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魔道士ケリーの大躍進  作者: FLWryoko
要塞編
2/21

これからいっしょに

ケリーが乗り込むバスはちょうど、二つのサッカーチームの人数をあわせた

合計22人が乗れるだけの座席数だった。

シートは木製の枠組みにモケットのクッションを貼り合わせた作りで

天井からは電灯が吊り下がっている。

先客のうちの一人"ガルフ"が声を上げた。


「これじゃ飛行機に乗れない!もう間に合わないよ。」


ケリーは声をかけた


「どうされました?」


「ぼくはこれから剣士としての修行を積むために、

魔界へ行く用事があるんだ。だけど今から空港へ行ったってもう間に合わないよ。」


彼の手元に置かれた紙切れが気になった。


「あなたの手元にあるそれはなんですか?」


「これは剣士として修行するために必要なこと全てが記された手引書だよ。」


ケリーはそれを彼から奪ってひと目見ただけで、それが表面とその裏面だけで構成されていることを見抜いた。

内容はこうだ。

表には手引書のタイトルが

裏には以下の内容が記されている。


--剣士の修行に必要な全て--

1 塔に登って職員と話せ。

2 職員から話を聞いたら塔を降りてバスに乗れ。

3 魔界へ移動するにはバスを使え。

--


手引書の内容を全て理解したケリーは教えた。


「この手引書に、魔界へ移動するにはバスを使ってくれと書いてあるじゃないか。」


「本当だ!君は天才だ!おかげで助かったよ。」


彼からの賛辞にケリーは高笑いで答えて席に戻った。

それから間もなく、バスにローブを着た職員が入ってきた。


「ケリーさん。あなたにこれを渡します。」


職員からローブと手引書を手渡されたケリーは喜びに叫んだ。

扉が閉まりバスが走り出すとすぐに、車窓は荒野から深紫の光で満ちた景色へと変わった。

アナウンスはバスがこれから魔界へ向かう事を告げた。

バスが魔界へ向かう途中、マイティベイビーズのツアーバスと並走し始めると

車内の空気は一変した。


「マイティベイビーズのアンナだ!」


ケリーがそう叫ぶと、彼はバスの窓を割った。

ツアーバスに飛び移ろうと窓枠に足をかける彼を止めるのは

先客の一人"エミ"だ。彼女は彼の片脚の向こう脛を掴み続けながら言った。


「魔道士になるんでしょ?」


「マイティベイビーズの方が大事だ!」


ケリーは彼女に力づくで車内に引きずり込まれた。

そして組み伏せられた。


「魔道士にとってアサシンは不可欠。そしてアサシンにとっても魔道士は不可欠。」


諭す彼女にケリーは怒りながら答える。


「そんな役割的な繋がりじゃなくて、愛で繋がりたいんだ!」


「私とアンナどっちの方がより良いか?よく考えなさい。」


ケリーは振り向くと、そこにはアンナよりも少し幼い顔をした彼女がいた。


「アンナの方がかわいい!」


彼の叫びに、彼女は赤面して呆気にとられた。

脱力した彼女の体の下から、その隙に抜け出したケリーを見届けると、俯いて黙ったまま席に戻った。


「お前らバカみたいだな。まあ、どうせたいした学もないからここへ来たんだろうが。」


先客のうち、最後の一人"オイミー"は嘲るように笑った。


「なによ……。あんたみたいに冷笑しか出来ない人間に私達は……。」


彼をいじらしくにらむエミの目は少し潤んでいた。

彼女が言葉を続けようとすると、ガルフが割って入った。


「よくも彼女を傷つけたな。許さないぞ。」


彼は怒りを纏った静かな声で、鋭いまなざしでオイミーを見た。


煽るように、少し興奮した様子で彼は答えた。


「やるか?」


ケリーが唐突に叫んだ。


「やめろ!俺たちは誇り高き選ばれた存在なんだ。」


車内の空気は一瞬で冷え去った。


「そう思ってるのお前だけだぜ。」


オイミーは先程よりも嬉しそうに、また嘲り笑った。


車内アナウンスが魔界に到着した事を告げた。


バスを降りた一同は、それぞれがバラバラの方向へ進んだ。


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