表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/40

商売を始める

俺はまずネルにどんな材料が必要なのかを聞いた。

もしかしたらこっちの世界では無い物があるかもしれないからね。そうなったらお手上げだ。ぬか喜びしたことになる。

俺は図書館で植物図鑑をネルに見せながら摺り合わせていく。結果は上々。全ての材料がこっちにもあった。ラッキー。


山へは俺一人で行くことにした。ネルは置いて行く。いくらネルが慣れているとはいえ10歳の子に行った事のない山へは入らせられないよ。ばあちゃんが預かってくれたよ。というか、俺たちが無宿ものだってばあちゃんにばれちゃったよ。俺はどうせ信じないと思いながらも異世界アンド未来人の設定を説明したよ。案の定ばあちゃんは理解できなかったよ。ただの家出人ということに落ち着いたよ。でも、冬には帰るというとこは理解したのかそれまではアパートで一緒に暮らせと言ってくれたよ。

おかげでホテル代が浮いたよ。食費とお世話代なら丸薬が売れれば返せる。情けは人の為ならず。昔の人は良いこと言うぜ。


でも、山に入ってふと気づいた。必要な植物はあったが、なんかすげー育ちまくっているですけど。新芽じゃなきゃダメ!ってなことになったらジョックだぜ。

後はお約束の森のクマさんとこんにちはしたが、さすがは獣、力関係を一瞬で見抜くのね。脱兎のごとく消え去りました。まぁ、俺も腹減ってなかったので追いません。

そんなこんなで一日掛けて山を走り回り籠一杯の薬草を手に入れました。後日、山菜取りに山に入っていたお年寄りたちの間で山神様を見たという噂が広がったが、まあ、俺には関係ないや。


翌日、採って来た薬草をネルに鑑定してもらう。

ぬふふふふっ、ネルよ、にいちゃんだってやるときゃやるのよ。すごいでしょ?褒めてもいいぜ!

だが、植物を見る時のネルは真剣だ。俺みたいにおちゃらけないのよ。職人さまの目です。よって判定も厳しいものになった。

「金治、これじゃだめ。」

ええええっ、そんなー!

「種類は合っているけど薬に使う触媒化合物が少なすぎる。これだと千倍の量が必要。」

がーん!現世の植物は栄養失調でしたか!ダイエット姉ちゃんでしたか!おい!てめぇーら、母ちゃんに偏食は駄目だとあれほど言われただろうが!・・言われてないか。

だが目論見が外れて落ち込んでいる俺にネルが声を掛ける。

「金治、ネル向こうの世界から薬草を持ってこれる。」

「へっ?」

俺はネルの提案が突然すぎて一瞬理解できない。

「でも、魔力を少し使っちゃう・・。」

おおっ、そうだよ、ネルって能力者だったよ。別に異世界跳躍は人だけに限らんよな。無ければ持ってくればいいんだ!向こうには売るほどあるんだからな!・・あったっけ?

「どっ、どのくらい?」

「10日分くらい。」

とっ、10日かぁ。こちらでの野宿生活換算で2万くらい。ばあちゃんは1万円で買ってくれたから3人分の材料を持ってこれればやる意味はある。

「何人分くらい持ってこれる?」

「100個くらい?」

100個!1個1万円で売れたら100万え~ん!もう、ネルったら風呂敷広げすぎじゃねえ。本当は10個くらいでしょ?にいちゃんびっくりして漏らしそうだよ。いや漏らさんがな。

うん、これは決まりだ!やるぜ、異世界薬草召喚!異世界のみんな、ごめんな、いきなり薬草の自生地からモノものがなくなるが勘弁してちょ。


俺とネルは郊外の人目のない空き地にやって来た。ネル曰く、大体の記憶で召喚する場合、薬草だけじゃなく地面ごと持ってくるから広い場所が必要なんだと。まぁ、記憶だけで召喚出来るだけですごいことだよ。

さて、召喚だ。ネルはなにやらぶつぶつ呪文を唱えている。俺は探査魔法で周囲の警戒だ。うん、誰もいない。

俺たちがこっちに来た時は一発でバンだったのに今回は時間が掛かっている。その場にいない所を持ってくるのは大変なのかな?まぁ、適当にやってドラゴンとか巻き込んじゃったら取り返しがつかんからな。ここは黙ってネルにお任せだ。

