Episode 2 - 机の上に残された小さな箱
三年ぶりに故郷へ戻ったセルヴァは、ただ普通の高校生活を送りたいと願っていた。
しかし、雨上がりに現れる薄い霧は、人々の「隠したままにしていた心」をそっと映し出す。
罪悪感、恐れ、言えなかった本音。
霧の中に揺らめく“影”は、まるで自分自身のもう一つの姿のようだった。
仲間たちと向き合いながら、セルヴァは気づいていく。
影は倒すものではなく、受け入れるものだと。
そして、その瞬間に初めて、人は前へ進む力を手に入れる。
これは、「戻る」物語であり、
「もう一度、自分になる」物語である
夜がゆっくりと落ちていく。
セルヴァは、久しぶりの自室で窓の横に座っていた。
薄いカーテン越しに、街灯の柔らかな光が壁に揺れている。
机の上には、小さな木箱が置かれていた。
彼女はそれをよく覚えている。
祖父が最後に残したものだ。
そっと蓋を開ける。
中には、古いメモと、少し曇った小さな水晶の指輪。
指でそっと拾い上げると、金属はひんやりとしていた。
だけど、その冷たさは懐かしい温度でもあった。
祖父の字は、丁寧で、無駄がなかった。
「雨上がりに現れる霧は、気象ではなく――観測者に寄り添う。」
セルヴァはその一行を長く見つめた。
理解できたわけではない。
ただ、その言葉が胸の奥に静かに触れた。
指輪を右手の薬指にはめる。
光らない。
何も起こらない。
それでも――「ここが居場所だ」と思えた。
静かな夜。
物語は、まだ声を出さずに進んでいる。




