EPISODE 7 : 食堂
昼休みのチャイムが鳴った瞬間、教室は一気に賑やかになった。
ビオが素早く立ち上がり、セルヴァの机を軽く叩く。
「急ご!早くしないと“チョコミロン”なくなるよ!」
セルヴァは小さく笑った。
「そんなに人気なの?」
「人気どころじゃないよ。アステルヴェイル高校の名物だからね。」
ビオの自信満々な言い方に、セルヴァは肩をすくめた。
ふたりは混雑した廊下を抜け、食堂へ向かう。
すれ違う生徒たちが、ちらりとセルヴァを見る。
好奇心が混ざった視線。でも、いやらしさはない。
食堂に入ると、温かい香りと活気が広がっていた。
パン、スープ、カレー……どれも食欲をそそる匂いだ。
「ほら、あった!残り二つ!」
ビオがトレーの上のパンを指差す。
「危なかったね。」
セルヴァは笑いながらひとつ掴んだ。
ふたりは窓際の席に座り、包装を開ける。
昼下がりの陽光が机に落ち、どこか懐かしいぬくもりを作っていた。
「ねえ、戻ってきてどう?」
ビオがパンをかじりながら聞く。
セルヴァは少し考え、静かに答えた。
「変わったようで変わってない感じ……でも、自分だけは変わった気がする。」
「分かるよ、それ。」
ビオは優しく笑った。
ふと横を見ると、少し離れた席にカエルが座っていた。
ひとりで昼食をとり、外を静かに眺めている。
「カエル、相変わらず一人だね。」
ビオが小さな声で言う。
「話しかけないの?」とセルヴァ。
「うーん……話すけど、あの人のペースって独特だから。悪い人じゃないよ。ただ、距離感の使い方が上手くないだけ。」
セルヴァはその姿をしばらく見つめた。
落ち着いていて、まるで周囲の時間とは別の流れにいるようだった。
「そういう人、嫌いじゃないよ。」
セルヴァがそう言うと、ビオは嬉しそうに微笑んだ。
窓の外では、風に乗って城下町の匂いが流れ込んでくる。
遠くの景色に、薄い霧がゆらゆらと立ち始めていた。




