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種の衝突  作者: 宮沢弘
第五章: 午後
23/26

5−3: 人類格

「これまで人類連合は、北部連邦のクローにも南部連邦のクローにも、会議の席を用意してきました」

 ハイディ・マーシパルは、そう話しはじめた。

「ニーが南北米大陸に到達したときから、交流も盛んとは言えず、南北には文化的な違いがありました。四種人類連合の創設時に、クローの参加をクロー全体からの参加ではなく、北と南からの参加としたのも、そのような背景があります」

 ハイディ・マーシパルは離れた席からニー・バンスマンを見た。

「昨日からのオプションを、もう一度確認しましょう」

 正面のスクリーンに二つのオプションが表示された。


|   * クローをホモ属ではないと政治的に判断し、相応の対応をする

|   * クローに後見種族をつける


「言うまでもなく、一つめのオプションの場合、クローは四種人類連合の構成員ではなくなります」

 その言葉を言い終える前に、スクリーンの表示が変化した。


|   1. クローをホモ属ではないと政治的に判断し、相応の対応をする

|   2. クローに後見種族をつける


「これらは、先のクローの反応からも、受け入れられないものだということはわかります。そこで、先程、ニー・クランスが触れましたが、ニー・バンスマンのモデルにもとづいて、クローからの参加は南北ともに認めるというオプションを提案したいと思います」

 その言葉の間に、スクリーンに追加の項目が表示された。


|   1. クローをホモ属ではないと政治的に判断し、相応の対応をする

|   2. クローに後見種族をつける

|   3. 南北のクローの参加を認める

|    ■……


 その表示は、これだけでは終わらないと予測したのか、次の行にカーソルを点滅させていた。

「ですが、それにはやはり条件があります。まず、ハイディ、ニー、フローと同じく、出席するヒトを他薦と抽選で選ぶこと。そして、南北からの出席者は、各々三名とすること」

 その言葉とともに、スクリーンの表示が変化した。


|   1. クローをホモ属ではないと政治的に判断し、相応の対応をする

|   2. クローに後見種族をつける

|   3. 南北のクローの参加を認める

|    3.1. 出席者の選出方式は他薦と抽選による

|    3.2. 出席人数は北部連邦より三名、南部連邦より三名


「このような提案をします。誰でもかまいません。意見を述べてください」

 しばらく会議場は静かだった。

「それでは」

 北のクローの一人が言った。

「3.2.のほうだが、北から三名だと、ハイディなどの五名よりすくないが」

「では、クローの出席者は北だけから五名としますか?」

「そういうわけにもいかないが……」

 南北のクローがそれぞれ静かに議論をはじめた。

「議論に際して、ハイディなどより一つ多くの脳をクローが持っているというのは有利だと思いますが?」

「それは南北のクローを合わせた場合だ」

 また北のクローの一人が応えた。

「北部連邦は、北部連邦枠として五名の出席を求める」

「その場合、北部連邦と南部連邦が、各々人類格を求めるのでしょうか? 五名というのは、そういう意味ですが? どちらがクローという名を使い続けますか? それとも南北ともに別の種名を採用しますか?」

 ハイディ・マーシパルはいったん言葉を区切った。

 スクリーンにはマーシパルの言葉を受け、項目が追加された。


|   1. クローをホモ属ではないと政治的に判断し、相応の対応をする

|   2. クローに後見種族をつける

|   3. 南北のクローの参加を認める

|    3.1. 出席者の選出方式は他薦と抽選による

|    3.2. 出席人数は北部連邦より三名、南部連邦より三名

|   4. 南北のクローは、ホモ属の異なる種である


「そして、どのように南北のクローが異なる種であると明らかにするのでしょうか?」

 ハイディ・マーシパルは、またそこで言葉を切り、南北のクローを見た。

 南北のクローは、静かに議論をはじめ、その声はしだいに大きくなった。

 バンスマンは、クローの議論を眺めていた。

「おもしろいな、クローの議論は。そう思わないか? クランス。どうも見ているかぎり、デバイスを活用しているように見えないんだが。使ってはいるんだろうが」

「そうか?」

 ニー・クランスもクローの席に目を向けた。

「ほら、あそこだ。クラスタのアルファがベータ以下に、あるいはアルファとベータがそれ以下に指示を出してるように見える」

 バンスマンはクローの席の片隅を指差した。

「そして、ベータかそれ以下が話している。と同時にアルファは、別のクラスタのアルファと話している」

「そうも見えるな」

「あぁ。そしてベータかそれ以下からアルファに返事が返る。するとだ…… ほら、ここでアルファから大声が挙がる」

「そう見えないこともないが」

 バンスマンはクランスに向き直った。

「私たちがこういう場合に、どうデバイスを使う?」

「議題を示した資料を誰かが用意して、あとは参加者によるコメントと改訂だな」

「今、クローがそういう使いかたをしているように見えるか?」

 ニー・クランスはクローの群をゆっくりと見た。各々のクラスタを観察した。


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