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水戸支部佐竹部隊

俺は男をとあるビルの屋上に引っ張り上げた。まったくこの辺りって人目を避けれる場所が無さ過ぎるよ。

「ほい、おっさん。もう一度聞く。ネルはどこだ。」

自白系の魔法を掛けたにも関わらず男はまだ抵抗する。何だこいつ、人間じゃないのか?俺は試しに中和系の魔法を試みた。結果はドンピシャ。普通のおじさんに戻りました。魔法で防御していたのね。でもどうやって?いや、今はネルの事が優先だ。

「・・彼女は、・・水戸支部にいる。」

あ~っ、やっぱり。所で水戸支部ってどこ?

俺は男から水戸支部の情報を聞き出す。いや、待て。メモるからゆっくりだぞ。

あれ?水戸って俺が間違って連れて行かれた所じゃん。なになに、もしかして間違いじゃなかったの?もしかして俺のトラックの前辺りをネルを乗せた車が走ってたりしたの?がーん!


俺は男に他の情報も吐き出させる。これがまた一苦労。おっさん、頑固なのよ。普通自白系の魔法をかけられたらペラペラのはずなんだけど、質問の度に抵抗しやがる。くそっ、こいつは2級戦士かっつうの。

1時間ほど掛かって、やっとこさ知りたい情報を手に入れる。因みにこのおっさんは、アブラトハム・リンリントカーンじゃなかった。ただの本部長だって。となると人質としては価値が低いか。でも陽動には使えるかも。俺の攻撃で防戦の指示も取らずに逃げ出したのは、実は別組織と抗争中だったらしくて俺がネルを取り返しに来たとは思っていなかったらしい。つまり少なくとも本部は俺を警戒していない。ならこのままこいつを神隠しにしておけば本部の追手はこいつを探すのに集中して俺のことは後回しのはずだ。

俺はおっさんから通信装置と財布を巻き上げる。中身は3万ちょっと。こいつ本当に偉いのか?いや、カード類は沢山持っていたから全て電子決済なのか。これだからブルジョアは嫌だねぇ、セキュリティが高すぎるよ。


俺はおっさんを放置して駅前に向かう。そこで客待ちのタクシーに乗って水戸まで走って貰う事にした。決して電車の乗り方が分からなかった訳ではありません。

「運ちゃん、これで茨城の水戸まで走れる?」

俺は本部長から巻き上げた金を見せる。

「あーっ、高速を使うとちょっと足りないかなぁ。」

運ちゃんの返事はつれない。ちょっと3万円だよ!あんたらどんだけぼったくるつもりなんだ。俺は後2枚追加して車を出させた。運ちゃんは上機嫌である。こいつ道を間違えないだろうな。着いたら日立でしたなんて言ったらしばくぞ。


俺は秘密結社『あかるいーだ』の水戸支部のまん前に車を付けさせた。運ちゃんご苦労!これ少ないけどお土産に水戸納豆でも買ってちょ。俺はお釣りの小銭を気前よく差し出す。その額、280円。嫌味じゃないよ。本当にこの額で納豆は買えるよ。


水戸支部は郊外にあった。ちょっと見は電気部品の中堅下請け工場ぽい。もしかしたら倒産した工場を買い取ったのかもしれない。

俺は工場をぐるっと一周する。壁はないけど植栽が邪魔をしてよく見えない。仕方がないので近くの鉄塔に飛び乗った。一応迷彩魔法で姿を隠す。魔法使いみたいに完璧には出来ないけど、まぁ大丈夫でしょう。

工場の敷地内には100台ほどの車が駐車している。建物は2階建ての棟が2棟と平屋の棟が1棟。俺は透視魔法で建物の中を探る・・、探れたらいいな。残念ながら俺は透視魔法が使えない。俺に魔法を教えてくれた師匠が「あなたは絶対覗きに使うから駄目です。」と言って教えてくれなかったのだ。

うん、前日に師匠の風呂を覗いたのがばれていたらしい。まさか、あの時のツケを今払うことになるとは思わなかったよ。


でも、天は俺の味方だった。平屋の建物から男たちに連れられてネルが出てきたのだ。ビンゴ!!俺は鉄塔を蹴り一気にネルの所に跳ぶ。反動で鉄塔が少しひしゃげたが気にしない。

男たちは上着の中からあのショックガンを取り出す。

あんたらいつもそんなもん持ち歩いているの?それって違法じゃないの?

