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四天王として勇者を倒したのに、魔王様に叱られた件

 

(*'ω'*)「ちょっとお前、コッチこい」


(*'▽')「ハッ、魔王様」


(*'ω'*)「お前、何したか分かってる?」


(*'▽')「えーっと……トイレットペーパー切れたのにも関わらず、そのまま放置しました」


(*'ω'*)「交換しろよ! 新しいのと! 芯だけ残ってる時の虚しさ分かってる?!」


(*'▽')「すんません……以後気を付けます」


(*'ω'*)「っていうかそんな事で呼び出したんじゃない。お前、さっき勇者パーティー全滅させただろ」


(*'▽')「ぁ、はい。なんか目障りだったんで」


(*'ω'*)「理由それ?! 目障りだったから?! じゃあ目障りじゃなかったらお前放置してたの?!」


(*'▽')「まあ」


(*'ω'*)「まあ?! いや、そんな事より……お前、なんで勇者パーティーを全滅させちゃうんだ」


(*'▽')「なんでって……それが仕事ッスから」


(*'ω'*)「違う! そんな事を言ってるんじゃない。お前、勇者がどれだけ苦労してここまで来たか分かってるのか?!」


(*'▽')「いやぁ、わかりませんよ。私、自宅から直行バスでここまで来てるんで……」


(*'ω'*)「お前通勤してたの?! ここに住んでるんじゃないの?! ここ魔王城だぞ! 部屋数なら腐る程余ってるから住みなさいよ!」


(*'▽')「えー……私、職場から離れた所で生活したい派なんですが……」


(*'ω'*)「四天王でしょ! もっと自覚持ちなさい!」


(*'▽')「パワハラっすか? それパワハラっすか?」


(*'ω'*)「ウザッ、っていうか……それより勇者の事だよ。ここまで苦労してやってきて、魔王の顔も見れないなんて可哀想じゃないか。せめて私のところまで来させなさいよ」


(*'▽')「そんな観光気分の勇者いませんよ。居たとしても雑魚過ぎて魔王様の鼻息当たっただけで即死ですよ」


(*'ω'*)「俺の鼻息何なの?! 灼熱の息吹とかそういうの?!」


(*'▽')「いや、ただの比喩ですって。それくらい魔王様強いって事で」


(*'ω'*)「もっと別の言い方あるでしょ! というか四天王なんだから分かってると思うけど……暇なのよ! 勇者とか一か月に一回来ればいい方だし……ちょっとは気を利かせなさいよ」


(*'▽')「それで言うと私も暇なんで……っていうか、それなら四天王ってシステム廃止した方がいいんじゃないんですか? 魔王様が門番すればいいじゃん」


(*'ω'*)「そんな魔王居ないわ! 勇者もビックリだわ! 魔王が門番してたら!」


(*'▽')「いいサプライズになると思いますけど」


(*'ω'*)「お前は魔王城を何だと思ってるの! ラストダンジョンよ?! ラストの最初に魔王とバトルっておかしいだろ!」


(*'▽')「じゃあ、私わざと負けて勇者通せば良かったんですか? それはそれで職務怠慢というか……」


(*'ω'*)「それは一理あるな。そこでだ。お前ちょっと勇者育成してこい。俺の所までたどり着きそうな勇者を育て上げるんだ」


(*'▽')「わざわざ敵を育成するんすか。いいんですか? 本気で育成しますよ」


(*'ω'*)「言ったな? それで雑魚かったらお前、減給するぞ」


(*'▽')「モノホンのパワハラ来たよ……。分かりました。あとで強すぎるわって文句言わないで下さいね」


(*'ω'*)「言わん言わん。むしろ褒め称えてやるわ。というわけで人間の街に行って冒険者育ててこい!」


(*'▽')「へいへい」



 こうして四天王の一人、アルマニータは人間界の街、スコルアへと旅だって行った!




