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3. 証言:Alibi

「やれやれ、チープな推理ドラマみたいになってきやがったぜ……。まあいい、誰かその時間帯のアリバイを証明出来る奴は?」


「その時間なら、私と須田殿、それとあと、橘殿も一緒に居た。三人それぞれ互いのアリバイなら証明出来る」


 冬真と橘の名を挙げたのは刀条だ。二人以上と共に居たということになると、アリバイとして立証するには充分だ。


「冬真、波流ちゃん、そりゃ本当か」


「え、あの、はい、本当です。天夜さんは知ってると思いますが、私昨日の夜、図書室で調べ物をしていて結局眠れなかったんです。

 それで四時半くらいだったかなぁ……調べ物に疲れて飲み物を貰うために食堂に向かおうと玄関ホールに差し掛かったら、須田さんが苦しそうに倒れていましたよ。須田さんは太いパイプにもたれかかってういて、それを介抱していたのが刀条さんでした」


「ほほーう、テンヤン……そういうことですか……」


 突然ニヤニヤしながら明鏡が横槍を入れてきた。


「て、テンヤンってなんだよ」


「天夜だからテンヤンに決まっているのだ」


 なんとも言えぬネーミングセンスのあだ名を付けられた。というか、何故こいつは終始下卑た笑みを浮かべてやがる。十六歳の年頃の少女の顔じゃねえぞ。


「そういうことってどういうことだ」


「そりゃもちろん、夜這いでもかけようと……」


「してねえ」


「嘘は良くないなぁ」


「黙れ、アホガキ」


 もう無視しよう。なんだか構うだけ時間も気力も無駄な気がする。


「それで、冬真が倒れてたってのは何があったんだ? 具合でも悪かったのか? しかもそんな朝早くから」


 この中でたった一人の一般人である冬真の身を案ずると、彼は少し俯いた。


 征乱者でも調律者でもない彼が、“天力”と“覇力”が同時に入り乱れるような場所へ来てしまったのだ。いまだ解明されていないことが多い力によって、一般人である冬真になんらかの副作用や影響を及ぼしたと考えられてもおかしくはない。


「うん……部屋で寝ていたはずなのに、なんかよくわかんないけど気付いたら玄関ホールの壁際にもたれかかってて、凄く気分が悪かったんだ。耳鳴りも酷かったし、脳を内側から抉り取られる感覚だったよ」


「……なんだそりゃ。んで、刀条は何故その時間に玄関ホールに?」


「私は朝の稽古を終えたところだったのだ。父に仕込まれた剣の技術を磨くため、真剣の素振りを毎朝五千回が日課なのでな。武道場でやらせてもらっていたのだ。

 その後自室に戻ってシャワーを浴びようと思い、武道場を出て玄関ホールを通りかかると彼が壁にもたれかかるようにして気絶していたところを見つけ、介抱したのだ」


 三人の証言の辻褄は合っている。何処にも嘘は無さそうだ。仮に三人がグルであって、口裏を合わせようにも、接点や利害関係が見当たらない。


 そもそも、彼女たちにひねくれジャックであるという確証も無ければ、ただのメイドを殺害する動機が見当たらないのだ。

 一応はこの三人の容疑は低いとみて間違いないだろう。


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