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オーバーゲーム・デバッガーズ:チヌシティ・クエスト  作者: テロメア
三章 立ち上がった正義、犠牲になった愛
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三章3

 階段の入口を潜ると、即座に新たな力で通路が封印される。

 二人が並んで通れる程度の階段に出現したのは、鎌を持った力天魔〈ザダニヱズ〉と、力天魔級では最強クラスの二・五メートルのゴリラのような巨漢〈ギガンテジア〉が現れた――五階分上階のギガンテジア一体が掌で胸を叩いて、階段を四肢を使って駆け下りてくる。鎌を持ったヒトサイズの小柄なザダニヱズは、螺旋状になっている階段の真ん中を飛び降りてくる。

「狭い通路じゃあ、刀よりこっちの方がいいだろう」

 燐はナックルだからいいとして、こっちは大振りの太刀。

 狭い階段で機敏に動くには――拳銃に限る/セーフティを外し、早速、奇声を上げながら降ってきたザダニヱズの胸と頭に一発ずつ叩き込む。ダダンッ――と、早撃ちをし、階段を上ってゆく。一体がやられたことにより、ザダニヱズも作戦変更のようで、鎌で各階に止まった。

「ここは任せろ、サクッといくぜ!」

「じゃあ、その次はわたしですからねっ」

 燐がにやりと笑い、拳と拳を突き合わせると、炎の拳が火花を散らした。

 階段をランダムな動きで下ってくるザダニヱズ――だが、俺が銃だけに絞ったこの状態の集中力の前では、止まっているのと同じだ――真横から現れたザダニヱズの腕に一発/鎌が吹き飛びがら空きの頭にヘッドショットの一発/斃す(キル)――階段の壁と手摺りからの二体同時攻撃/一体目の鎌をしゃがんで避け、しゃがんだ状態のまま攻撃してきていない方のザダニヱズの足に一発/体勢が崩れ頭から階段を降りてきたザダニヱズを立ち上がりつつ踏みつけ、攻撃してきた方のザダニヱズの側頭部に二発/斃す(キル)/踏みつけていたザダニヱズの頭に一発/斃す(キル)。

 弾丸数を気にしなくていい、KVの拳銃は楽でいい。

 足元のザダニヱズが黒い砂へと還元され、電子塵となって分解された。

「やっぱり、本領発揮すれば、銃技がめちゃ凄いんですね」

「ありがと――でも、まだまだだよ」

 事務所であれだけの力の差を感じると――まだまだだ!

 上階から突進してきたギガンテジアに向けて、手榴弾を二個投げる――手榴弾がギガンテジアの足元に来た瞬間、ダダンッと撃ち抜き/爆発/ギガンテジアの足元が吹き飛び、バランスを崩したギガンテジアが頭から落ちてき、後頭部のギガンテジアの弱点部分(それ以外は堅くて弾丸が通らない)に、魔力を加えた溜め技のパワーショットで撃ち抜く。

 十二発を一度に叩き込む。

 後頭部が弾けたギガンテジアが、呻く前にもう一発パワーショットを撃ち込む/斃す(キル)。

 ギガンテジアが消滅したので、一斉に飛びかかってきたザダニヱズに手榴弾をプレゼントする――ダンッ――と一発撃つと、手榴弾が弾け、固まっていたザダニヱズが皆吹き飛ぶ。

 一瞬のスロー演出とヘビメタのシャフト効果音が鳴り響く。

「さて、先に進もうか」

「いぇっさぁー」

 階段を一気に駆け上がり、ドアを蹴り破り潜ると――そこは受付をした玄関ホールだった。さっきよりも〈修羅道〉に入っているので、空間が(ひず)んで広くなった玄関ホールに入ると/天魔の力で出入口が封印され――エネミーが出現し、ヘビメタBGMが流れ出す。

 力天魔〈ボヲジェーゼ〉×二体と、その他のザダニヱズ×五体。

 ボヲジェーゼは二メートル弱のヒト型のエネミーで、両腕にはボクサーのグローブみたいに巨大な鉄球となっており、あれの一撃を喰らうとかなりのHPが削られてしまう。

「さァてと――ボヲジェーゼはわたしが貰います」

「りょーかい。じゃあ、雑魚の掃除は任せろ」

 燐が一歩大きく踏み込み――前にいた三体のザダニヱズを擦り抜け、目的の並んでいるボヲジェーゼ二体の間へと這入り込み、両手を拡げてそれぞれに指先でくいくいっと挑発する。

 このKVでは、倒したい敵に挑発行為をすることにより、向かって来させることができる。

 挑発された二体のボヲジェーゼは、同時に鉄球の右腕を燐の方へと叩き込む――ガキィン――と鉄球同士がぶつかり合った鈍い音/燐はそのぶつかり合った鉄球の下にしゃがみ込み避けていた――二体のボヲジェーゼが鉄球の右腕を引く瞬間、僕から見て右方向のボヲジェーゼの懐に這入り込み、一瞬の間に、ボヲジェーゼの左胸部に右拳を/右腹部に左拳を/左腹部に右拳を/右胸部に左拳を/左胸部下に右拳を/右胸部下に左拳を/鳩尾(みぞおち)に強烈な右ストレートを――計七発の拳をドガガガガガガガッと叩き込み、ボヲジェーゼがくの字に腰を曲げた瞬間――バク宙回転/右足でその顎を蹴り上げ回転し、後ろから迫ってきていたもう一体の後頭部に、折り畳んだ両膝で一撃を加え、その衝撃で一歩ほど離れたところに着地した。

 流れるような攻撃に、思わず見惚(みと)れてしまった。

 凄いなぁと感心しつつ、目の前に迫ってきていたザダニヱズの胸と頭に一発ずつ叩き込み、斃す(キル)――振り下ろされていた鎌の刃に弾丸を二発叩き込み、その軌道を修正し真横に振り下ろさせる/振り下ろしてがら空きのザダニヱズにヘッドショットで斃す(キル)/残りの三体が同時に構えを左右と真上から振り下ろしてくるのを、真ん中の一体に集中的に叩き込み黒い砂へと還元し、斃し(キル)/空振りをした二体を振り返り様に、右側の奴から頭に一発ずつ撃ち込み斃し(キル)た。

 燐の方へと振り返る。

 と――先程、後頭部に膝を叩き込んだボヲジェーゼの背中に右拳/左拳/右拳/左拳/右拳/左拳/右拳/左拳/右拳/左拳から、強烈な右ストレートを叩き込んで、(もろ)くなったボヲジェーゼの装甲を貫き、その背中に大穴を穿っていた――大穴を穿たれた一体が、振り向きざまに鉄球を振るうが、それを燐はしゃがんで避け、勢いよく起き上がり左足で地面を蹴り飛び上がり様に、右足のハイキックを二メートル弱あるボヲジェーゼの顔面に叩き込み顔を砕き斃す(キル)――一体のボヲジェーゼが黒い砂へと還元されてゆく中、もう一体が突進してくる/燐はハイキックの姿勢からそのまま空中で半回転して、左足の踵を(かかと )下方向からもう一体の顔面に叩き込む――顔面を喰らったそいつは怯んだ隙に、燐が着地と同時にそいつの腹部に右拳/左拳を叩き込み、くの字に体躯を曲げさせると、鋭い右膝蹴りでその顎を砕き、右手で左手を支えて左肘で相手の首を叩き折った――討滅(キル)――シャフトBGMと、スロー演出が掛かった。

   /

 二体を斃し終わった燐は、笑顔でこちらにピースしていた。

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