しつこいんだよ、おまえたち!
俺は今までの経験であいつらは追っ払ったくらいじゃ諦めないと踏んだ。
よってあいつらに分かる様に逃げることとする。いや、別に逃げる必要はないんだけど、ばあちゃんに迷惑がかかるからな。俺たちは4ケ月後には未来に飛んでいなくなるけど、ばあちゃんはこれからもここで暮らしていくんだ。あんだけ世話になったのに、いなくなった後のことは知らないなんて言えないよ。
だから早めに身を隠すことにした。もちろんハイエナは連れて行く。ばあちゃんに迷惑が掛からない所で一網打尽のけちょんけちょんにするつもりだ。まあ、俺も悪いやつから財布を巻き上げるのがうまくなったからな。もしかしたら丸薬を売るよりシノギはいいかもしれない。
俺はばあちゃんに暫く身を隠すと告げ、やつらは然るべき機関に説教させるからもう来ないと安心させた。
ばあちゃんは勿論反対したが、あの手のやつらは法のぎりぎりを突いて来るから警察に通報しても中々ラチがあかない。ならば逃げるが勝ちと納得させる。但し毎日電話するのが条件だった。年寄りは本当に心配性だね。いや、それが普通か?
翌日、ハイエナ共にこれから薬草を採りに行くから付き合えと伝える。即答で了解するかと思ったら返事はなんだかあやふやだ。ここら辺が機転の利かないアマチュアだな。いや、悪の本能で危険を察知したのか?俺は来なければ話はなしだと脅して無理くり了解させた。
予定時間を大分過ぎてからハイエナたちはやって来た。準備に時間がかかったとか言い訳してくる。一体なんの準備だよ。でも俺を子供だと侮っていないのは評価すべきか。結構、場数を踏んでいるのかもしれない。これは油断できんな。
俺はやつらを人気のない山の中に連れて行く。ここなら派手にやっても回りに気付かれないからね。
後ろから数台の車がそれとなく着いて来るよ。なんだこいつら、結構大きい組織なのか?もしかしたら鉄砲くらい持っているかもしれない。困ったなぁ、手加減できないじゃん。
山の麓に車を置いて山道を登ること30分。都会のもやしっ子かと思ったら全員息も切らずについてきたよ。わざと結構きついルートを来たのに意外だ。体力を奪って一気に畳み込もうと思ったのに失敗か。う~ん、相手を侮っていたのは俺のほうか?
俺が連れて行った場所は夏の光を存分に浴びて雑草が生えまくっていた。俺はやつらにこれが材料だからと嘘を言い刈り取らせる。
男たちはばらばらに散らばって雑草を刈り始めた。だが二人だけは俺の後ろから離れない。ちぇっ、簡単には終わらせてくれないか。雑草を刈っている男たちも隙はない。
あちゃ~、こいつら初めからやるつもりだったのね。俺は認識を改める。こいつらはプロだ。片手間には相手をできない。俺は応援を呼ぶことにした。
広域探査で辺りを探る。丁度300メートルほどの所に主様がいらっしゃいました。おおっ、これが日頃の行いの差か。まるで用意されていたかのようなシチュエーション。俺は遠隔魔法で主様の鼻つらを軽く撫でで怒らせる。主様は怒り心頭でこちらに向けて駆け出してくるよ。俺は主様の乱入に併せて後ろの二人を潰す段取りを組むが、驚いたことにやつら主様の気配に気付きやがったよ。まだ姿すら見えてないのになんなんだ?男たちは作業を中断して主様がやって来る方を凝視する。手にはなにやら拳銃のようなものを構えているよ。
そこに主様がご登場。男たちが一斉に拳銃のようなものを向け音もなくなにやら撃ちだす。すると突然主様が昏倒してしまった。
ショックガン?数千ボルトの電圧で一時的に生物の筋肉を麻痺させる暴徒鎮圧用の兵器だ。俺は当てが外れて結局一人で戦う羽目になった。でも相手の手の内が分かったから良しとする。主様、ご苦労様でした。後で木の実を奉納しときます。
正体を晒してしまった男たちは今度は遠慮なしに俺を狙って撃ってくる。ショックガンの射程は短いし弾速も遅いので交わすのはわけないが、この人数で矢継ぎ早に撃ち込まれるとさすがに焦る。俺は情報を引き出したいので広域魔法を使えないのだ。
俺は俊足魔法で一番端の男の後ろに回りこみ、男を盾にして集団の中に突進した。哀れ、盾にされた男は幾数もの針を受け白目に口から泡を吹いている。咄嗟に放したから感電はしなかったがこいつら仲間もお構いなしかよ。ちょっと酷くね?
