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11.


「はぁー……はぁー……うっぷ、すまなかった。待たせたね、うっ、」



 急いで支度をして酔って死にそうな魂を削るが如く走った義道。ベンチでちょこんと座っている夕日は不思議そうにじっと、膝に手をつき死にそうな義道を眺めていた。


 やはり真夏なのにダッフルコートを着こんでいる。暑くないのだろうか。



「何かに追われているの?」


「…………ちょっと、時間にね……」



 お前が心配で走って駅まで行って、必死で来たんじゃい!!って心の中で叫ぶ。



「……それは大変。だったらすぐにでもここから離れよう」


「はぁ、はぁ……ちょ、ちょっと休ませて下さい」


「早く。危ない。急ごう」


「」


 義道の手を引き走りだそうとする夕日。


 え、この子わざとこんなことするの?って一瞬思ったが頭を上げて見た夕日の顔は真剣そのものだった。


 それと同時に反射的に捕まれた手を優しく離し、手を夕日の前に出す。


「ふぅー、大丈夫。もう追われてないから」


「……分かった、なら良い」


 夕日の顔はホッとしていた。義道は女性に手を触られた事実に気付き少し顔が赤くなる。


「んん゛!あーえーっと、なんだっけ?World Lineの裂け目を探すんだっけ?」


「そう」


「何か手がかりがあるのかい?」


「ない。けど分かる。呼ばれる、そこに」


「……そう、なんだ……」


 ただただ混乱する義道の脳。


 この子の両親は一体どんな育て方をしているのだろうかとも考えてしまう義道。


「そ、それじゃあ、今日はどこへ行くんだい?」


「遠く」


「……遠く?」


「二駅目のデパート」


「あの駅前の?」


「そう」


「意外と近かったね」


「そう?」


「じゃあ、行こうか」


 時刻は10:30、二人は電車に乗り二駅下った、駅前デパートに向かった。



------------------



 やはり今日は日曜。まずはデパ地下に降りたが、客はごった返していた。こう言うときはガンガン進んでいく夕日の手首をつかんだりしながら、


「あまり離れるなよ」


 っとか言ってあげるのが男なのだろうが、不器用なこの男にそんな器用な事は出来ない。武術で鍛えた洞察力と離れないようについていく機動力をフルに活かし、素早くついていく。



「な、なあ!どこまで行くんだい!?」


「……」



 夕日は何かに取り憑かれたように前を向きガンガン進む。


 すると、ある売り場のショーケースの前に動きが止まった。


 義道は夕日の近くまで辿り着き、その商品を見ると若者に定番のアイスクリームだった。カラフルで多種ある味のアイスが並び美味しそうであった。夕日は少し離れた所でただただじっと見て止まっていた。



「……アイスが食べたいのかい?」


「……綺麗だから」


「やっぱ暑いんじゃないのか?コート脱げば良いのに」


「今は脱がない」


「服持ってやるぞ?」


「……」フルフル


 夕日は黙って首を横に振った。


「……そうか、しんどくなったらいつでも言いな?」


 義道はショーケースの近くまで行く。


「このレモネードとゆずのやつをお願いします」



 店員にアイスを注文する義道。


「さあ、何にする?どれでも良いよ?」



 義道は夕日に優しく問い掛けた。それを聞いた夕日は黙ってトコトコと近づき、ショーケースをじっと見る。


「……キャラメルのやつ」


「ダブルで頼んでいいよ?もうひとつは?」


「……キャラメル」


「……?あ、もうひとつ、もキャラメル?」


「」コクッ


「き、キャラメルと……キャラメルでお願いします」


 夕日は黙って頷き、義道は少し恥ずかしそうに店員に注文する。店員はにこりと笑い、カップに二つアイスを入れた物を渡してくれる。義道はキャラメル&キャラメルのカップと小さな黄色いスプーンを夕日に渡した。二人はその店のイスに座りアイスを頂く。



「……」パクッ



 夕日は早速一口。



「美味しい。ありがとう」


 夕日はボソッと感謝の言葉を呟く。


 義道は食べた後に?っと思いながらも夕日の食べている姿を見て心から微笑んだ。


「良かった。次はどこに行くんだい?」


「……呼ばれた方へ」


「……分かった。任せよう」



 黙々とちまちまと食べていく可愛らしい女の子とそれを見て微笑んでいる真面目そうな男。端から見たら一体どんな風に見られるのだろうか。



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