六章5
「いま茅渟市の三大電戯士事務所が合同で戦線を張っている。これはあんたらの同期の二人、鈴見姉弟からの発案でありお願いだったんだ――で、うちの事務所である桃井電戯士事務所が、この戯魔園を担当することとなった。もちろん、お前さんの復讐のお手伝いをするという名目で、だ。だから、安心して――親父殿の仇を討てばいい」
ということらしい。
不仲ではないが滅多と共同戦線なんて張らない三大電戯士事務所――雪沢電戯士事務所、桃井電戯士事務所、日野&水無月電戯士事務所が、僕の個人的な復讐に手を貸してくれる、という名目で大量に溢れ出る高位戯魔を狩る好機を摑んだわけだ――現にスリーマンセルで現れた陸雄以外の三國順子と皐月剛生は、先程から勢いよく戯魔を狩っている。
なんでもいい。
助かった。
「ありがとうございます、陸雄さん」
「ああ、ほんとありがとうございます、陸雄さん」
あとで蓮歌と慶児にも謝って礼を言わないとな。
「俺は何もしてねぇーよ」
「いやいや、陸雄さんは所長に頭下げてましたよ」
「そうそう、『戦友を助けたいので』とかなんとか」
「おい、お前らなぁ」
順子と剛生がにやりとしてそういう。
僕は苦笑しつつ、感謝を込めつついう。
「しているじゃないですか」
「していますねー」
「照れくさいことをいわれちまったな。男同士なら察するだけで済ませてくれや」
「あー、すみません。そうしたことには鈍感で」
「わたし男じゃないんで、そこはちょっと察しかねます」
ひとまず礼は言えたので、本題に入る。
「――で、作戦はどうなっているんですか?」
「その前に知らなければならない――復讐する戯魔とは、どいつだ?」
僕はその言葉に一瞬黙した――だが、それでは協力は得られまい。
だから――決意し言い放つ。
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「『ファイナルドラグーン』の――〈ブラックドラゴン〉です」
『ファイナルドラグーン』シリーズのドラゴンは人化することができる――そして、その人化した状態だと、その強さは確かに強いがドラゴン状態よりかは弱い。逮捕された仙波優眞は、その人化した状態のブラックドラゴンを捕縛し、そしてホワイトパラディンズに売り捌いた。
あのとき、アルティメットマンによるデバッグ光線により弱った奴は人化した。
そして――その近くにいた父と母を敵視し攻撃、父を殺し母を植物人間とした。僕と妹はそのとき、震えていることしかできなかった――その人化したブラックドラゴンに果敢にも立ち向かい、そして捕縛した僕らの英雄――僕にとって目指すべきだと思った電戯士の一人。
だが、それも過去の話だ。
今は情報屋〈豹騎〉からもたらされた情報によると、ブラックドラゴンは厳重に地下の檻へ封印されているそうだ。もし、こいつが脱走するようなことになれば一大事だ。
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「僕は寝首を掻いてでも、復讐を遂げる必要があるんだ!」
その決意の瞳の前に、陸雄が黙しながら頷いた。
「了解した。いま所長に全部会話ログを送った」そしてしばらく、電脳通信を陸雄がしている。その周りには彼の事務所の先輩方が守りを固めてくれており、戦闘音が絶えず聞こえてくる。「所長からの許可が下りた。なるべく速やかに、目標を討滅せよ、と」
「ああ、もちろんだ」
僕らは桃井電戯士事務所の先輩方に守られながら、通路を突き進む。
地下の階段を確実に下ってゆき、目的の檻の前へと到達する。
檻の外から銃を構える。この日のために、紡いできた対怪獣戯魔対策のアポートシス因子弾が入った拳銃を構える――一撃で仕留める――この日をどれだけ待ったことか!
ようやく、僕は明日から明日に向かって歩み出せるのだ。
檻の明かりが点された。
「な、何だとッ!」
そこにはブラックドラゴンはいなかった。
すでに――すでに運び出されたあとだったのだ!
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「ちくしょうッ!!」
僕の怒りの声だけが檻の中をこだました。
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同時刻――茅渟市晄雫区再開発地域にて、ブラックドラゴンが現出。
防衛総省は怪獣警報を発令――晄雫区に緊急避難命令のサイレンが鳴り響いた。
[六章・了]




