甘い蜜には悪が寄ってくる
薬は順調に売れている。さすがに1日に二桁はけるということはなくなったが、それでも注文がこない日はない。と、いうかあまり宣伝しないようにしているのだ。俺たちはいずれいなくなる。その時、注文が来てもばあちゃんが困るからね。
ネルの魔力が貯まるまで後100日あまり。いや、2回薬草召喚で魔力を使っちゃったから120日か?俺の手元には100万以上の現金がある。無理やりばあちゃんに押し付けた金を差し引いた額ですらだ。丸薬はまだ100個近く残ってる。もうこれは安全圏内に入ったと考えてもいいだろう。ネルさま様だ。
俺だってその気になればこれ位簡単に手に出来るけど、その方法は人様に話せるような事ではないからな。やー、ネルがいて本当に良かった。
そんなネルさまは今、テレビに夢中である。高校野球とオリンピック。今では野球のルールを俺に教えるくらいだ。子供って覚えるのがはえーよ。いや、俺も子供だけどね。何なの?この差って。
オリンピックに至ってはこっちの選手の方ががんばってると言って判定に不服を申し立てる始末だ。
うん、ネルよ。言わんとする事は分かるがオリンピックってがんばる度合いを比べる競技じゃないから。あくまで結果を称える競技だから。どんなに努力しても自分より前に人がいたら負けなんです。それを人は才能といいます。でも、みんな分かっているから。だから負けた人にも拍手を送るでしょ。
そんな安泰な日々を送っていた俺たちに何やら不穏な気配が忍び寄ってきた。
高校野球とオリンピックが終わってカレンダーの月が替わる頃、ばあちゃんの所になにやら怪しげなやつらが来たのよ。製薬会社の者だと名乗っているが多分嘘だね。如何にもいい人ぽい演技をしているけど俺は騙せないよ。う~ん、すごいね。どこから嗅ぎ付けて来たんだろう。
やつらはネルの作った丸薬を褒め称え研究所で調べさせてほしいと言って来た。報酬も十分な額を提示できるという。俺は一通り話を聞いた後、大手の製薬会社の名を挙げ、実はそちらと話を進めているから駄目だと言ってお引取り願った。いや、嘘だけどね。やつらは尚も食い下がったがどうしてもというなら、相手の製薬会社と話をつけろと言い放ち追っ払う。
俺はやつらが帰った後を追った。ああいう手合いは諦めないのよ。なんせ自分のことしか考えないからな。相手が力ずくで反撃してくるなんて思ってもいないのよ。だから図に乗って押してくる。その内正体を現すだろうけどそんなのは待ってられない。正体を確認して、次に来たら天国に行ってもらう。ただ一応、黒幕を知っておかないと別のやつが来るからな。ああいう手合いは手先を使い捨てするからね。
やつらは市内のビジネスホテルに入っていった。やつらが差し出した名刺には首都圏の住所が書いてある。ホテルに宿泊するということは、また明日やってくるつもりなのだ。
俺は忍者じゃないので隠れてホテルに忍び込む方法を知らない。なのでこれ以上の追跡は断念した。明日、来なければそれでよし。懲りずに来たらきついお灸を据えてやろう。
翌日、あいつらは手を変えてネルを直接狙ってきた。といっても攫ったわけじゃない。コンビニへお使いに出かけた所をお菓子で釣って俺に取引に応じるようお願いしたらしい。ネルはお利口だから走って逃げてきたよ。俺は追いかけていってやつらの鼻つらにロケットパーンチ・・と思ったけど既にやつらはいなかったよ。逃げ足早すぎね?
だが、これで決定だ。やつらは悪だ。この引き際の良さが物語っている。
俺は今までの経験であいつらは追っ払ったくらいじゃ諦めないと踏んだ。
俺だけなら何とでもなるけど、あいつらばあちゃん家を知ってしまったからな。
後腐れのないように全滅させる必要がある。でもこの国って司法国家だからあんまり無茶出来ないのよ。となると残る選択肢はひとつ・・逃げるか。




