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2. 挿絵有り


 鴻ノ木義道。彼は不器用な男である。しかし、彼は誠実で優しい人柄でもある。なんと言っても正義感が強く、友人の為なら自分を省みずに助けに行く程の男。


 そんな男に今日、変わるチャンスが訪れる。



 約束の土曜。チャラ男と言っても過言ではない、帯刀謙治が言う、面白いこと。をするために都会のある大きなBARにやってきた。



(うーん……これは嫌な予感は的中するかもな……)



 時刻は19時。もう辺りは暗く、サラリーマンが疲れた体にアルコールという幸福剤を入れに、近くの立呑屋に集まっている時間帯。義道が気にした所は、見るからにチャラついた若い男や女がその約束の場所であろう、BARにどんどん入っていくのだ。


 正直、真面目と呼ばれる分類の義道には中々キツい状況だった。だが、約束は守る男。ここで行かないとなると、何かを準備してくれたであろう謙治に申し訳が立たない。



「行くしかないよなぁ」



 そう心の声を垂れ流し、足取り重く入っていった。




----------------



「うーん……これは……」



 中は音と歓声などでごっちゃになっていた。人は大勢、躍り、酒を飲み、歌い、影では男と女がいちゃつき、まるでクラブのようだった。いや、こういうところがクラブというのだろうか。


 際どい格好をした女がちらほら、若い、気合いを入れた服装の男がちらほら……ただ一人、少し伸縮性がある普通のジーパンと白い無地のTシャツ1枚という一言で言うと普通。この場で言うとダサい格好の義道は非常に浮いていた。



(帰りたい)


 切実に帰りたかった。



「おいおいおい!ブラザー!待ってたぜおい!」


「おおう、」


 ガッと肩を組んできたのは、義道をこの地獄に呼んだ我が親友の謙治だった。義道はわざと不機嫌な顔をして謙治に言う。



「待ってたぜじゃねぇぞ、こりゃ。こんな所に呼ぶなんて聞いてないぞ」


「まあまあまあ!そんなに嫌な顔するなって今日はお前の為に開いたんだぜ?」


「俺のために開いた?」


「へっへっへ!俺はな、ここのオーナーだからさ!」


「ここの!?」



 義道は驚いた。謙治が何処かの店のオーナーをやっているという話を聞いたことがあったが、まさかここだったとは……



「まぁついてこいってここは客のフロアだ。俺らは二階だぜ?」


「お、おう」



 義道を連れて、二階へ向かった─



----------------



「ここが俺らのフロアだぜ?」



 そこは下のフロアとあまり変わらなかったが、下とは違い、はっちゃけ過ぎているということは無かった。それと確実に違うのは、見知った者がちらほら居たことだ。



「ヨシじゃん!お前も呼ばれたのか!」


「ヨッシー!久しぶりじゃねぇか!」

 

「おう!君たちもきてたのか!会えて嬉しいよ!」


 この二人は謙治の繋がりで出会った二人。ヨシと呼んでくるやつは進次郎でヨッシーと呼んでくるやつは陽一だったはず。二人ともフレンドリーで良いやつだ。


 他にも男も女もばらついて所々にいるようだ。知り合いも居て少しは安心してきた義道。



「よしよし!じゃあ本題に入ろうか義道!」


 なにやらニヤニヤして企んだ様子の謙治。


「本題ってなんだよ……」


「フッフッフ!スバリ!今日で彼女を作っちゃおう作戦だ!」


 謙治は腕を広げ、大袈裟に義道に言った。


「か、勘弁してくれよ……」


「勘弁しねぇぜ?良いから俺に任せなよ。ここに集まったのは全員俺の知り合い!皆マイメンなんだ!大丈夫!きっとお前も仲良くなれるやつらばっかだぜ?」


「うーん……自信無いなぁ……」


「よし!じゃあ取り合えず由美っちの所に行くぜ!」


「お、おいー、」


 謙治は義道を無理矢理連れていくような感じで女の子の所へ連れていった。


 


---------------



「うー……キツいなぁ……」



 真面目で不器用な男ははっちゃけたノリについていけなかった。



「え?よっちゃんつまんないの?」

「ヨッシーちょーテンション低くね?」

「義道君ノリ悪!」

「もしかして怒ってる?」


 こんな言葉を投げ掛けられてしまったら流石に格闘歴が長くてもノックアウトされてしまう。


(違うんだ……話の入りかたが分からないんだよ……うぅ……)



 どう話して良いか分からない。ノリについていけない。ノリに無理についていこうとすると非常に空回りする。


 そのような状況を打破すべく、義道が出した答えは戦略的撤退(トイレに逃げ込む)だった。個室で頭を抱え、この劣勢に苦しむ哀れな男。しかし、このままずっとトイレに居ては謙治が心配する……


 

「あー!もう行かないと!!」



 そう一人叫び、ドアを開け、近くで用をたしていた人に奇異な目で見られながらも勇気を出してバーに戻った。



(あ、酒がもう無かったな……取らないと)



 義道はカウンターに行き、酒を注文する。



「ジンジャーハイ1つ。………?」



 頼んだ後、カウンターの端にポツンと座る女の子に目が行った。この、状況でたった一人で席に座っているのも珍しかったが、一番珍しかったのはその髪色だった。綺麗な白い髪色で、長さはミディアム程度、輪をかけるように薄い紫が1周だけ色付いている。じっと、青く綺麗なカクテルを見つめていた。


挿絵(By みてみん)

挿絵追加しました!

そらとさんからの挿絵になります!ありがとうございます!

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