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第12話(最終回):この重い愛ごと、あなたを包み込む

勇者ガイルたちが無様に逃げ帰った日の夜。ログハウスの静かなリビングには、暖炉のパチパチとはぜる音だけが響いていた。



「すぅ……すぅ……お肉、もう食べられないよぉ……」



ミオは昼間の緊張の糸が切れたのか、ソファーの上で毛布にくるまり、幸せそうに寝息を立てている。私とルミア様は、暖炉の前の絨毯に二人で並んで座っていた。いつもなら、ルミア様は私の腕に絡みついたり、膝枕を要求してきたりするのに、今夜の彼女は少し離れた場所で、背筋をピンと伸ばして正座をしている。



「……アリスさん。お話ししたいことというのは、私の『過去』のことです」



ルミア様が静かに口を開いた。その横顔は、教会で信者に祈りを捧げる時のような、ひどく透明で、今にも消えてしまいそうな儚さを帯びていた。



「私は物心ついた時から、『歴代最高の聖女』として教会に隔離され、育てられました。来る日も来る日も、重病人を治し、呪いを解き、笑顔で人々に希望を与える。……ただそれだけを強要される『奇跡を起こすための道具』でした」



「ルミア様……」



「心が完全に壊れかけていた時、教会の命でガイルのパーティーに入れられました。あの中は地獄でした。誰もが私の回復魔法を当然のものとして扱い、私自身には見向きもしない。……限界でした。私はある日、魔物の群れの中で、わざと回復魔法を使うのをやめて、殺されようとしたんです」



衝撃的な告白に、私は息を呑んだ。あの完璧で無敵に見えるルミア様が、そんな絶望を抱えていたなんて。「でも、その時です。私の体に、温かくて、とても優しい魔力が流れ込んできました」ルミア様は、熱を帯びた瞳で私を見つめた。



「『精神安定マインド・ヒール』と、『疲労極大軽減』の付与魔法。……さらにあなたは、戦闘が終わった後、泥だらけの私に水筒の温かい紅茶を差し出して、こう言ってくれましたね。『ルミア様、いつもありがとうございます。でも、無理しないでくださいね。痛い時は痛いって、泣いてもいいんですよ』と」



(……ああ。そんなことも、あったっけ)



私にとっては、裏方として当然の気遣いだった。でも、ルミア様にとっては違ったのだ。



「私を『道具』ではなく、『痛いと泣いてもいい人間』として扱ってくれたのは、生涯でアリスさん、あなただけでした。その瞬間から——私の心臓は、あなたのためだけに動くようになったのです」



ルミア様は私の目の前に跪き、私の両手をとって、ご自身の額に押し当てた。その手は、小刻みに震えている。



「私は聖女なんかじゃありません。あなた以外の人間はどうでもいい。あなたが他の誰かに笑いかけるだけで、嫉妬で気が狂いそうになる。ガイルたちを排除したのも、彼らが憎かったからではありません。あなたの美しい記憶の中に、あんなゴミどもが存在していること自体が許せなかったからです」



ポツリ、ポツリと、私の手の甲にルミア様の涙がこぼれ落ちる。「私の愛は、異常です。重くて、仄暗くて、きっとあなたを息苦しくさせる。



……本当は、あなたがこの狂気に気づく前に、辺境の鳥籠に閉じ込めてしまおうと思っていました。でも、今日のあなたを見て、騙し討ちのような真似はしたくないと思ったのです」



ルミア様は、涙で濡れた顔を上げ、すがるような目で私を見上げた。「アリスさん。……こんな、重くて恐ろしい私でも、そばにいてくれますか? 私のすべてを、受け入れてくれますか?」



