第一話 VS起動せよ
雲ひとつ無い、とても晴れた空。気持ちのいい朝。一人の少女が学校へ行くため家を出た。
?「藍夏!」
藍夏「お、相変わらず早いですな瑞菜ちゃん!」
藍夏と同じ制服を着た瑞菜という少女が家の前で待っていた。彼女は真面目な性格でいつも同じ時間には藍夏の家に来ている。
瑞菜「そんなに早いかな?」
藍夏「もっと、ゆっくりしていってね。」
瑞菜「はは…」
苦笑いをする瑞菜。
二人は駅に向かって歩きだす。
藍夏「はぁ…月曜日、嫌だなぁ。日曜日が良いよぅ〜」
瑞菜「藍夏は本当に戦隊モノが好きなんだね。」
藍夏「いや、昨日はグリーンとイエローがさぁ…本当にカッコいいよな!あんな風に戦いたいな!」
空中に向かってパンチやキックを繰り返し行っている藍夏を見て、瑞菜はまた苦笑いする。
瑞菜「まるで男の子みたい。」
藍夏「そうか?そんな事より着いたぜ!」
しばらく経った後、電車に乗った。
二人が通う学校は都心部にある私立の高校、電車の窓からでも高層ビルが建ち並んでいるのが良くわかる。
藍夏「え…?何?」
瑞菜「どうしたの?藍夏。」
『…アナタハエラバレシモノ……』
藍夏「何か、声が…選ばれし者?」
頭の中から不思議な声がずっと聞こえた。
その後地震が起きた。
−
瑞菜「…か、起きて!藍夏!」
二人は電車から外に放り出されていた。
藍夏「み…ずな?瑞菜!大丈夫か?血出てるぞ!?」
瑞菜の額には擦り傷ができていた。
瑞菜「私は平気、それより藍夏はどこか痛い所無い?」
藍夏「私?私はこの通り!」
そう言って、藍夏は勢いよく立ち上がった瞬間。左足首から激痛が走る。
藍夏「痛い!足首捻ったっぽい…」
瑞菜「立てる?肩貸そうか?」
周りには燃えている建物や自動車があり、藍夏たちのように歩いている人々もいる。
『…タタカイナサイ……』
藍夏「うっ…また声が…」
瑞菜「嘘!?私にも聞こえる…」
声は二人に聞こえていた。
藍夏「さっき…『戦いなさい』って。」
瑞菜「戦うって言っても、何と戦うの?」
−
目の前には醜い形をした全長5メートル以上に及ぶ獣の形をした生き物…
?「私はIFDを倒すためにいる…」
一人の少女は言った。
通信機「優希、VSを起動しなさい。」
持っていたケースから一つ腕輪を取り出し、それを腕に着ける。
優希「了解、ヴァルキリー・システム起動。」
その言葉を合図にして、腕輪が輝き始める。
優希「武装展開、装着開始。」
次の瞬間、少女が着ていた衣服が分解され鎧とマントに変わる。その姿はまさに『ヴァルキリー』だった。
通信機「異常なし、そのまま戦闘に移行する。」
優希「了解、ヴァルキリー・ソーサラー行きます。」
−
藍夏と瑞菜は大通りの方へ向かっていた。
瑞菜「やっぱり行かない方がいいんじゃ…」
藍夏「そうかもしれない…でも、なんだろう…すごいワクワクしてる。行かなくちゃいけない気がする…」
不思議な声に導かれた藍夏はもう誰も止められない。
瑞菜「仕方ないか、私も藍夏に付いていくよ。」
『…キヲツケナサイ……』
藍夏「瑞菜!」
瑞菜「うん…分かる、何か来る。」
大通りで誰かが獣の形をした何かと戦っている。
優希「アイシクル・ブレード!」
無数の氷の刃が獣を切り裂く。その衝撃が二人の方へも飛んでくる。
藍夏「何?何があったの!?」
瑞菜「よくわからない…」
優希「あなたたち、何をしているの!?」
彼女は二人の声に気付いた。
藍夏「何してるって、あんたこそ何をしてるんだ?コスプレなんかしてさ。」
よく分からない生き物と戦っているのが鎧とマントを身につけた少女であれば、誰だって自分の目を疑う光景である。
優希「そんな事より、早くここから逃げなさい!」
藍夏「嫌だね!私たちはここに来るよう言われたんだ!」
『…ウデワヲサガシナサイ……』
瑞菜「藍夏!あそこに何かある!」
指を指した方向にはケースが落ちていた。
優希「そ、それは!?それに触るな!」
獣「グェェェェッ!!」
優希「…っ!」
いつの間にか獣は起き上がり、優希に襲いかかってきた。獣の爪が優希の肩の鎧を破壊する。
藍夏「あった…腕輪。」
ケースの中の腕輪を一つ取り出した。
藍夏「やるしかない!変身!!」
…
何も起きなかった…
藍夏「あれ?何て言えばいいんだ!?」
変な空気が流れた。
優希「ヴァルキリー・システム起動…武装展開、装着開始だ。…っく!」
瑞菜「だ、大丈夫ですか…?」
さっき攻撃を受けた肩からは血が出ていた。優希はその場で倒れた。
優希「だが、そう簡単にVSは起動できない…」
藍夏「行くぜ、ヴァルキリー・システム起動!」
腕輪を着けた右腕を高く挙げ、藍夏の好きなヒーローのような変身ポーズをとった。
瑞菜「あ…腕輪が…光ってる!」
優希「そんな…まさか!?」
三人は強力な光に包まれた。
藍夏「武装展開、装着開始!」
徐々に光が弱くなり、藍夏の姿が見えた。その姿は炎のように燃えるような赤い鎧とマントを身に付け、剣を構えた剣士のヴァルキリーだった。