Episode 1 - 雨上がりの駅
3年ぶりに故郷に戻ってきたセルバは、ただ普通の高校生活を送りたいだけだった。
しかし、雨上がりに漂う薄い霧は、人々の隠された想いを優しく浮かび上がらせる。
罪悪感、恐怖、そして語られざる真実。
霧の中で揺らめく影は、まるでセルバのもう一つの顔のようだった。
友人たちと向き合う中で、セルバはあることに気づく。
影は打ち負かすものではなく、受け入れるべきものなのだ。
そして、その時初めて、人は前に進む力を見つける。
これは帰還の物語であり、
奇妙な霧に心を揺さぶられるミステリーである。
列車がゆっくりと減速し、アステルヴェイル駅に停まった。
湿った空気と、雨の名残を含んだ土の匂いが漂う。
薄い霧がホームの端に溶け込むように広がっていた。
セルヴァは電車を降り、しばらくその場に立ち止まった。
目に映る景色は変わっていない。
けれど、胸の奥に感じる距離だけが、確かに変わっていた。
「……帰ってきた。」
誰にも聞こえないほど小さな声だった。
バス停へ向かう途中、行き交う人々の声や足音は、ただの背景として流れていく。
日常は止まっていなかった。
止まっていたのは、自分だけだ。
バスに乗り、窓側の席に座る。
ガラスに残った水滴が街の灯りを歪ませ、世界は揺らめく絵のように見えた。
家の前で降りると、昔と同じ木が立っていた。
ただ、少しだけ大きくなっている。
玄関の扉は、ノックする前に開いた。
「帰ったのね。」
母の声は、静かであたたかい。
セルヴァは小さく微笑んだ。
「うん、ただいま。」
抱きしめる時間は長くない。
それでも、確かに「帰った」と思えた。
そして物語は、静かに再び動き始める。