するとどーんという衝撃波と共に花畑が出現した。それも6種類も。俺は隔絶魔法で衝撃波がネルと周囲に拡散しないよう俺の所に誘導にしていたから結構なパンチを受けた。いや、ドラゴンの尻尾にぶったかれた時に比べればへでもないけどね。いや、ごめん、結構効いた。でもそこは勇者だからやせ我慢だ!ネルが心配するからな。

ネルはそんな俺を尻目に薬草を摘み始める。さすがはネル。パーティーの役割を全うしているよ。薬草を集めるのは調合師の役目、みんなを守るのは勇者の役目だ。

ネルは1時間ほどで薬草を摘み終えると俺に残りを燃やすように言ってきた。何でも土の中の微生物が突然変異する可能性がゼロではないんだと。う~ん、やりっぱなしにしないなんてさすがはネルだ。みんなも見習えよ!えっ、当たり前のことでした?すんません。


俺はネルが召喚した花畑をこんがり焼き上げると水をたっぷりと撒いて野火の憂いを無くす。偽装を徹底するなら土でも掛けたい所だが、今の時期なら2週間も掛からず草が生えてくるだろうからちょっと手抜きした。同じ結果が得られるなら何でもかんでもマニュアル通りやる必要はないのよ。

しかし、異世界の植物と言っても俺には区別がつかんな。触媒化合物ってなんなの?いや、説明しなくていいです。勉強は嫌いです。

この日はネルが疲れたから選別と調合は明日だ。俺はネルをおんぶしてばあちゃん家に帰った。しかし、ネルは本当に軽いなぁ。こんな子に色々助けてもらってるなんて俺って本当にダメぽ。


一晩寝て体力が戻ったネルは朝から選別に取り掛かる。俺はお手伝いだ。と言っても植物に付いているごみを払ったりネルが選別した植物を袋に入れる役くらいしかない。だからネルの後ろでうろうろしていたらネルにじゃまだと追い払われてしまった。ぐすん。ネル、にいちゃんも何かしたいのよ。

仕方ないので俺はばあちゃんと茶を飲みながらネルの仕事を見物する。ばあちゃんも何か言いたそうだがネルが真剣なのが分かるのか声も掛けずに見守っている。ここら辺は年の功か。俺とは違うね。


結局、選別と調合は7日ほどかかった。まあ、途中、日干しにしたり水に浸したりで手を掛けない時間も結構あったが、それでも7日かかった。薬を作るのって大変なのね。高いわけだよ。抽出と配合している時なんてあんまり真剣すぎて見ているこっちが息をするのも忘れそうだったからな。

だが、そんな俺が役立つ時がやっと来たぜ!それは魔力の注入だ!さあ、ネルよ、どんどん指示してくれ、ドラゴン級の魔力だって放出しちゃうぜ!てへっ、嘘です。さすがにドラゴン級は無理よ。

でも自称2.5級勇者くらいの魔力は持っていると思っている自意識過剰な俺だから大抵のことならやってやるぜ!ばっちこい!だ。


でも、ネルは慎重だった。まずは選別で落とした薬草で俺の魔力を試験するのよ。いや、完璧を期すなら当然なのかもしれないし薬剤師系では当たり前のことなのかもしれないがちょっとへこんだ。駄目だしされたらにいちゃん泣いちゃうよ。でも、結果から言うと試して正解。俺は下手っぴーでした。全然薬になりません。むっ、難しいぜ、薬物配合変換って。結局、半日くらいかかってやっとコツを覚えた。ネルは半日で出来るようになるなんてすごいと言ってくれたけど、本当かなぁ。まぁ、結果が出れば万事塞翁が牛だ。いや馬だったか?

俺たちは90個の丸薬を手に入れた。ゲーム的には何て言うの?Lvアップ?俺、やったことがないからわかんないや。


さて、幾多の困難を克服し俺たちは商売のブツを手に入れた。いや、ほとんどネルがやってくれたんだけど・・。でも、ここからは俺の出番だぜ!まずは宣伝だ。でもツテはないからばあちゃんのお友達の口コミが頼りです。あれ?やっぱり俺って役立たず?

結果から言えば丸薬は飛ぶように売れた。実は予約すらあったのよ。さすがはネルの薬である。薬事法の制約に縛られない異世界の万能薬は効くからね。

にゃははははっ、ばあちゃんたちは腰痛が治って満足。俺は金が貯まって大満足。win to winとはこのことか!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