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9.


「本当に申し訳なかった!!!」




 深夜3時のクライマックスにつれて歌い、踊り、更に盛り上がっていくBARで一人だけ土下座という非常にその場に合わない行動をする漢義道。


 BARカウンターの回る椅子に座りグッと一杯生ビールを飲み干し、はぁーと深く息を吐きながら義道の方へ向く大事な友人の謙治。


 謙治は眉を片方下げ、不機嫌な顔を作り、若干切れた上唇を擦る。



「あーあー、口ん中切れてっとうめぇ酒が血の味しかしねぇなぁー」


「……すまなかった。本当に悪かった……」


「その様子だと、気付いたんだな?」


「ああ……やってしまったと思っている……」


「はぁー……」


 大きくタメ息を吐き顔を下げる謙治。



「ふふ、」


「ん?」



「プッはっはっは!!!」


「???」



 謙治が顔をあげると大声で笑い始めた。その急な様子に義道は困惑する。謙治の横に座っていた女性もクスクス笑っていた。


「ど、どうしたんだ謙治?何がそこまで面白いんだ?」


「へっはっはっはっは!!いやぁ本当にウケるぜ!良いからその体勢やめろよ!浮いてるぜお前!」


「し、しかし!」


「ふふふ、言っとくけど謙ちゃん全然怒ってないよ?」


 隣にいた黒ロングで泣きほくろのある女は笑いながらそう言った。


「そ、そうなのか?」


「ああ、怒るかよ、こんなんでよぉ!俺のせいでもあるんだからやられても仕方ねぇって!」


「だ、だが、暴力に走ってしまった俺の方が……」


「あー、」


 そう言ってガーゼが貼ってある鼻頭を擦り、ニヤリとする。


「じゃあ貸し一つな?」


「構わない。何でもすると誓う」


「OKOK!じゃあ絶対に俺が言った事はやってもらうからな?」


「了解した。絶対にしよう」


「まぁ座れって」


 隣の席を出して椅子をポンポンっと叩く。義道は立ちあがり、んー。っと少しばつが悪い顔をして座った。



「んで?あの女の子はよ?どうなったんだ?」


「あの女の子か……」



 義道は夕日を思い出し、頭のなかで簡潔にまとめてみる。



「とても不思議な子……軽く電波な女の子だったな」


「不思議系な女だった訳か!でもかなりの美人だったじゃねぇか」


「未成年だけどな」


「すまん。それは本当に知らなかった」

「本当に未成年だったの?あの子?」


 ばつが悪そうに眉をひそめる謙治と、予想外過ぎてついつい会話に入ってきた女。


「ああ。未成年だった。何でここへ入ってこれたのか分からない」


「多分、他の客と混じっちまったんだろうな」


「確かに。私があの子見たときはカウンターの周りに数人男が居たと思う」


「あ、あの子の周りに!?大丈夫だったのか!?」



 義道はあまりにも心配になりついつい大声を出してしまう。泣きほくろの女はまあまあっと手で義道を抑えるような仕草をする。



「端からチラッと見ただけだけどね。男達は見向きもされてなかった感じだったかな?」


 義道はホッとして力を抜く。


「それなら良かった。きっと自分の世界に入ってたんだろうあの子は」


「やけに入れ込んでんじゃねぇか。結構進展したんじゃねぇか?」


 謙治はニヤニヤとする。義道はうーんっと腕を組み悩む仕草をする。


「入れ込んでいる……より心配をしているの方が大きいな。あの子は……なんだか色々と儚げというか、簡単に危ないところに行ってしまいそうなんだ」


「へっへっ、まるで保護者だなぁ義道!」


「おいおい、そう茶化すなよ。本当に心配なんだ」


「いや、茶化す。俺には茶化す権利があるだろう?なぁキリちゃん?」


「ふふ、ここは我慢しないとね?お友達君?」


 

 義道はここぞとばかりにニヤリとする。そして、わざとらしくふざけた口調で謙治を攻めにいった。



「おやおやおや?そちらも上手くいってそうだが?」


 義道は内心、取った!っと思った。


「あーキリちゃんのこと?俺とキリちゃんは大学の先輩後輩で仲が良かったんだ。キリちゃん先輩って呼んでたなぁ学生時代は」


「な、なんだよ、ふざけた俺が馬鹿みたいじゃないか」


「ふふふ、お友達君は面白いね。始めまして霧山凛々子(キリヤマリリコ)です。よろしくね?」


「あ、すいません。改めてよろしくお願いします。鴻ノ木義道です」


「ハッハッハ!急に畏まんなよ!」


「じ、女性は苦手なんだ。仕方ないだろ」


「まあまあ、今日は飲みまくりましょ?」



 三人は朝が明けるまで飲み明かした。

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