魔道士ケリーの誕生
荒野の中にただそびえ立つ、石塔の頂上で彼は告げられた。
「あなたは偉大な魔道士として、この世を去るのです。」
男は問いで答えた。
「そうなのか?」
彼の疑問を氷解させる幻が天に映し出される。
ローブを纏った男が街の通りを走り、沿道からの声援に手を振って応える。
その足は城前に座した巨大なドラゴンの前で一旦止まり、そこからゆっくりと歩き出す。
ドラゴンが口を開くと、その中へと入っていく。
やがてドラゴンが彼を飲み込んで眠りにつくと突然
ファンファーレが鳴り響き、彼はドラゴンごと砂へと変わり崩れ去る。
それを見た民衆、そして王族たちは泣き出した。
その夜に、空の棺のまま葬儀が執り行われる様子を映し出して、幻は消え去った。
「今のは俺なのか?」
「俺はこんな死に方はしたくない!」
憤慨する彼に、諭す声が響く。
「マイティベイビーズのみんなも、あなたのために泣いてくれますよ。」
彼のつり上がった目元が緩み、微笑へと変わった。
「なら良い。」
「塔を降りた先に用意されているバスの中で待っててください。」
「バスの中で、あなたは魔道士として必要な装備を手渡されます。」
彼は塔のエレベーターを降りて、バスを見つけると、猛然と走り出した。
駆け込み乗車をしたバスには先客がいたが、誰も彼のことを気にする様子はない。
こうして、魔道士ケリーが誕生した。