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この桜吹雪が目にはいらねぇか!

俺は夜を徹して走り首都圏に着いた。・・本当は乗っていたトラックが途中で茨城の方へ行っちゃったんで焦ったけどサービスエリアで乗り換えたから事なきを得た。ん~っ、ナンバープレートだけじゃ行き先が分かんないよ。最後に乗ったトラックなんて札幌ナンバーだったよ。どうやって海を越えたんだ?


俺はコンビニでおにぎりと首都圏の地図を買いパクつきながら地図を眺める。そう、眺めるだけ。だって俺の時代って今の首都圏一体って汚染区域で立ち入り禁止だからね。人なんか住んでないのよ。だから地名を見てもちんぷんかんぷん。

俺が今いるここ、首都圏は今の時間軸から30年後に某国のミサイルがどかーんと爆発して万事休すになる。しかも熱核反応に使った大量の高濃度劣化ウランが撒き散らされて30年経った時点でも年間被爆量は1ミリシーベルトを少し下回る程度までしか下がっていない。政府は環境基準値を変更して15年前から帰還を促しているけど誰も帰らなかったよ。

そりゃそうだ。だって戦争の次の年に生まれた子はすでに14歳になっているんだぜ。その子たちにしてみれば避難先がふるさとみたいなもんだ。それを親の望郷の念で子供たちが知らない土地に引っ越せるかといったら大抵の親は子供の未来を取るよ。もちろん色んなものを諦めた上での決断だよ。

お陰で首都圏は自然保護区みたいになっているらしい。東京湾の江戸前も生きの良いやつで溢れているよ。誰も食べないからね。噂というやつは根強いよ。どんなに検査をしたと言っても手に取る人はいなかったよ。終いには江戸前は貧乏人が食べるものなんていう蔑称まで付いたよ。あの時代、一番美味い魚を食べていたのは実は貧乏人だったっていうオチか?


俺は店員さんに現在位置と目的地である幕張の場所を教えてもらう。幕張は意外と近かった。現在地が豊洲という所で湾を挟んで対岸が幕張らしい。店員さんは親切にも電車の乗り継ぎ方も教えてくれた。やさしいなぁ。みんなこんな人たちばかりならいいのに。

俺はお礼を言って教えてもらった駅へ向かう。電車は早朝のせいもあって空いていた。でも東京駅で乗り換えた時は既にラッシュ時間になっちゃって揉みくちゃだったよ。逆方向はもっとすごいよ。潰れた蛙みたいに窓ガラスに人が押し付けられていたよ。よくもまあ、耐えられるもんだ。俺は今回だけだけど、あの人たちは毎日だろう?米沢は戦後の計画都市だから交通機関は余裕をもって計画されたらしいから、ここまですごいラッシュは体験したことが無かったよ。


さて、なんとか幕張には着いた。俺は秘密結社『あかるいーだ』の男から聞き出した建物の前にいる。このまま突っ込んでもいいけどネルがいなかったらやり損なので暫く様子を伺うことにする。

というか本当にネルがここにいるかも実は自信がないのだ。どこか別の施設に向かった可能性も否定できない。やつらは電話で連絡を取り合っていたはずだから、俺の方に向かった連中から返信がないことは既に気付いているはず。となれば俺が情報を得たと考えてもおかしくない。対策と対応は取っているはずだ。


俺が無い頭を使ってあれこれ考えていると黒塗りの高級車が門の中に消えていった。あれが頭領か?名前は確かアブラトハム・リンリントカーンだっけ?所謂外資系ってやつか。

よし、あいつに聞こう。俺は壁に囲まれた敷地の裏に回り壁を3箇所吹き飛ばす。ちょっと遠いけど建物にもソニック系の波動をぶつけた。さすがに壁は壊せなかったけど窓は全て粉々に吹き飛んだ。案の定、警備員がわらわら出てきたよ。

俺は野次馬に紛れて正面玄関であいつを待つ。程なく先ほどの高級車に乗ってやつが出てきたよ。今度は前後に護衛を引っ下げている。俺はやつらの後をつける。別にパトカーに先導されている訳じゃないから法定速度+αだ。見失うことはない。でも高速に上がられちゃうと厄介なので赤信号で止まった所を襲撃した。


まずは運転手だ。窓ガラス越しにソニック系を軽く一発食らわせる。だが驚いたことに魔法が弾かれた!

対魔法防御!!なに!何故だ?この時代はまだ異世界の存在は知られていないはずだぞ?俺は一瞬動きが止まってしまった。

運転手も俺の一撃に驚いた様だが後ろの席から叱咤されて信号を無視して走り出す。前後の車からは護衛が例のショックガンを手に飛び出してきた。

いや、君たちの相手をしている暇はないのよ。俺はジャンプして逃げた車を追う。勿論護衛のやつらが追って来れないようにトラックで道路を封鎖するのも忘れない。すまんね、見境なしとは俺の異世界での二つ名だからな。


逃げた車は結構なスピードを出していたが、それでも交差点では減速を余儀なくされている。そうだよな、犯罪者じゃないんだからそれが普通だよ。如何に頑丈な高級車とはいえトラックには勝てないからな。


俺は直線でやつを追い抜き前に立ち塞がる。だがやつに停まる気配はない。あの車には魔法が効かなかった。しかし対魔法防御は物理攻撃には効果がない。

俺は試しに石を拾って投げ付けてみる。魔力を使ったから時速200キロは出ているよ。やつも100キロは出ているだろうから相対速度は300キロ以上だ。でも結果は石の負け。あれ?なんか物理法則に反していない?なんでガラスより石の方が砕けるの?

やつは速度を緩めることなく迫ってくる。俺は対衝撃防御を2重に噛まして待つ。重さと魔力のガチンコ勝負だ。言っちゃなんだが、たかが2トン程度の重量で俺を吹っ飛ばせると思うなよ。俺はドラゴンの尻尾の一振りを耐え切った男だぜ!


ドカーンという音と共に凄まじい衝撃が俺を襲った。だが俺を襲った車は傷ひとつ付いていない。その代わり俺とバンパーの間で目も眩む様な光が発生した。

「!!重魔力装甲だと!?」

俺は自動車の重量に押し切られるように後ろに下がる。2重に防御してなきゃペチャンコだったかもしれない。まったくこいつらには驚かされてばっかりだ。

俺は対衝撃防御を3重に強化し、且つ自動車全体を隔絶魔法で包み込んだ。そして燃焼。あっという間に自動車の周りの酸素が無くなる。何馬力あるのか知らないが酸素の供給を絶たれたエンジンはやっと沈黙した。


俺は慎重に後部座席のドアを開ける。正確にはドアヒンジごとむしり取った。重魔力装甲もドアのロックまでは強化できない。そんなことしたら開かなくなっちゃうからね。

「おっさん、ちょっと聞きたいんだけどネルはどこ?」

俺はなるべくフレンドリーに頭領と思われる男に聞く。

「・・。」

「俺、催眠術が得意でさぁ。別にそっちの方法を取っても構わないんだけど。」

「・・。」

だんまりか。

俺は運転手と助手席の男をぶん殴って気を失わせる。

見せしめだ。だが男は無言だった。

その時遠くからサイレンの音が近づいてくるのがわかった。

「ちぇっ、時間切れだ。」

俺は男を気絶させて車外に引きずり出し、人気の無い所を探してジャンプした。

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