俺は体術だけで男たちを伸した。俺の魔法はアバウトだからね。ネルに当たったら困るじゃん。

でも、しばき方が甘かったのか一人の男が死んだ振りをして携帯でどこかに連絡をしたらしい。


忽ち警報が鳴り響く。驚いたことに敷地の外周に隔離障壁魔法が施されたよ。毎度のことながらびっくりだ。こいつらどこで魔法を覚えたんだ?俺が知らないだけで既にこの時代に魔法はあったのか?


まぁ、いいや。どうせこの施設は潰すつもりだったから隔離障壁は好都合だ。気兼ねなくやれるぜ。

俺は外周近くの植栽にネルを隠すと、建物の中から飛び出してくるやつらに向かって跳躍する。もしかしたら『あかるいーだ』と無関係の人もいるかもしれないけど気にしない。今、ここに居た事を悔やんでください。


初めの20人ほどは大したことがなかった。というかもしかしたら一般人だったかもしれない。警報に驚いて飛び出しただけか?でも頭に大きく一般人と書いておかないお前たちが悪いよ。俺はみんなまとめてソニック系魔法で黙らせる。何人かは鼓膜をやっちゃったかもしれない。でも死ぬよりはましだろう。


続いて30人ほど新手が現れる。こいつらは見ただけで分かる。

手強い・・。

何といってもやつらの持っている得物が厄介だ。

重魔力装甲盾。3重に魔力を注入した一級品の防御盾である。その能力は2級戦士の剣をはじく。俺の魔法もことごとく跳ね返された。


しかもやつらは3人一組で連携して動くから隙がない。防御、攻撃をお互いカバーしあうのだ。しかも組ごとにも連携しくさり、引いては返し、攻撃しては引くを繰り返してくる。

お前たちはどこぞの玄人向けゲームキャラか!そんな地味なスタイルではコンシュマー系のプレーヤーに選んで貰えないぞ!もっとドカーンとこんかい!


俺の挑発は無視される。さすがは玄人向けだ。渋いのがお好みらしい。

ならばと俺もちまちまと一人ずつ倒していく。重魔力装甲盾は厄介だけど所持している者を360度カバーするわけじゃない。後ろはがら空きなのよ。だからこその3人一組なんだけど、こいつら実戦は初めてらしい。訓練で経験していないイレギュラーに対する反応が遅いよ。俺はダーっと力で3人まとめて押し出し、陣形を崩す。そして急所に一撃。残念だが生かしてはおけない。手を抜いて後ろからグサリとされたら困るからね。


時間はかかったが程なく全員を天国に送った。でも俺の意識は先ほどから別の所に向いている。そいつは味方の戦闘員が俺にやられるのを助けもしないでじっと俺の戦い方を見ていた。

俺はやつの目の前に跳ぶ。

くそっ、驚きもしないよ、この野郎。

男は黒装束に身を包み、短めの片刃を握っている。う~ん、この手の方は日光か伊賀にしかいないんじゃなかったっけ?


突然男が二人に分裂する!そして左右から挟み撃ちするように突進してきた。

俺は左から来るやつは無視して右だけに防御を集中させる。左はフラグだ。闘気を纏ってないからね。ぬふふふふっ、これは経験の差よ。ぬかったな忍者くん!

そして俺とやつの影が重なると、そこに目も眩むような閃光がほとばしった。魔力と闘気がぶつかった時にのみ起こる現象だ。

俺たちはその光に弾かれたかのように後ろに跳び、再度間合いを取った。


こいつ・・、2級、いや3級戦士か?

