七章1
ウゥゥゥゥゥウウウウゥゥゥゥウウウウウゥゥゥウウウウウウウウ――――――
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辺り一帯には緊急避難命令のサイレンが鳴り響いていた。
エリアメール――『緊急怪獣速報 茅渟市晄雫区に怪獣出現。避難誘導に従い、落ち着いて避難して下さい(防衛総省)』――が一斉配信され五分後、緊急避難の原則である五分内ログアウトのタイムリミットが切れ、防衛総省からの通達により怪獣級戯魔により破壊されたセキュリティーの穴から、新たな二次災害の戯魔の群れが出現しない処置として電脳都市をネットから一時的に切断してスタンドアローン状態とする安全対策が間もなく行われる。
三、二、一――切断。
晄雫区から見える空は、非常時を示す赤色からスタンドアローン状態を示す黄色へと色を一瞬変え、すぐさま白黒の世界と赤い空へと切り替えられる――これは二年前に初めて映画ではなく、実際の出来事として見たものを思い起こさせる。
二年前のあの日、緊急避難命令はアバターを放置してでも強制ログアウトせよっというものだが、僕らがいた地域だけその強制ログアウト機能が機能不全を起こしており、ログアウト出来なかった。事件後に知ったのは、テロリストによる工作などではなく、ただ単に、行政の怠慢による人災だったという事実――生き残った遺族には賠償金は支払われたが、そんなものは失ったものに比べれば微々たるものだった。
父を失った。
母との暮らしを失った。
これをどう賠償するというのか。
そんな恐怖と絶望の赤い空色――そんな中に、今度は僕が助ける立場として留まっている。市長からギルドへの依頼として、人命救出のための安全保全をしてほしいというものがされ、ギルドは電戯士資格のありギルド登録している者全員に依頼を通達――電戯士は大量に溢れるであろう戯魔を狩る格好の機会として次々に参加していく。
そこにあるのは、武勲とカネだった。
人命救助は本来、消防のデジタルレスキューや警察などの仕事なので、その救出のための安全確保としての大量の電戯士投入なので、本来は僕ら兄妹二人を助けた逮捕された仙波優眞や笹木忠太のように命を懸けて救う必要などないのだ。
ただ、彼らは助けてくれた。
そのあとにどんな悪行をしようとも、その事実だけは変わらない。
どんな偶然だろうと、どんな理由だろうと、彼らは助けてくれた――だから、僕も助けられるだけの力をつけ、助けたいと思いこの場にいる――もちろん、武勲もカネもほしいし、元凶となっているブラックドラゴンへの復讐心も忘れていない。
だが、巨大化したブラックドラゴンへの対処は、情報軍の仕事だ。
巨大化した戯魔への対処法なんて、電戯士には持ち合わせていない。
だから、今は目の前の取り残されている一般人救出、その安全保全を第一とする。
「これより、行動を開始する」
視覚情報などはすでに録画録音状態だ――復讐を遂げるまでを伝えるのが、今回のエンターテイメントだ。その最後が尻すぼみにならないようにしないといけない。
「お互い、死なない程度に頑張りましょう」
「ああ。燐、背中は任せたぞ」
「はい、ぎゅ~っとしますっ」
「回れ右して背中を守ってくれ」
「りょーかいでありますっ」
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二年前とは違う――助けられる立場から、助けられる立場へと変わったのだ。
今度こそ抜け出してみせる――あの日から止まっている、この赤い空の下から。




