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気晴らしも時には必要

転移30日目。ネルの転移魔力が満ちるまで後150日。残金9万円ちょっと。

あんな事があったせいで俺はアルバイトを止めた。いや、俺は全然気にしてないんだけど周りがね。あいつ以外は結構いい人たちだったから俺がいることでギクシャクしてほしくなかったのよ。

まぁ、そこそこ金も貯まったしどうせネルの魔力が貯まるまでの臨時労働だからね。強がってなんかないよ。平気だよ。サバサバしたもんさ。でも、退社時に社長の奥さんがそっと渡してくれた心づけにはぐっとくるものがあったね。俺、ただの日雇いだったのに。分かってくれていると思うとやっぱり嬉しいもんだ。


でもバイトを止めていいこともあった。ネルがすげー嬉しそうなのよ。やっぱり寂しかったのかなー。口や態度に出さないところがまたいじらしいぜ。

だって、ネルって10歳だぜ?普通、10歳の子がひとりで一日の大半を過ごすか?片親の子の心持ちがわかっちゃうよ。俺は母ちゃんも父ちゃんもいたからなぁ。

金は9万ちょっとある。1ケ月前と比べたら大金持ちだ。このまま収入がなくても1ケ月は凌げる金額である。でも5ケ月は持たない。やっぱりなんとかしなくちゃな。どっかに金持っている悪党はいないかなぁ。いっそのこと金持っているやつは悪党ということにしちまうか?これなら俺たち以外ほぼ全員悪党だしな。よりどりみどりだ。いや、冗談だよ。そんなことする訳ないじゃん。ネルに怒られるよ。

まあ、金はある。時間もある。そんな時は、レジャーを楽しむのが現代日本人のデフォルメスタンダードだ。今日も天気が良いからね。かといって無駄遣いはできないよ。

でも、レジャーって言われても困るな。いや、自分で言ったんだが・・。なんせ俺、体年齢15歳ちょっとで、学習年齢13歳止まりのお子ちゃまだからな。大したことを思いつけないのよ。ネル相手にキャッチボールやドリフトパスをする訳にはいかないし、神社仏閣めぐりを楽しむ歳でもない。いや、ネルは喜ぶかもしれないが俺が勘弁してだ。子供の頃、景勝公のお墓の周りで遊んでいて石碑を倒してしこたま怒られて以来、あそこは近寄りがたいの。

後は金が掛からないのは散策かなぁ。でも、今の米沢って異世界より都会だからなぁ。山や河なら異世界の方が規模も植生も上だしな。米沢には触手植物なんていないっしょ。

俺が首を傾げて悩んでいるとネルが俺の服を引っ張った。

「金治、ネル、あそこ行きたい。」

ネルが指差したのは本屋だった。あーっ、本屋ね、ヒマ潰しにはもってこいか?でもネル日本語読めないじゃん。

けど、折角ネルが行きたがっているんだから俺が気にすることもないか。俺が読んでやればいいんだし。

でもネルよ、俺の語学力を甘くみるなよ。俺には『必殺漢字抜かし』の秘技があるんだぜ!


まあ、実際は俺が読んで聞かせることはなかった。ネルは絵本に夢中になったからね。凄いね、絵本って。字なんか読めなくても楽しめるんだ。さすが、ビジュアル!小説なんか到底叶わない情報量だ!

俺たちは2時間くらい本屋で楽しんだ後、昼飯を食べに外に出た。ネルはすげー気に入った本を買ってご機嫌だ。ちょっと高かったけど、大丈夫。俺が3食抜けば事足りることだし。ネルには寂しい思いをさせちゃったからな。これくらいじゃ、まだ足りないぜ。

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