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異世界 エピソード 想い

その日、金治とネルとおばあちゃんと私は近所の神社にお参りに来ていた。

金治は嫌そうだったがおばあちゃんは聞かない。危ないことがあった後はちゃんと神様にお礼を言わなきゃ駄目と押し通す。そこにネルも加勢したから金治に逃げ道はなかった。


だがそんな金治もネルが大喜びであれこれ聞くので機嫌が直った。大威張りで説明している。


おばあちゃんはなにやら神主さんから直接頂いている。それを大事そうにカバンにしまった。

「よし、ネル。次は俺が子供の頃、倒して怒られた石碑を見せてやる。こっちだ!」

二人は積もった雪もなんのその、わざわざ人が通った雪道意外を足跡をつけて走っていく。

こうして見ている分にはごく普通の子供だ。いや本当に子供なのだ。これが普通なんだ。


「金治ちゃん、ネルちゃん、おばあちゃんちょっと周りをお参りしてくるからあまり遠くに行っちゃだめよ。」

「うほーい!」

金治がアホな返事を返す。


「おばあちゃん、私も付いて行っていいですか?」

「えっ?ええ、どうぞ。若い人には退屈かもしれないけど。」

おばあちゃんは道すがら、石碑や石像、小さな祠の説明をしてくれた。そしてある地蔵の前でお祈りを始める。


地蔵の横にはこの地蔵の由来が書いた看板があった。

身代わり地蔵。戦国時代、戦に狩り出された男たちの安全を願って女たちが神に願掛けした風習。男たちにもしもの事があればこの身を変わりに差し出すので男たちをお助けくださいと、女たちが願った地蔵らしい。


5分ほど経っただろうか、おばあちゃんは先ほど神主から受け取ったものをカバンから取り出し地蔵に供えまた祈る。


そしておばあちゃんは、お地蔵さんの前で白木の裏に自分の名前を書いた。


「それ、私の名前も添えてもらっていいですか?」

私の問いかけに少し戸惑ったようだがおばあちゃんは頷いてくれた。

「そうね、二人の方が願いが叶うかもしれないわね。」

そして自分の名前の横に筆を置いた時、手が止まる。

「そう言えば、まだあなたのお名前を聞いてなかったわ。」


「みるく。・・私、海上みるくって言います。」


-完-

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