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大雪自慢

12月1日。やけに静かと思ったら雪が積もっていたよ。米沢も結構降るけどここいらはもっとすごいらしい。俺はその話を聞いた時、何故か対抗意識が芽生えて米沢の方は何メートル積もったことがあるなんて不毛な自慢をしてしまったが、家の前の雪を見て後悔している。くっ、負けた・・。いや、勝ち負けじゃないのは分かっているけどなんか悔しい。


俺は用意しておいた雪かき用の道具で道路までの道を開削していく。

むーっ、燃焼魔法を使っちゃ駄目かな。いや、あの魔法じゃ表面だけしか溶けないか。雪って固体だから潜伏熱だか扇風機熱だか、なんか余計な熱を追加しないと溶けないんだそうだ。学校の先生が言ってたんだから間違いないだろう。

俺は諦めて人力で雪を寄せていく。まあ、俺は勇者属性だから近所のじいちゃん、ばあちゃんの万倍は早いけどね。あっという間に道路まで開削したよ。


でも雪かきはこれで終わんないのよ。もう一度言うけど雪って固体だから地面に染み込まないんだ。と言う事は除雪した分だけ隣にうず高く積まれる。まあ、圧縮すれば体積は減るけど、その分単位当たりの重量は増す。なんだっけ?比重?

水は結構重いよ。1メートル立方で1トンになるよ。軽自動車より重いよ。そんなのが海から何億万トンも来たら防げないよ。逃げるしかないね。人事じゃないよ。川だって大した量の流れがあるんだから。増水した川には近づいちゃだめだよ。海まで流されるから見つけて貰えないよ。そんな人が今でも沢山いるよ。


話が反れたが、除雪した雪をそのままにしておくと次に降った雪がその上に積もり、その上にまた除雪した雪を積むから段々高くなっちゃうの。

雪のあまり降らない場所の人には楽しそうな光景かもしれないけど、そこで生活する人にとっては脅威となる。まさか、自分の家の前で雪崩に会いたくないでしょう?だから除雪した雪は別の場所に持っていく。大抵は広場や川だね。


そこで、今度はスコップとソリのハイブリットのような形をした道具の出番である。俗称『ダンプ』だ。ばあちゃん、じいちゃんたちの中にはこれで直接雪かきをする猛者もいる。まぁ、圧縮する前の雪は軽いからね。その方が効率的だったりするのよ。でも俺は勇者属性だからな。お年寄りと同じ量を運んでいては名が廃るじゃん。ぱんかぱんかに圧縮した雪を山盛りにして運ぶぜ!その方が回数も減らせるからな!


でも、秋田の雪は手ごわかった。俺の家から一番近い雪の集積場は直線で500メートルくらいなんだけど、除雪の済んだ道路を行くと倍になる。横着モンの俺は当然除雪されていない最短ルートを選択する。

膝まである新雪を掻き分けながら進むこと30分。後から出発した隣のじいちゃんが既に雪を捨て終えて待っていてくれたよ。まぁ、じいちゃんは軽トラだけどね。俺はじいちゃんの軽トラに乗せてもらって家に戻る。

だが、2回目からは速いぜ!既にルートは開削された。500キロ近い重量が通った道はコンクリートよりは柔い!でも人が歩くには十分だ。俺は500メートルを5分で運びきったよ。これってもしかしたら世界記録じゃないかな?


結局、俺は2時間ほどかけて家の周りの雪を除雪した。主要道路と生活道路は自治体が専用車輌でどかどかやるから大丈夫。あの人たち実は夜を徹して作業してくれてるんだよね。仕事といえばその通りなんだけど、中々できることではないよ。


朝起きて道路の除雪が済んでいるのは当たり前?いえいえ、誰かが徹夜でしてくれたんです。朝出したゴミがいつの間にか集積場から無くなっているのは当たり前?いえいえ、誰かが運んでくれたんです。この意味、わかるかなぁ。俺はわかるよ。


部屋に入ると姉ちゃんがコタツに入って天気予報を見ていた。姉ちゃん、ネルは玄関で出迎えてくれたよ。タオルを渡してくれたよ。あなたも見習ったらどうですか?

そんな俺の心の声が聞こえたのか姉ちゃんが俺に声をかける。

「ごくろうさまです。ご主人様。お召し物をお着替えください。ほら、こうして私の体温で暖めておきましたから。ある種のお店で体験するには諭吉が2枚は必要なプレミアム体験ですよ。でもご主人様は無料です。」

姉ちゃん、ネルが真似するから止めて下さい。後、着替えが暖かいのはコタツの中に入れておいたからで、それすら俺が雪かき前に入れておいた物です。姉ちゃんなにもしていません。


そんな俺の心の声を無視して姉ちゃんは次の指令を下す。

「金治、ちょっと休憩したら集会場まで行ってきて。明日の晩は昨日よりすごい寒波が来るらしいから村中の屋根の雪降ろしを手伝って来い。昼飯は役場が持つそうだから心配するな。」

まったく、姉ちゃんは人使いが荒いよ。あれ?そういえばネル学校はどうしたの?えっ、雪で休校?明日も?う~ん、でも遊んであげられないなぁ。ごめんぽ。

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