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6.


 義道は女の子の手を引っ張り、取り合えず近くの最寄駅に歩いていた。そこで義道は気付く。


 

(あ、駅に向かって良かったのだろうか)



 怒りに任せて出たため、義道の思考は働いていなかった。そこで義道は女の子に家を訪ねようと振り返る。



「あの、」


「……?」



 女の子は黙って首を傾げる。そこで、義道は更に気付いた。



 女の子の手首を掴んで引っ張っている自分がいることに。



「わわわっ!!ごめんよ!!」


「??」


 義道は慌てて手を離し謝罪した。女の子は何がなんだか分からない様子で見つめるだけ。



「あ、えと、家!家はどこ?駅に向かって良かったかな?」


「家?」


「そう!家!」


「それは……帰るべきところ?」


「ん?う、うん。そう、だね!」



 女の子の言い方に戸惑うが、円滑に進めようと流す。女の子は遠くを眺めて感傷深く言った。



「私の帰るべきところは、この世界にはない」


「それは……困ったね……」



 義道は片手で頭を抱える。取り合えず、一回落ち着くべきだと感じた義道は近くの公園のベンチを見付ける。


「あそこで一旦落ち着こう。色々と聞きたい事がありすぎて頭が沸騰しそうだよ」


「沸騰……私の力のせい?」


「……いや、うん。大半は謙治せいにしておくよ。座ろう?」


「ん」


 女の子は縦に首を振った。二人はまずはベンチに座って落ち着くことに成功したのだ。



「ふぅ……」


「……」


 落ち着いたは良いものの、落ち着いたら落ち着いたで謙治の事に腹が立ってきた。義道は思う、



(絶対に、謙治からこの子を守らないと)



 そう思った義道は、まずは連絡先の交換からするべきだと思った。自分がいつでもすぐに駆けつけられるように。



「本当、謙治が悪いことをした。アイツから君を守りたい。アイツのやったことが本当に許せないから。俺がいつでも君を守れるように連絡先の交換をしたいと思ってるんだけど……平気かな?」


「……守る?私は守られる?」


「うん。駄目かな?交換」


「……いいよ」


「良かった。じゃあこの電話……ば、んごう……」


 

 義道は止まった。あまりに衝撃的だったからだ。義道はスマホを取り出して番号を聞きたかったのだ。女の子もきっとそうすると思っていた。


 そう、




 女の子が取り出したのは小型のトランシーバーだった。



「あれぇー……それ知ってるやつじゃないなぁ、絶対それスマホじゃないよねそれぇ……俺自分の周波数とか持ってないからねー?」



 あまりの衝撃的な代物に流石の義道もつっこみを入れた。だが、女の子は頭を傾げ、不思議な事を言っているなぁって顔をして言う。



「……周波数持ってないの?」


「普通の人は持ち歩いてないからね、トランシーバー」


「……そうなんだ……」


「……スマホは無いの?」


「それは、危ないから」


「あ、危ないのか……」



 義道は、この女の子を怒ったりバカにしたりしなかった。それは、この子が真剣だったからだ。まだ会って間もないが、この子の奇天烈な発言が嘘を言ったり、冗談を言っているような気がしないのだ。じっと眼を見てしっかりと訴えたりもする。だからこそ、守ってあげたくなるのだ。



「じゃあ……連絡先の交換は出来ない、かな?俺もトランシーバーを買わないと……」


「一応、あるけど……」


「あ、あるんだね」



 女の子が取り出したスマホは正直な所、化石だった。それくらい初期のスマホでボロボロになったスマホだ。



「大分使い古したスマホだね」


「……今の時代はよく分からない」



 まるでカルチャーショックを受けた年寄みたいだ。


 


 その後、連絡先の交換に成功した義道。アプリすらも入っておらず、コミュニケーションアプリを入れるのに苦労した。……そこで義道は疑問が浮かぶ。


 

(ん?スマホは危ないからって……謙治ともそのスマホで連絡先の交換をしたんじゃないのか?)



「謙治とはこのスマホで繋がってるの?」


「…………??何が?」


「何がって……謙治と連絡取り合ってる、よね?」


「謙治?何で?」


「だって、ほら、謙治と会って……色々されたんでしょ?」


「……誰が?」


「まさか、」


「……ん?」


「謙治の事を知らない……の?」


「誰?それ」


「あの、俺がBARで殴っちゃった人……会ったことないの?」


「会ったことない」


「くそ!!やられた!!謙治のやろう!!」



──────────────────────



 その頃、謙治と女はカウンターに座って、謙治は生ビール、女はレッドアイを頼んで飲み直していた。

 


「ねぇ、何であんなこと言ったの?謙ちゃんに私まだ手を出されたことないんだけど?」


 

 女は少しニヤつき、流し目で謙治を見る。謙治は中ジョッキのビールを一気に半分飲み、はぁーっと気持ちよく息を出した後に答えた。



「そりゃアイツの為だからに決まってんじゃんよ」


「このままだと、謙ちゃん悪者じゃなーい?」


「へっへっへ、そうだなぁ」


 

 そして、謙治は鼻血をたらりと流してにこりとする。


「それでも構わねぇよ!これくらいしねぇとアイツは動かねぇしな!」


「フフ、本当、人が良いんだから謙ちゃん」


  女は謙治の鼻にティッシュを当てる。


 

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