魔力充填率100%満期終了!!
12月10日。俺たちは3ケ月ぶりに米沢に戻った。何で?だって俺が異世界に飛んだのは60年後の米沢からだから。ネルはどこからでも大丈夫と言っているけど一応ね。
ネルは学校のお友達にお別れ会をして貰った。おれはばあちゃんたちからだ。何だこの差は?
しかも何故か姉ちゃんもついて来る。もしかして俺の持っている現金が目当てか?姉ちゃんはもう大人なんだから自立してください。共生ばかりしているとその内ミトコンドリアって呼ばれちゃうよ。
結局俺たちが過去に飛んじゃった理由は分からなかった。いや、調べもしなかったからな。分かるはずないか。でも姉ちゃんは何か知っているみたいだった。
まぁ聞かないけどね。多分姉ちゃんも口を割らないだろう。
ネルはばあちゃんに飛びついてはしゃいでいる。こらっ、ネル!ばあちゃんはばあちゃんなんだから飛びついちゃ駄目よ。
さすがに姉ちゃんが寝る場所はないのでホテルに泊まってもらう。何故か払いは俺だ。いや、姉ちゃんは俺を玄関に寝かせて自分が居座るつもりだったみたいだがばあちゃんが止めてくれた。ううっ、ばあちゃんありがとう。というか姉ちゃん、俺の扱い酷くね?
翌日ネルはばあちゃんに小学校の話の続きを話しまくる。時々同じ事を繰り返すけどばあちゃんは気にしていない。ニコニコして聞いてくれる。
でも、ばあちゃんも負けてないよ。アルバムを見せながら昔話だ。ばあちゃんは戦後生まれだけど、名前に米を付けて貰うくらいだから子供時代の食糧事情は良くなかったはずだ。それでも苦労話は出てこない。楽しかった思い出だけを語ってくれるよ。
しかしすごいね、60年以上前のことをよくもまあ覚えているもんだ。俺なんて1年前のことすらあやふやだよ。学校の先生は顔は覚えているけど名前は思い出せないな。
今日は姉ちゃんが米沢牛を食べたいと言い出したので外食です。米沢牛は相変わらず美味かった。ネルはこの前より少し多く食べれるようになったよ。成長しているんだね。姉ちゃんは自分で言いだした割には食べなかった。その代わり飲んだよ。おみやげにするとお店で一番旨いというお酒を店員さんに持ってこさせてたよ。誰が払うと思ってるんだ。
まぁ、でも美味しい食べ物は人を幸せにする。ネルは沢山食べれて満足、ばあちゃんもネルの笑顔が見れて満足、姉ちゃんは一升瓶を抱えて満足。俺?勿論大満足さ!ああっ、金があるって素晴らしいね。
別れ際、姉ちゃんが何故か真顔で俺に頭を下げた。
「金治、・・ありがとう。」
「はぁ?」
いきなり何を言い出すんだ?さては俺の金を既にくすねたのか?なんか調子狂うんですけど。
でも、顔を上げた時の姉ちゃんはいつもの姉ちゃんに戻っていた。
「明日はネルとばあちゃんの3人で買い物に行くから、お前も来たけりゃ金を用意しておけ。どうせ向こうに持っていっても仕方ないだろう?」
うん、やっぱり姉ちゃんはこうじゃなくちゃな。
12月17日 木曜日。ネルが俺にそっと告げる。
「金治、魔力が貯まった。いつでもいける。」