それは、完璧聖女の仮面を完全に捨て去った、ただの一人の不器用な少女の、血を吐くような告白だった。



「……ルミア様は」私は、ルミア様に握られていた手をそっと抜き取った。ルミア様の顔が絶望に染まり、青ざめていく。



「あ……ああ……やはり、嫌ですよね。こんな重い女……」



「ルミア様は、本当に不器用なんですね」私はふっと微笑んで、抜き取った両手で、ルミア様の涙に濡れた頬を優しく包み込んだ。



「えっ……?」



「私、魔法の才能はあっても、自分の価値はずっとわからなくて。だから、ルミア様が『私には価値がある』って全力で肯定してくれたのが、本当に嬉しかったんです。



鳥籠でもなんでもいいですよ。ルミア様が私を必要としてくれるなら、私はずっとルミア様の専属付与術師でいます」「アリス、さん……でも、私の愛は、重いですよ……?」おずおずと尋ねるルミア様に、私は胸を張って答えた。



「大丈夫です。私、すごい付与術師ですから。ルミア様の重い愛くらい、『重量極大軽減ウェイト・ダウン』の魔法で、軽々と抱え込んでみせますよ!」



少し的外れかもしれない、私なりの冗談混じりのプロポーズ。それを聞いた瞬間、ルミア様は目を丸くして——次の瞬間、吹き出すように笑い、そして声を上げて泣きじゃくった。



「っ……あははっ! ああ……本当に……あなたは、どうしてそんなに……!」



ルミア様は私の腰に腕を回し、私の胸に顔を埋めて、子供のように泣き続けた。「愛しています。愛しています、アリスさん。私の神様……」



「私もですよ、ルミア様。……ほら、泣かないで」私はルミア様の美しい金髪を優しく撫でながら、そっと彼女の額にキスを落とした。



ルミア様は頬を赤く染め、今度は私の唇に、触れるだけの甘くて熱いキスを返してくれた。パチパチとはぜる暖炉の火だけが、二人の誓いを静かに祝福していた。



***



「——チュンチュン」



翌朝。森の小鳥のさえずりで目を覚ました私は、いつものようにルミア様にタコのように絡みつかれている状態から抜け出し、キッチンへ向かった。



「ふわぁ〜……お姉ちゃん、おはよう。なんだかいい匂いがするー!」ミオが犬耳を寝癖でボサボサにしながら、起きてきた。



「おはよう、ミオちゃん。今日は特製のパンケーキだよ。……あ、ルミア様もおはようございます」



寝室から、純白のネグリジェ姿のルミア様が優雅な足取りで現れた。昨夜の涙はどこへやら、その顔にはいつもの「完璧で慈愛に満ちた(そして私への独占欲がカンストした)微笑み」が張り付いている。



「おはようございます、私の愛するアリスさん。今日のあなたも最高に愛らしいです。さぁ、朝のエネルギーチャージ(ハグ)を……むっ」



私に抱き着こうとしたルミア様と、私の足元でしっぽを振るミオの視線がバチバチと交差する。「ミオさん。アリスさんの神聖なパンケーキを食べるのですから、顔を洗ってきなさい。手のかかる駄犬ですね」



「うぅ〜、ルミアお姉ちゃんは朝から小言ばっかり! お姉ちゃん、ルミアお姉ちゃんがイジメるー!」



「イジメてなどいません。私はただ、この愛の巣の風紀を守っているだけです。さぁ、アリスさん、私にあーんをお願いします」



「はいはい、二人とも喧嘩しないで。ルミア様も、自分のフォークを使ってくださいね」



「嫌です。私は一生、アリスさんに養ってもらうと決めたのですから」言い争いながらも、どこか楽しそうなルミア様とミオ。その様子を見ながら、私はふっくらと焼き上がったパンケーキを三つのお皿に取り分けた。



勇者パーティーを追放され、孤独に王都を去ったあの日の私。でも今は、重すぎる愛を向けてくれる完璧聖女と、騒がしいけれど可愛い妹と一緒に、世界一幸せな食卓を囲んでいる。



辺境のログハウスには、今日も騒がしくて、温かくて、最高に甘い私たちの日常が響き渡っている。私のアリスさん至上主義のスローライフは、まだ始まったばかりだ。



【おわり】


最後まで読んで下さってありがとう御座います。この作品は、生成AI Gemini 3.1によって執筆されました。

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