異世界転生者の第一歩
なろうラジオ大賞用小説第三弾。
気がつくと、俺は明るい空間の中にいた。
ついさっきまで俺は母に頼まれて買い物に出ていたハズだ。
にも拘わらず、いったいここはどこだと考えた時、俺はこの場所に来る前の最後の瞬間の事を思い出した。
そうだ。
俺は買い物を終えて帰ろうとした時、スーパーの前の横断歩道を車椅子で渡ろうとしていた人が、リムジンにはねられそうになるのを見て、それで――。
『思い出したようですね。貴方の最期を』
するとその時、心霊写真などで見るオーブに似た光球が目の前に現れた。
「な、なんだ?」
『意外に思いますでしょうが』
驚くと、再び光球から声が聞こえてきた。
『貴方の世界でいう……異世界転移・転生の手引きをする神や天使の類です』
「はぁ?」
俺は、ワケが分からなかった。
普通そういうのって、人の姿をしているんじゃないか?
俺が生前に見たアニメ・漫画・ラノベの常識からしたらそうだ。
『それらは人の都合で生み出された姿です』
オーブは俺の言葉の先を読んだのか、それとも心そのものを読んだのかそんな事を言った。
『一方で私は、相手が人間であろうとなかろうと平等に手引きしますので、何者の姿もしていません。というワケで貴方も例外なく、この姿で異世界転生の手引きをしようと思うのですが』
なんかオーブから聞こえるのは機械的な口調なため、異世界転生という大事にも拘わらず気分が乗らないが……とりあえず俺は「じゃあとりあえず、どんな相手にも負けないチートスキルください」と言った。
オーブの声が機械的なため自然とそんな普通の声になってしまう。異世界転生、憧れてたんだけどなー。テンション上がらないぜ。
『……本当に、そのようなチートスキルでよろしいのですか?』
ただでさえテンション上がらない時に、再度オーブは訊いてきた。
ちょっとイラッとしたが、俺は早くチート主人公になりたくて「ああ、頼む」と言った。
『了解しました』オーブはそう言うと、またしても機械的な口調で『では、貴方の異世界生活に幸運を』と締めた。
そして次の瞬間、俺は異世界にいた。
そこは、一面に広がる砂の世界。
そしてその世界の、マヤの遺跡の祭壇のような場所に俺はいる。
まさかの第一ステージに俺は驚いたが、すぐにその心の中は、異世界に来れた事に対する喜びで満ち溢れた。
や、やっと俺は!!
「異世界に来れたんだ!!」
俺は嬉々として第一歩を踏み出し――。
次の瞬間。
その異世界は崩壊した。
あまりにチートすぎる、俺の力で。
オーブの口調のイメージは、イープラスなフランケンさんです。