プロローグ4
ここから先は――まざまざとした地獄だった。
僕と妹はログアウトし、物理空間の肉体へと戻った。ヘッドセットを外すと、目の前には付いてきてくれたホログラム体の女性警察官が立っていた――彼女と一緒に、まずは妹の部屋に行き妹の無事を確認した。次に隣の母さんの部屋――そこには、鼻と耳から血を流して痙攣している母さんの姿があった。女性警察官に動かしては駄目だと止められた。外からは救急車のサイレンの音が近づいてくる。助けを求めるように父さんの部屋に向かった。
父さんは――鼻と耳から焼けた血を流して、息をしていなかった。
僕は父さんを何度も何度も何度も揺すったけれど、いつの間にか現れた救急隊員に引き剥がされ、父さんと母さんは緊急搬送されていった。
父さんはまもなく死亡が確認された。
母さんは一命を取り留めたけれど、一生寝たきりだと告げられた。
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二年前のあの日、僕は何もできなかった。
あの日、僕は一人でぶつぶつと零すことしかできなかった――「僕がもっと強ければ……僕がもっと強ければ、こんなことには――」と。
その後悔が、僕を変えていった。
僕は力を追い求めた。
あの日の結末を二度と迎えないための――力。
だから、僕は――現代の戦士と言われる『電戯士』を目指すことを決意した。
[プロローグ・了]