俺の顔から余裕が消える。3級はまずいよ。俺、級なしだぜ?いや、面倒だから認定試験を受けてないだけで自称2.5級だけど。

まずい、まずいよ。俺、3級とはやったことがないよ。ネルは取り戻したんだからここは逃げるか?でも中途半端に蜂の巣を突いちゃったからなぁ。米沢まで追ってこられたら面倒だ。


俺は覚悟を決めた。・・おっ、何か今の俺ってかっこよくね?少年漫画の主人公みたいよ。よし、これで勝ちは決まった!何たって少年漫画の主人公が負けるわけないからな!


戦士相手には持久戦だ。勇者特性の有り余るスタミナを利用して飽和攻撃を仕掛け相手のスタミナ切れを待つ。相手に攻撃の隙を持たせては駄目だ。やつらの剣先は鋭いからな。普通、実体のない魔法をぶった切ることなんて出来ないよ。でもやつらは事も無げにやるよ。きっと馬鹿みたいに修行したんだろうな。でも馬鹿比べなら負けないぜ!

いざ!尋常に勝負だ!


俺は最大級の衝撃波をこぶし大に絞って放出する。そりゃもうこれでもかと言うくらい大量に。且つ、連続して。やつは目に見えない衝撃波の玉を、時には避け、あるいは切り裂いて凌ぐ。避けられた衝撃波の玉が地面や隔離障壁にぶつかって爆発し辺りは轟音と振動が支配する。巻き込まれた『あかるいーだ』の戦闘員がばらばらになって肉片を撒き散らしていた。

もう敷地内でまともに残っているのはネルを隠した植栽の辺りだけだ。それすら土埃で見えないから位置があやふやだったりする。あれ?だっ、大丈夫だよね?俺、ネルに対衝撃防御魔法をかけたよな?・・かけたっけ?


その時、俺の手数がちょっと止まった。やつはその隙を見逃さない。目にも見えない斬撃が俺をなで斬りにする。

「ぐはっ!」

いでーよ!3重に施していた対闘気防御をあっさりと撃破されたよ。ぎりぎり避けたから致命傷にはならなかったけど、3センチほどの深さに肉を抉られたよ。切り口がきれい過ぎて押さえておけばくっ付くんじゃねと錯覚しそうだよ。


俺は衝撃波を全周放射してやつを追っ払う。その間に治癒魔法をかけた。あれ?何か上手くいかないな。ああっ、対治癒魔法妨害が施されているんだな。

くそっ、戦士ってやつはどこまでもクールだぜ。一体、誰に教わるんだ?人を対物銃で撃つのはマナー違反なんだぞ!いや、俺は爆弾で吹き飛ばすけどね。人のことは言えんな。


その後も俺はやつに向けて衝撃波を繰り出すがラチがあかない。さすがは3級だ。動きも当初と変わらんよ。こりゃ、駄目だな。俺は奥の手を出すことに決めた。

ネルがいるから巻き込まないよう控えていたけど、3級相手に手加減はできない。俺は、ネルを隠した植栽の前に跳んだ。そして魔法を一発。


「爆縮熱反応術!アトミックボンバー!!」


俺の掛け声と共に辺りは地獄の業火に包まれる。

隔離障壁は数秒耐えたがあえなく撃沈。だが衝撃波と熱は上空に向かうよう調整しておいたので周囲にはそれほど被害が及ばない。道路のアスファルトがちょっと溶けたくらいだ。

3級忍者は、この攻撃すら凌いだかもしれないが無傷ということはないだろう。

俺は暫くやつの反撃を警戒したが反応がないので警戒を縮小した。


俺は、ネルを隠した植栽を覗き込んでネルを呼ぶ。

あれ?ネルちゃん。終わったよ、もう大丈夫だよ?出てきていいよ。


数秒後、俺は慌てた。ネルが消えてしまったのだ。

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