5/10
EPISODE 5 - 校門
アステルヴェイル高校の校門は、昔と同じ場所にあった。
けれど、戻ってきた自分は同じではない。
セルヴァは小さく息を吸い、歩き出そうとした。
「セルヴァ!」
ビオが手を振りながら駆け寄ってくる。
制服は少しラフで、自然体のまま。
「ほんとに戻ってきたんだね! 昨日、夢かと思ったよ。」
「夢にしては、空気がちょっと冷たいよ。」
セルヴァは控えめに笑った。
ビオは嬉しそうに隣へ並ぶ。
歩調が自然と合う。
「みんな見てると思うよ。噂じゃなくて、ただ…セルヴァだから。」
「セルヴァだから?」
セルヴァは首を傾げる。
「いるだけで、空気が少し変わる人っているでしょう?」
ビオはそれを当然のことのように言った。
言われたセルヴァは、否定も肯定もしなかった。
ただ受け止めた。
「もし、つらいことあったら言ってね。」
ビオの声は静かだった。
「言うのは、少し時間かかるかも。」
「うん。聞く準備だけはしておくから。」
その言葉は、押しつけではなく、ただの「居場所」だった。
霧はもうほとんど消えていたが、
どこかにまだ、やわらかく漂っているように見えた。




