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芽吹の隣で
冬の生温い風に吹かれ、
春の陽気な日差しに照らされたが、
あの花は、相変わらずだった。
願いを込めて、水をやって、
毎日愛情をかけて育ててきた。
花が咲くことはなかった。
しかし芽吹いてた。
確かに、芽吹いていたのだ。
雨は充分に降った。
何かある度に降った。
恐ろしく、静かな雨だった。
花からすれば、そんなのはどうだっていいはずだ。
僕の元で「咲きたい」と願ってるわけでもないし、そもそも僕を認識していないかもしれない。
咲いてほしいと願うのは僕のエゴでしかなかった。
芽吹いた姿に未来を見ていたのは、僕だけだ。
でもせっかく芽吹いたなら、
僕の元で咲いていってくれないか。
ずっと隣にいるから。
陽が差す日も、雨が降る日も。
枯れるまでずっと隣で笑うから。