁判記録書を読んでまとめるとこうだ。


 ・裁判は一日で判決が決まった

 ・充分過ぎる証拠があった

 ・黙秘を続けていた事

 ・処刑は王宮通りに決まった

 

 一見、違和感が全く無く書かれた裁判記録に青年はある部分の文書に気が付いた。


 「ん?少し貸してください」


 青年は裁判記録書を手に取ると最初のページに戻り、一行目から指でなぞりながら、記録の違和感を調べる。


 「この裁判…おかしくありませんか?」

 「何処がだ?」

 「そうですね…ここの日付とか、おかしくありませんか」


 女騎士は青年に何がおかしいのかを聞くと青年は侯爵家の娘の逮捕された日付に指を刺した。

 

 「…逮捕されたのは、裁判が行われる一日前だと?」

 「はい。王国の裁判はこんなにもすぐに開けるものでは、ありません。最低でも五日の猶予が与えられる筈なのに…早過ぎます。あと、侯爵家の娘を弁護人する人がいないのがおかしいですよ」

 「言われてみれば、確かにそうだな」

 

 青年の言葉の通りであれば、裁判には、被告人にも弁護人が必要だ。

 だと、言うのに裁判記録書には、弁護人の氏名すら、記入がされていない。


 「そもそもですが、敵国である帝国に王国の情報を売るという叛逆行為に何で国王が動いていないのが大きな疑問ですよ」

 「国王が持つ、権限の一つ…『緊急裁判法』の事か」


 青年に続いて女騎士が『緊急裁判法』とは、王国の国王陛下が持つ、国王権限の一つだ。

 王国の裁判上では、緊急裁判法という法律が存在する。だが、この法律はあまり使()()()()()()()()()()()でもある。

 何故ならこの法律は国王権限のみに発動できる裁判であるからだ。

 その裁判は今回の起こった、近衛騎士の惨殺事件にこの裁判法が適応されてもおかしくなかった。

 国家として、重大な裁判だったかも知れない裁判に何故か、この特殊な裁判法が発動していない事に疑問が生じる。

 国王が動いてもおかしく無い裁判であるというのにだ。


 「それに被告人がこんな重大な事に黙秘をすること自体が変ですよ」

 「重大なことを嘘でも否定しないのは、確かに変だな」


 王国の叛逆行為はほぼ死刑か死ぬまで鉱山奴隷堕ちのどちらかと、決まっている。

 だと言うのに、黙秘を続ける理由が一体どこにあったと言うのだろうか。


 「そもそもだが、侯爵家の娘ともあろう人がなんで敵国に情報を売ったのかが疑問だな」

 「確かに…」


 女騎士は青年と何故、侯爵家の娘が敵国に情報を売り、裏切った理由が分からなかった。

 敵国に国内の情報を売るというには、それ相応の理由または動機があるはずだ。

 さらに付け加えるなら王国でも貴族階級も高い侯爵家が『王国を裏切ってしまうほどの対価が帝国にはあったのか?』という疑問が生じる。

 裁判記録には、敵国である帝国に売られてしまった情報は記載されているのだが、それに応じた帝国が出す対価が被告人の黙秘により、一切記入がされていないと書かれている。

 

 「そう言えば、此処へ来るまでに侯爵家の娘は第二王子の元婚約者と言ってましたよね?」

 「あぁ、そうだが?」

 「それはいつ婚約破棄をしたんですか?」


 謎が深まる中、青年は裏切る理由を考え始める。

 すぐに思い出したのは、女騎士と出会った王宮通りの処刑場所で言葉に思い出し、それが理由かも知れないと答えを導き出そうする。


 「すまないがそこまではしら――『一週間前だよ』」


 女騎士はとある理由でそこまでの情報を知らないと応えようとした矢先に途中まで何も喋らなかった役員が口を開いた。


 「え?」

 「一週間前。それは侯爵家の娘が帝国に情報漏洩を行ったという()()()()()()でもあり、その日は丁度、国王陛下と第一王子が同盟国でもある連邦へ渡った日でもあるよ」

 「「!?」」


 役員は裁判記録には記載されていない情報を口にした。


この作品は五話ずつ貯めてから投稿するつもりでやっていきたいと思います。


次回は3/16の十六時に投稿します。

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