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「かーなーたくん」
不吉な声がする。
「あっそびーましょ。」
「誰が遊ぶかボケェ。」
「えーひどーい。マジかよ。」
「マジだよ。」
つくづくめんどくさい奴だ。
「えっと遊ばなくていいから、お話したいなぁ〜」
「?」
いつになく広大の喋り方がぎこちない気がする。
「あのさ〜珊瑚ちゃんってさ〜誰が好きだと思う〜?」
「またその質問?広大、絶対にお前、垂水さんのこと好きだろーが。」
「まぁまぁ。それでさ〜、俺知ってるんだよね〜、珊瑚ちゃんの好きな人。」
広大はにやりと笑う。
いつになく不気味だ。
これはこいつの精一杯の演技か?
素がこれだったらショックすぎる。
やべ、涙出てきた。
「奏太だよ。」
「は?何が?」
「だからぁ…珊瑚ちゃんの好きな人!」
「はあぁぁぁぁぁ!?」
マジかよ。
ホントにマジかよ。
ホントにマジって二重表現かな?
ああ、言葉が意味不明になってきた。
「まあそういうことだから。じゃーねー(笑)」
えっ!?えええ!?
最近、広大がわからない。
*☆*☆*☆*☆*☆*☆鹿児島にいたころ。
クラスに男の子は普通にいたのに、女の子は十人しかいなかった。
そのうち、私だけは男子からちやほやされて、他の女の子に仲間外れにされた。
それは、ただ十人の中から、一番マシな奴を選んだだけのことだと思ってた。
神奈川に来て、私の考えは違うということに気が付いた。
こんな言い方すると嫌みっぽいけど、みんなは私を学年の八十人の中から選んだのだ。
あの笹原みうちゃんという子と一緒に。
三上奏太くんは、どっちが好きなんだろう……笹原さんなんだろうな、きっと。
前浜広大くんは、私が好きなんだろうな。
よく話しに来てくれるから。
奏太くんを幸せにしたい。
でも、私の気持ちはどうなるんだろう………。
勇気を出して、今度誰かに奏太くんのメアドを聞いてみようかな。
そうすれば、奏太くんを幸せにすることと、私を幸せにすることが両立できるかもしれない。
そんなこと、無いとは思うけど。