ネルが学校に行きたそう
姉ちゃんの部屋からは学校へ登校する小学生の列が見える。というか目の前が小学校だった。
ネルは暇さえあれば学校を眺めていた。あっちの世界ではこの位の規模でまとめて勉強を教えるシステムは庶民には無かったからな。珍しいのかもしれない。
俺は金の心配が無くなったのでネルの側にずっといてやれるけどやっぱり同い年くらいの子たちと遊びたいよな。
ネルの魔力が貯まるまで後90日くらい。2学期は既に始まっているから、この時期に転入するのは変かな?いや、その前に手続きできるのか?俺ら戸籍すら無いからな。でも金はあるぜ!
俺は姉ちゃんに相談してみた。
「いいんじゃないの。ネルちゃん、日本人ぽくないからどこか適当な国からホームステイしに来たという設定で。楽勝よ。」
姉ちゃんはあっけらかんと答える。そんな簡単に出来るもんなのか?
「なんだったら金治も一緒に行くか?中学を落第したバカっつう設定で。あっ、本当だから設定いらないか。」
なんだとぉ~!姉ちゃん、日本には思いやりという精神があるだぞ!本当のことでも言っていいこととダメなことがあるだ!欧米人みたいに全てをさらけ出して仲良くなるなんてことはしないんだよ!
「まあ、本当のことはおいといて今ならあそこら辺が丁度いいかな。」
置いとくんかい!
「ツテがあるんですか?」
「うん、秋田なんだけどね。空き家があるから住む所も確保出来るし、しかも家賃はタダよ。」
おおっ、タダ!俺の中の貧乏人の血が騒ぎ出すぜ。だが、経験がタダより高いものはないと警告してくる。
「なっ、なんでまた。」
「過疎対策ね。自治体としては、本当は転居して住み着いてほしい所だろうけど大丈夫、ボロ屋だからぐだぐだ言わせないわ。というか、こんなに美しい女性が来るんだからお祭りのひとつくらい開催しても罰は当たらないわ。」
・・?なんか引っかかるフレーズがあるんですけど。
「あの、もしかして姉ちゃんも来るんですか?」
「当然じゃん。あんたのせいで私は無職になったんだから責任取りなさい。」
え~っ、なんか不条理な気がするんですけど。
「今日は金曜日だから月曜日から行けるようにすっか。日曜日に引っ越すから準備しておいて。」
俺、相談したのは30分前だよ。それで3日後には転入ですか。そんなこと普通出来るのか?
ん~っ、本当に何モンなんだ、こいつは。
なんやかんやでネルは小学校に行けることになった。ネルは大喜びである。興奮しすぎて夜中まで寝なかったよ。姉ちゃんが学校の怪談を聞かせるから余計に寝ないよ。校長先生の髪の毛は絶対引っ張っちゃいけないと注意してたよ。
姉ちゃん、ネルが信じるから止めて下さい。
引越しといっても荷物はネルの持ち物くらいしかない。なんせ俺たち最近まで無宿者だったからね。学校で必要なものは向こうで準備した方がいいしな。
結局、荷造りは姉ちゃんのだけだった。でも、どこにこんなにあったんだというくらい服が出てきたのがびっくりだったよ。毎日1着づつ着ても1年かかるんじゃねぇの?俺なんか3着しか持ってないんですけど。
途中、米沢のばあちゃん家に寄った。ネルはばあちゃんと毎日電話で話していたけどやっぱり会うのは嬉しいらしい。
ばあちゃんは丸薬の代金を全額、俺に渡そうとするが断る。俺は必殺孫のお願いをネルに演じさせ半々とした。でも多分ばあちゃんは使ってくれないだろうな。まあいいや、それが年寄りつうもんか?
別れ際、ばあちゃんは寂しそうだったがネルが学校に行く為と笑って送り出してくれた。最後になってネルがやっぱり学校に行かないと駄々をこねたが、ばあちゃんがやさしく叱ってくれたよ。
うん、ばあちゃんには世話になりっ放しだ。
これはもうなんていうか感謝、感謝だ。




