5.
「おーい、おせぇぞー、何してんだー?こんなところで」
近づいた謙治はわざとらしく、気さくに話し掛けにいった。
「あ……謙治、すまないな、ちょっと……」
「………」
義道は、ばつが悪そうにはにかみ、女の子は黙って謙治を見る。
「へぇー。この子かーこの子が良いんだなぁ?義道ぃー?」
ニヤニヤと笑いながら義道の肩を組む。
「や、やめてくれ、茶化さないでくれよ」
恥ずかしそうにする義道。そして、耳元に顔を寄せ、謙治は言葉を囁いた。
「良い子だぜ?その子」
「……?」
謙治の言葉は、何か裏がありそうな言い方だった。その卑しさが伝わり、義道は不快感を得た顔をする。
「どういうことだ」
「いやぁ?その言葉の通りさ」
謙治は間をおいた後に、衝撃的な言葉を投げた。
「その子は夜になると、すげぇ乱れるんだぜ?」
「!?!?!?」
謙治の言葉に義道は一気に体が冷たくなった。
「お、お前、冗談はよせ、」
「知らなかったのか?ここに来ている女は全員、俺が手を出してる事」
「いい加減にしろ!!!!!」
義道は謙治の胸ぐらを掴む。周りの人は義道の怒号により、ざわつき始めた。
「お前!!分かっているのか!!彼女は未成年だぞ!!!」
「…………たらふくやったね」
「っ!!」
義道は女の子を見る。女の子は何が起きているのか分からない様子で二人を見ていた。
「こんな、こんな、純粋な女の子を……っ!!」
「離せよ」
謙治は義道の手を切り払う。
「お前がそんな奴だとは思わなかった!!」
「じゃあなんだよ、やるか?あぁ?」
謙治はボクサーの様に構える。
事は一瞬だった─
大きな音を立てて謙治が吹っ飛んだのだ。
謙治はカウンター席を薙ぎ倒し鼻血が吹き出していた。
「謙治。もうお前と会うことは無い」
謙治は天井を見ていた。
(やりあったのは初めてだけど、強すぎんだろあいつ)
義道は謙治の構えの隙間に一発、縦拳をぶちこんだのだ。その早さは高速だった。謙治の目からはフラッシュがたかれたように見えただけだった。
「行こう、早くここから出よう。家まで送るから」
「ん……うん」
義道は女の子の手を引っ張り、この場から離れた。様子を見ていた謙治の女友達は寄ってきて、ハンカチを渡す。
「ねぇ、大丈夫?謙ちゃん。鼻血凄いよ?」
「いってぇ……すげぇなアイツは、」
「何であんなことしたの?謙ちゃん」
「俺は知ってんだ」
鼻を貸してもらったハンカチで抑え、席を戻して座る。
「アイツは、助けたがりで、守りたがりなんだよ」
二人は駅に向かって歩いて行った。