表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/97

第7話 平和ボケと、貧困という名の「真犯人」

(視点:アル)


「……『滅ぼすのでなく、別の道を見つけたい』……か」


寮のベッドの上。  


僕は枕に顔を埋めながら、昼間自分が放った言葉を反芻していた。


言っちゃった。  


とうとう、言っちゃった。


 あの瞬間の教室の空気、思い出しただけで胃が痛い。  

絶対「アイツ頭おかしい」って思われた。

「親を殺されたのに日和った腰抜け」だと。


 でも、口をついて出てしまったのだから仕方がない。  


あれは僕の、いや――**「前世の僕(日本人)」**の、骨の髄まで染み込んだ経験則だったからだ。


 天井を見上げ、大きく息を吐く。


 そう。僕は一度、死んでいる。  

場所は地球、日本。  職業は、途上国のインフラ支援をするエンジニア崩れの活動家。


 そこでの経験が、今の僕の思考回路(OS)を作っている。


 僕の根っこにあるのは、まず**「日本国憲法」だ。  


その前文と、三大原則のひとつ、「平和主義」**。  

実態はどうあれ、「戦争放棄」という概念を刷り込まれて育った人間にとって、「敵だから殺す」「やられたらやり返す」という解決策は、どうしても生理的に受け付けない。



脳が拒絶反応を起こすんだ。


 だから、とっさに「もったいない」という言葉で取り繕った。  


戦争はコストがかかる。

資源の無駄だ。

生産性が低い。  



そうやって「損得」の話にすり替えれば、この世界の人たちにも伝わると思ったからだ。


 ――でも、それだけじゃない。  


僕が「滅ぼす」を選ばない本当の理由は、もっと泥臭いところにある。


 **「貧困」**だ。


 前の世界で、僕は嫌というほど見てきた。  


井戸が枯れた村が、隣村の水源を奪いにいく姿を。  


仕事がない若者が、わずかな金を稼ぐために銃を持つ姿を。


 彼らは、生まれつきの悪人だったわけじゃない。  

ただ、腹が減っていたんだ。  ただ、今日を生きるためのリソースが足りなかっただけなんだ。


 「貧困が、争いを生む」。


 それが、僕が前の人生で見つけた、残酷な世界の真理だ。  

逆に言えば、腹が満たされ、仕事があり、明日の生活に不安がなければ、

人はわざわざ命を賭けてまで争わない。


 この世界だって同じはずだ。


 ドワルガ先生の研究データによれば、魔族が人間を襲うのは「魔石エネルギー」が不足しているからだという。  


彼らにとっての魔石は、人間にとっての「米」や「パン」と同じだ。


 つまり、魔族は「侵略者」である以前に、**「飢えている集団」**なんだ。


「……飢えている相手を皆殺しにして、それで平和になりましたって、そんなの解決じゃないだろ」


 ポツリと呟く。


 もし魔族を全滅させたとしても、今度は人間同士で奪い合いが始まるだけだ。  現に王都のスラムでは、人間と獣人が職と食料を巡っていがみ合っている。


 敵は「魔族」じゃない。  



**「足りないこと(貧困)」**そのものだ。


 だから僕は、剣で敵を薙ぎ払う「英雄」にはなれない。なりたくない。


 僕がやりたいのは、井戸を掘ることだ。  

作物が育つ土を作ることだ。  

壊れた橋を直して、交易路をつなぐことだ。


 「奪わなくても足りる仕組み」を作ること。  


それが、僕の知っている唯一の、そして最強の「平和維持活動」なんだ。


 サイドテーブルに手を伸ばし、水差しを傾ける。  

コップに注がれたのは、水じゃなくて薄めた果実酒だった。  

ドワルガ先生の差し入れだ。

『栄養剤だ』って言ってたけど、どう見ても酒だ。

あの人、教育者としてどうなんだ。


 一口飲む。カッと喉が熱くなる。


「……でも、言っちゃったもんは仕方ないな」


 教室で、ルシアって子が笑ったのを思い出す。  


『最高にバカだね』って。  


『でも、嫌いじゃない』って。


 彼女の目を見て思った。あの子もきっと、何か別の「飢え」を知っている目だ。


 剣を抜かずに勝つ。  


敵を倒すんじゃなくて、敵が戦わなくて済む世界を作る。  


「滅ぼすのではなく、別の道を見つける」。


 それがどれだけ難しいか、前の世界で嫌というほど知っている。  



綺麗事だと笑われるのも、慣れている。


 それでも――  僕は、この世界に「日本仕込みの平和主義」と「対貧困のインフラ整備」を叩き込んでやるつもりだ。


「見てろよ、女神様。  あんたが期待したような『魔王を倒す勇者』にはなれないかもしれないけど……  あんたが想像もしなかったような『飢えない国』、作ってみせるから」


 飲み干したコップを置き、ニヤリと笑う。


 さて、まずは情報収集だ。  

旧領地の汚染状況、魔族側のエネルギー事情、それから……あのドワルガ先生が隠し持ってるに違いない「土木工事に使えそうな魔導具」のリスト。


 やることは山積みだ。  


落ち込んでる暇なんて、それこそ「もったいない」。


 僕は布団を跳ね除け、机に向かった。  夜はまだ長い。日本の社畜根性、ナメてもらっちゃ困る。

こんな感じで、途中、途中区切りで主人公視点を書いて、盛り上げていきます。

何か感想があったらよろしくです。

しばらく、朝、夜1話ずつ掲載してみようと思っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