 ※




 ワガママな魔王様の勅令を受け、冒険者を育成しにスコルアへと降り立った私。

 私は所謂サキュバスの部類に入る魔族だ。本来ならば人間の育成からは程遠い種族だが、幸いな事に魔法などには精通している。とりあえずその辺りから育成の取っ掛かりを見つけるか。


 スコルアは比較的大きな街。この世界に魔王は七人存在し、それぞれが縄張りを決めて人間達を支配している。彼らはその魔王を倒し領土を取り戻す事を目的としているが……やはり支配下にあっては満足に装備なども整えれないというのが実状だろう。


 この街にも魔王の側近……私程では無いが、魔王の配下が居る。彼は街の中央に聳える巨大な塔、そのダンジョンの最上部に鎮座し、人間達を監視している。人間達が何か大きな発展を迎えるような事があれば、即座に破壊するという悪魔的な行為を行っている。まるで賽の河原だ。子供達が必至に積み上げた石を崩す鬼のような存在。


「……とりあえず邪魔だな。消すか」


 



 ※





 というわけでダンジョンのボスに無理やり休暇を与え、世界旅行へと行かせた。

 物凄い雑な展開だが気にしない。


「次は……このダンジョンを利用して人間達を育成すべきなんだろうけど……いやに雑魚モブが強力だな。一層からいきなり魔王城のモブに匹敵する奴が居るぞ。とりあえず私のスキルでレベルを吸い取るとして……あとはギミックが単純すぎるな。もっと冒険者同士で協力しあってクリアするような設計に……」


 こうして私のダンジョン大改造、そして冒険者育成計画が始まった。

 人間に化けてギルドの係員をやってみたり、時にはタンクとして冒険者を率いてダンジョンの攻略にも行った。そのかいあって……中々、骨のある奴等が出来上がった。


 ククク……見てろよ魔王。

 マジで強力な勇者作り上げてやるからな!




 ※




(*'ω'*)「……で、どうなったの」


(*'▽')「魔王様、ちょっと私、ここの仕事辞めます」


(*'ω'*)「え、何、どうしたの?」


(*'▽')「人間の育成してたら思いのほか楽しくて……それに人間の中にも派閥とかグループみたいのがあって、今私の育ててる子達がちょっとピンチなんです」


(*'ω'*)「あ、あぁ、そう。でも辞める事は無いんじゃない? 給料は支払い続けるし……」


(*'▽')「いえ、ちょっとガチで魔王様……〇しちゃおうかなぁと思ってて……」


(*'ω'*)「こわっ! お前こわっ! なんでそうなるの! 四天王でしょ!」


(*'▽')「いや、元々は魔王様のせいですよ。まさに自分でまいた種じゃないですか。いやー、それにしても人間って凄いですよ。色々自分達で開発しちゃって。それに私達と違って成長する方面が様々なんですよ。勿論才能とかありますけど、結構努力次第でなんとでもなるって言うか……」


(*'ω'*)「要は……人間に感情移入しすぎちゃったって事ね……分かった分かった、もうそんな奴に四天王とか無理だろうし……好きにしなさいよ」


(*'▽')「あざーっす。んで、この話を他の四天王の奴等にも言ったら、なんか自分達も人間育成したいとか言い出して……」


(*'ω'*)「え?」


(*'▽')「もう街に降りてます」


(*'ω'*)「ちょ! じゃあ誰が俺を守るのよ!」


(*'▽')「何言ってんすか、散々暇だ暇だ言ってたじゃないですか。楽しみにしててくださいよ。誰が育てた人間が一番に魔王様を倒すかで勝負してるんですから」


(*'ω'*)「一応俺、お前等のボスなんだけど?! ボス倒す為に敵を育成するってどういう……って、ぁ……これ俺が言ったんだった」


(*'▽')「そうですよ。というわけで今までお世話になりました。もう少しかかると思いますけど、楽しみにしててくださいね!」


(*'ω'*)「ぁ……うん……」



 その後、魔王配下の四天王が介入した街は大きな発展を遂げ……世界に有数の大都市に。

 四天王達はそれぞれギルドを立ち上げ、人間を育成する事に夢中になり……魔王の事はすっかり忘れてしまっていた!


 今、彼らの目的は……いや、彼らの糧となっているのは


 人間達の笑顔。その笑顔を見る為に、彼らは愛しい人間達を育てている。


 世界はかくも美しい。



(*'ω'*)「……俺も街に降りようかな……」




完!

 

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