俺は盾にした男が使い物にならなくなったので別の男を捕まえる。まともに立っている男は後3人。その数が俺を油断させたのかもしれない。行き成り左足に激痛が走った。咄嗟に目をやると男が左手でショックガンを俺の脚に撃ち込んでいた。くそっ、二挺使いかよ。俺は怒りに任せて男の両腕を捻り上げる。骨が折れる音がしたが気にしない。戦闘中に情けは無用だ。
だが、俺が男に気を取られている間に残りの二人は捨て身の突進をかけて来る。そして俺が捻り上げている男に向けて針を発射。俺は一瞬男を放すのが遅れ両腕が痺れてしまった。やつらは俺に向けとどめの針を撃ち込んでくる。
ぐわっ、こらこら、俺は熊じゃねぇよ。人間の15歳男子にそんなに撃ち込んだら普通死ぬぞ!
やつらは俺が動かなくなったので安心したのか警戒を解いて近づいてくる。
確かに体は痺れて動けないが、俺、勇者待遇だからね。この程度の危機は何度も経験しているんだ。魔法は別に体が動かなくても使えるんだぜ!
俺は近づいてくる二人に向けて衝撃魔法をぶっ放す。哀れ、二人は200メートルほど吹っ飛んで森の中に消えていった。
主様、あいつら食べていいよ。いい感じにミンチになっているはずだから。あっ、でも今回だけだよ。人間の味を覚えるとなんたらかんたらっていちゃもん付ける人がいるから気を付けてね。
俺は呼吸を整えた後、回復魔法を試みる。う~ん、あんまり効かないな。電撃系を放つ魔物はあんまりいなかったからな。直し方がよく分からん。
それでも30分ほどで何とか動けるようになった。俺はまだ息のある男を縛り上げ回復魔法をかけ蘇生させる。めんどくさいので自白系の魔法を使う。この魔法名前なんだったっけ?まぁ、いいか。名前を知らなくても使えるからね。
「おいっ、お前らどこの組織のモンだ?」
質問された男は空ろな目で答える。
「秘密結社『あかるいーだ』だ。」
ん~っ、全然知らない。戦闘錬度から察してかなりの組織だと思ったけど、まぁ自分で秘密と言っているからな。世間に知られていなくて当然か。
俺は矢継ぎ早に質問をしていく。ネルたちが心配だからとっとと帰りたいのよ。
男が答えられないこともいくつかあったが気にしない。
よし、知りたいことはほぼ聞き出した。後は後詰のやつらをしばき上げて、こいつらの本陣を潰せばどっとはらいだ。
俺に関わったのが運の尽きだぜ、『あかるいーだ』よ。
夕方、やつらの後始末を終えてばあちゃん家に戻ると、ばあちゃんがアパートの前で俺を待っていた。ひどく動揺している。
「金治ちゃん、ネルちゃんが、ネルちゃんが・・。」
「!!」
俺は自分の失態を思い知らされる。やつらふた手に別れていたのだ。連れ出されたのは俺の方だった。俺たちが出かけてから暫くして別の男たちがやって来て俺がネルを呼んでいると言ってネルを連れ出したらしい。ばあちゃんは自分も行くと言い張ったらしいが半分力ずくで引き離されたみたいだ。
ばあちゃんは今にも泣きそうな顔をして俺に謝る。俺がどんなに大丈夫だと宥めても駄目だった。お陰でネルを追うのが遅れたが今はばあちゃんの方が大事だ。
ネルは大丈夫。やつらの目的は丸薬だからネルをどうこうすることはない。やつらのアジトは分かっているからちょっと行って警察に突き出すだけとばあちゃんを安心させた。ばあちゃんは俺のことも心配してくれたが全部管轄の警察に任せるからと言って落ち着かせる。ばあちゃんは疲労と心労でぐったりしている。俺は回復魔法と催眠促進魔法でばあちゃんを眠らせ書置きを残して外に出た。
外は既に夜になっている。漆黒の闇に星が瞬き昼間の暑さが嘘のように涼しい風が山から下りてきて俺の顔を撫でる。
だが俺の怒りはその程度では冷やせない。俺のことはいい。俺と戦ったやつらは中々大したやつらだった。だが、ネルとばあちゃんを狙ったのは駄目だ。自分より弱い者を食い物にするのは自然の摂理だが人間界では許されない。やつらには思い知らさねばならぬ。上には上がいるということを。
俺はネルを追って首都圏に飛んだ。いや、実際は高速道路を走るトラックの荷台にただ乗りしたんだけどここはかっこよく飛んだ事にしておこう。




