15.
若干出来上がった形で家に帰宅する義道。帰宅途中も帰宅して風呂に入るときも、SNSを気にしていた。しかし、紗名からの連絡は一切来ていなかった。
「……」
あまりにも鳴らないSNSに素面になるくらいだった。何か追加で送ろうと思ったが、その勇気がない。
「……」
義道は強いモヤモヤを抱える。大丈夫なのだろうか……そう考えるが……何も出来ないので寝ることにした。
「……」
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寝て随分経った─
ピコーン─
「!?」バサッ
即座に画面を見る。夕日夕日の文字。紗名からの返信が来たのだ。
『手が離せなかった』
その返信は義道の心をホッとさせたが、内容と何より時間を見て不安に変わる。時刻は3:16。あまりにも遅すぎる。まさかと思い、焦りで震える指を早く動かし、聞いてみる。
『手が離せない?今何しているんだ?』
すぐに既読が付き、返信が来る。
『World Lineを探してる』
「何てことだ!!!」
義道は一人叫ぶ。眠気も酔気も消え去った。飛び起きるが、この今にも動き出したいもどかしい気持ちをどうすることも出来ない。
『どこにいる』
パッと見、怒っているような文章。本人には怒りは無く、無いのは余裕だった。
『何で?』
疑問で返されると更に余裕が無くなった。早く紗名に会わなければ。その気持ちが強くなる。
不器用な男はとうとう、自分から通話のボタンを押したのだ。
ピピピピー ピピピピー
2コール目に入るとすぐに電話の主は出た。風が通る音が聞こえる。
「もしもし、聞こえるか、紗名!どこにいるんだ!?」
電話の主からの返答は無かった。ただただ風の音が聞こえるだけ。更に義道は不安に駆られる。
「紗名!!返事をするんだ!!」
『大きい』
「お、大きい??」
まさかのすぐ返ってきた言葉に困惑する。しかも、こんなにも心配して焦って通話までしたのに、最初に出てくる言葉が制止する言葉。怒りなどが一週回って冷静になった。
「ま、待て待て、大きいじゃなくてな?今どこにいるんだ?」
『……まだ残るWorld Lineの裂目……名残があるからそこにいる』
「……名残?一体そこは……」
考えた時、すぐに候補が出てきた
「デパートか?」
『そう』
「お前!もう閉店してるじゃないか!!どうやってそこに!」
『自らの意思とWorld Lineの混濁、一時の通信、すぐに時間は過ぎた』
「……よく分からんが、今すぐにそちらに向かうから、誰にもバレないようしろな!じっとしてなさい!」
『……ん?うん』
義道は自転車をかっ飛ばして向かった。
満月の夜─この日の夜はいつもと違い、辺りは静かだった、ただ一人、息を切らし走る男を除いて─




