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君しか見えない(笑)【完結】~バカ王子の末路~

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短編『姫様はお飾り正妃候補じゃありません』

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「君しか見えない」




「まあ♡」





この甘い言葉をささやけば、相手は誰でもとりこになる。




…はずだった。


「…けどもういいでーす♡ 離婚しまーす」


そう言って妻は出て行った。


一瞬、何を言っているのかわからなかった。


「えっ…えっ? ちょ、ちょっと待ってくれ!!」


慌てて彼女を追いかける。


わかってるのか!?

大勢の美女を切り捨ててわざわざ地味な君を選んだのは…

君が金のなる木だからなんだぞ!?


まずい!逃がすわけには行かない!


扉を開けた瞬間、大雨が僕を襲った。


「うわっ!」


お気に入りの革靴もジャケットもぐしゃぐしゃじゃないか。

確かに僕は水も滴るいい男だが、こんな豪雨に打たれる必要はない!


雨が激しくて、何も見えなかった。

それっきり彼女を見たのが最後だった。



「えっ!?」


全財産を引き落としてから出て行っていたと知ったとき、思わず声が出た。


僕の金遣いを支えていたのは、全部彼女の稼ぎだった。


結婚したら共同資産だろ!?なんて女だ!


そもそも勝手に出ていった身なのだから慰謝料は彼女が払うべきじゃないか!!


…まあいい。僕には国庫からの俸禄がある。

王子の特権だ。


「まだ余裕はある。僕は王子だからな」


彼女のお金は魅力的だったが、致し方ない。

そう言い聞かせて、恋人のもとへ向かった。


華やかな彼女の笑顔を見て、すぐ気分を取り戻す。

やっぱり僕には地味な元妻より、華やかな愛人が似合う。


今は面倒な事は忘れてしまおうーー



「は?慰謝料!? 意味わかんない!!」


恋人はヒステリックに叫んだ。


「絶対嫌なんだけど! 王子が払ってよ!お金あるでしょう?!」


ないよ!!

僕も妻への慰謝料を払わなければならないんだぞ!?


「勝手にして。あたしは知らないから」


…なんて女だ。

あんなに金をかけてやったのに。

ドレスも宝石も買ってやっただろう!?


なのに困ったときに助けもしない。

恩知らずにも程がある!


…放っておこう。

あの女のもとにも、すぐに弁護士が行くだろうし。

せいぜい怯えるがいい。


それよりも…そろそろ離婚の言い訳を考えなければ…。


元妻が勝手に出ていっただけだ。


僕は悪くないーー



「お前は自分のしたことがわかっているのか」


父上の声は怒りで震えていた。


「雨を呼ぶ能力がどれだけ国にとって重要かわからんのか?

お前のせいで今年は干ばつだ。領地にどれほどの打撃があったか!」


わかっていたさ、

だからやさしく接していたんだよ!


「父上!私のせいではーー」


「彼女に仕事を押し付け、愛人と豪遊していたことなど、とっくに知れ渡っておる」


!?…どうして…


「…お前の愛人が、パーティーで慰謝料の話を大声でしていたからな」


「…」


元恋人のヒステリックがまだ耳に残っている。


「お前には再教育が必要だな」


「えっ」


その後、僕は城に軟禁され、机に縛りつけられた。

財産は没収、遊びも禁止。

厳しい教師に叱られながら、一日中勉強させられる日々。


やがて王位継承の名簿からも、僕の名前は消されていた。


僕が…何をしたっていうんだ!!



「えっ…」


久々に軟禁部屋から出されたと思えば、待っていたのは政略結婚の報告だった。


「お前に拒否権はない」


結婚相手は十も年上の、恰幅のいい女性。

父上は「お前にはちょうどいい」と太鼓判を押した。


僕にはもう自由はないのか…?


ふと僕は鏡を見て、凍りついた。


げっそりとやつれ、くぼんだ目。

かつて国一の美男子と呼ばれた姿はどこにもない。

ただの哀れな男が、そこにいた。



結婚式は質素に行われた。

それは結婚相手の希望であった。

僕に選択権はなかった。


…彼女は、元妻は、いつでも僕に寄り添ってくれていた。

甘い言葉をかければ、照れながら微笑んでくれていた。


彼女は地味だった。

けれど笑顔は、かわいらしかった。


どうして今になってそんなことを思い出すのだろう。

年上の結婚相手を隣にして、急に思い出してしまった。


今日は結婚式にふさわしい晴れの日。

だが――僕の心の中には、止むことのない豪雨が降り続いていた。



今日は元夫の結婚式が王都で開かれるようだ。


噂によるとしっかり者のお嫁さんみたい、ぜひとも立派な王子に仕立て上げてください。


私は婚姻届けを出しに行くため、今から役所に向かう。


「行こうか」


「はい」


夫となる彼に微笑み、手をつなぎ歩いて向かう。


澄み切った青空は、まるで私の未来を祝福するかのようだった。



ここまで読んでくださり、

本当にありがとうございます!


ブクマや感想・評価など頂けたら、

とっても励みになります\(^o^)/


現在のメイン連載はこちら↓

『転生姫はお飾り正妃候補?愛されないので自力で幸せ掴みます』

https://ncode.syosetu.com/n5770ky/

※ざまぁ系ではありません


Twitterでも更新情報や裏話を流してます!

→ @serena_narou

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