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10.


 チュンチュン─



 朝……起きたくない……体は鉛のように、頭の中は脳を木製バットで殴られたように、目は廃れた商店街のシャッターのように……



「うぅ……」



そう、絶賛二日酔いだ。


電車の始発まで楽しく飲みまくったのだ。因みに義道はまともに女性とは話していない。酔っても、その女性が苦手な感情は捨てられないのだ。義道は起き上がり、冷蔵庫から1.5Lの水を取り出し喇叭飲みして無理矢理、意識を起こそうとする。


 ふーっと一息入れてスマホを探す。こんなにグダグダした朝を過ごせるのは今日が休日だからだ。義道は週五日は工場勤務、その中の二日は夜に道場に通い武術を教えに行っている。大体、月々手取り16~18万くらいを生活費に暮らしている。家賃も安く自炊もするので結構余裕である。



 そんなこんな探していると大雑把に敷かれた布団の下に探していた物を見つけた。未だにガンガン叩かれる脳内を絞り出すように活用してロックを開けると心臓が飛び出しそうになった。



 開いていた画面はコミュニケーションアプリ。チャットを開いていて文章を打ったまま後は送るだけになっていた。驚いたのは内容もそうだが、その相手だった。



 才津咲─義道の元カノだった。休日の今日、映画を見に行かないかとの誘いを送ろうとしていたのだ。



「う……ぐ……っ!」



 吐き気と悲しみが同時に襲う─



 昔の楽しかった思い出が─


 あの子の笑顔が─


 別れたいという言葉が─


 

「まだ俺は忘れられないのかっ!!!」



 義道は涙を流し、スマホを叩き落とそうと振りかぶる。



 ─が、ピコンっとチャットの通知が義道の動きを止めた。



「……」



 義道は黙ってスマホの画面を見る。そこには……



『World Lineの裂け目を探す』



「……」



 義道はさっきの悲しみを、酔いすらも忘れて座り込み、書かれた不明の暗号を見て考える。



(あの子から……か。っていうか今から?このタイミングで?日曜だからか?)



 そんな疑問はすぐに消え、頭の中は独り言で一杯になる。



(遊びの連絡か!!じょ、女性からなんて初めてだが……未成年のこの子とはあまり長く付き合っていっては駄目だろう。だが……またどこか危ない所に行かないように守ってあげなければならないだろう……いや、待て待て待て。俺はれっきとした大人だ。一緒に歩いてる所を警察に怪しまれたらもう終わりだ)



 そして閃く。



(そうだ。親御さんに一度話をしないとならないな。こんな夜に出てるなんて知らないかもしれないし。あの時はもう既に電気が消えてて寝てたかもしれないしな。流石に夜あのような場所に居ては良くない。今日会った後にそのまま親御さんと話をするか)



 そう決めた義道は夕日へ返信する。


『何時からだ?』


 するとすぐに返信が返ってきた。



『もう出てる』


「マジかよ!」



 流石の義道も驚き声に出してしまった。


『今どこに?』


『成篠駅ホーム』


『そこにいなさい!』



 成篠駅とは夕日のもより駅だ。義道は急いで支度をしてドタバタと家を出ていった。

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