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王宮図書館

 「一年前の裁判記録を見たい? 構わないけど…一体そんなもの見てどうするって言うんだい?」


 青年と女騎士は王宮図書館へとさっそく向かい、裁判記録についての情報を記した本の場所を王宮図書館に務めている眼鏡をかけた男の役員に話す。


 「裁判記録を見たいなんて言う人は、君が初めてだよ…」

 「あはは…個人的に調べている事で裁判が関わってるかも知れないと思って、来たんです」

 「ふーん。別にいいけどーーん?あー…気付いたんだけど…恐らくだけど、君は読むどころか借りる事すら出来ないと思うよ?」


 役員の男は青年の軍服を見るなり、目的の裁判記録書が読めないと言われてしまう。


 「え、どうしてですか!?」

 「どうしてって…君ねぇ、此処は王宮図書館という重要な資料や書物を保管する施設だよ?」


 王宮図書館に保管されている殆どの書物や資料には、一般人では、読むことすらできない本などが多くある。

 重要性が高い資料は貴族にしか、読めないものや貴族であっても、役所の許可証や役員でなければ読めない様になっているのだ。

 それは役員が裁判記録書を読めないのは、そうした理由があるからである。


 「資料や書物は君の身分ならまだ何とか、読めるものは、あるけどねぇ、裁判記録書となると話は別だよ」

 「そこをなんとか、なりませんか!?」


 青年はどうにか、読む事は出来ないかと役員に頼み込むが役員はもう一度、青年は見ながら話す。


 「何とか、と言われてもねぇ…。君は見るからに軍人なのは、わかるけど…蒼色の軍服を着る軍人あたり、国境防衛騎士隊所属だろ?」

 「は、はいそうですが…」


 役員は首を横に張りながら「やっぱりね」と呟く。


 「なら、尚更無理だろうね。いいかい? 裁判記録書を読むには、貴族であっても男爵以上の身分が無いと見る事は出来ないようになっているぐらいの重要な書物なんだよ。国境防衛騎士がどんな理由で裁判記録書に興味を持ったのか、知らないけど、読めない方に変わりがないよ」

 「そんな…」


 青年は役員に裁判記録書はあまりにも重要な書物である為、読むことすら出来ないと通告される。

 諦めるしか無いのかと、悩む青年の横から同伴していた女騎士が机に金で加工されたを勲章を置いて役員に話しかける。


 「なら、私は読めるのか?」

 「ッ!?」


 役員は机に置かれた勲章に目を開いて驚く。

 そして、置かれた勲章を手に取ってよく観察しながら、「これは本物だ…」と呟きながら、女騎士の方をチラリと見るなり、何か納得した様に頷く。


 「この勲章に腰に差した白い剣。貴女…『雷剣』の騎士だね?」

 「雷剣?」

 「知らないのかい? 君の隣に立っている女騎士は第一王子直属の黒軍服を見に纏うだけで無く、二つ名待ちの騎士だよ…」

 「えっ!?」


 役員は青年の隣に立っている女騎士がどんな人物かを知らない事に呆れつつ青年に詳しく教えると、青年は驚いて、女騎士に目を向ける。


 「私には、過ぎた名だ」

 「何が、過ぎた名だよ。第一王子に差し向けられた暗殺者十人をたった一人で護った騎士だろう」

 「…第一王子の命をお守りするのは当然だろう」

 「ものの数分に暗殺者達を殺す勢いがまるで嵐に鳴り響く雷鳴の様な剣技だったというのが理由で『雷剣』の二つ名を与えられた…だろう?」

 「…」


 女騎士は自身の二つ名に「過ぎた名だ」と応えるが、役員は女騎士の経歴を話す。

 そこには、第一王子直属の騎士であり、差し向けられた暗殺者達から命を守った事にその二つ名の由縁をつらつらと話す。


 「はぁ…わかったよ。いまから裁判記録書を出すから待ってなさい」

 「協力、感謝する」

 

 役員はため息を吐きながら、裁判記録書を持って来ることを了承すると、奥の部屋へと入って行った。


 「えっと…その凄い…騎士だったんですね」

 「私に取っては、当たり前の働きをしたまでなのだがな…」


 青年は気まずそうに成りつつも女騎士を称賛しようとするが、女騎士は自身の働きについては当然の事だったので、何とも思っていない表情だった。

  

 「実力で近衛騎士まで成り上がったあの人よりに比べれば、私など遠くに及ばん」

 「そんな事はーー「持って来たよ」」


 自分自身に厳しいのか、女騎士は元近衛騎士だった男と自身を比べて、褒めないのを青年は「そんな事は無い」と言う前に奥から裁判記録書を取りに行っていた役員が戻ってきて、最後まで言えずに終わってしまう。


 「これらが一年前の裁判記録書ですか?」

 「随分と分厚いものもあるな…」

 「そりゃ、裁判の記録がされてるし、証拠など記載の重要なものが忠実に書かれているからねぇ」

 

 役員に説明されながら机の上に置かれた本の山は、十冊以上はある裁判記録書の山に青年と女騎士は驚く。


 「それで君ら二人は何の裁判記録を見たいんだい? せっかくだから手伝うから言ってみな」


 役員は大量の裁判記録書の山から探すのを手伝ってくれる気でいるので、青年は女騎士に目を向けて頷いて目的の資料を話す。


 「じゃあ…王宮通りで処刑された侯爵家の娘の裁判について、書かれたものをお願いします」

 「え、あの()()()()()()()()()()()の記録をかい?」

 「「異様に早く行われた?」」


 役員が漏らした気になる発言に青年と女騎士の言葉は重なった。

次回は9/17の十六時に投稿します。

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