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第8話 スリーチェと力とプランティの力


「まぁ!光魔法と言えば使える者は非常に稀と言われている超レア魔法ではありませんか!

 それを『準』高等魔法まで扱えるなんて!

 凄いですわ!コリーナさん!」

「当!然!だ!!!

 はっはっは!!!

 それでお前は誰だ!!」


スリーチェとコリーナさんが実に楽しそうにはしゃいでいる。

ただでさえ賑やかな2人が合わさることでその相乗効果は凄まじいものだった。


「バニラさん……貴女とは何処となく私と同じ『陰』の気質を感じます………」

「えっ」

「この陽キャ集団の中で一際暗く輝く地味目の光……

 も、もしかしたら貴女となら上手くやっていけるかも―――」

「少しよろしいだろうか」

「ひっ!は、はい、なんでしょ―――」

「彼女は引っ込み思案なだけで貴女のような他人との距離感が読めない人種とは根本的に異なると思う。

 彼女には私以外にも故郷にたくさんの友達がいるが貴女は?」

「おぼああああああッッッッッ!!!」


キャリーさんの無慈悲な一撃によりプランティさんが錐揉み回転しながら吹っ飛ぶ。

まぁ今のはプランティさんが悪いかな……


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「それでは早速……

《ディスカバー・エネミー》」


その『魔法名』を唱えると、スリーチェを中心に光の輪が広がり、一瞬のうちに周囲を通り過ぎて行った。


「これでわたくしの半径2キロ圏内にいる魔物の存在を感知出来るようになりましたわ」

「へぇ、そんなに……」

「今は全ての魔物を感知出来るようにしておりますが、探知する魔物の種類を絞ることで更に探知範囲を数倍に広げることもできますの。

 わたくしの見たことのある魔物限定ですけれどもね」


流石はアリーチェさんの妹だけあるというか……

一昨日もスリーチェがいてくれたらあの『ロック・リザード』の群れを相手にすることもなかったんだろうか……なんて事を言ったらアリーチェさんから睨まれてしまいそうだ。


「んで、今近くにいる魔物は?」

「ええっと……そうですわね……

 あ、あの岩場の陰におりますわ!」


スリーチェが指差す先にはかなり大きめの岩が見えた。

確かにあの岩なら『ロック・リザード』の姿をすっぽり隠せそうだ。

気付かず近づいていたら思わぬ不意打ちを食らって大変なことになっていたかもしれない……


「ようし!それならこっちの方から不意打ちしてやろうぜ!

 おいバニラ!《プレゼンス・ハイド》を……」

「あ!それでしたらわたくしにお任せください!」

「え?」


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


岩場の裏側にいる『ロック・リザード』は何の警戒もなく呑気に草を食んでいた。



「《ブロウアップ・ブラスト》!!」



遠くからそんな誰かの声がしたが『ロック・リザード』にとっては何の関係も―――



―――ッドォオオオオオ!!!


突如として『ロック・リザード』の足元から爆炎が吹きあがった―――


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「ふう……どうです!

 わたくしが最近になってようやく覚えた爆発魔法です!

 一定範囲内の地面から爆発を引き起こせるのですのよ!」

「探知魔法とそのコンボはちょっと凶悪過ぎじゃないかな……」


僕は若干引き気味に呟いた……


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


―――どたっどたっどたっ!


『ロック・リザード』がある生徒に向かって猛進してくる。

その生徒……プランティさんは鋭利な角で真っ直ぐに自分を狙ってくる『ロック・リザード』を前に微動だにしていなかった。


「ほ、ホントにプランティさん1人で……?」

「まぁ見ていてくださいな」


不安げな僕と全く対照的にスリーチェは余裕そうな面持ちでその様子を見守っている。


そして―――

『ロック・リザード』の角がプランティさんの身体を貫く―――ことはなかった。


―――ガッ!!!


僕はその光景を目撃し絶句した。


プランティさんが……

革手袋に包まれた右手で……

『ロック・リザード』の角を掴み、その突進を止めていたのだ―――


渾身の突進を止められた『ロック・リザード』は手足をバタバタとさせるもプランティさんから逃れることは出来なかった。


そして―――プランティさんは全長3メートルはある『ロック・リザード』を()()()()()


突然空中に放り出された『ロック・リザード』は何が起きたか分からないのか鳴き声すらあげなかった。


落下してくる『ロック・リザード』の腹へ向かって―――


「はあッッ!!!」


―――ドゴォッッッ!!!


プランティさんの蹴りが炸裂した!!


『ロック・リザード』はその衝撃で数十メートルは吹っ飛ぶ……!

あの黒いニーソックスに包まれた細い脚のどこにそれだけの力があるというのか……!


吹っ飛ばされた『ロック・リザード』は少しの間痙攣し……その後二度と動くことはなかった……


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「ひええ………」

「いやあ、凄まじいな……

 彼女は身体強化魔法の使い手なのかな……?」

「うふふ、ひみつですわ♪」


僕とスクトさんが驚嘆の溜息をつき……

スリーチェは自分のお付きの活躍にご満悦だ。


「あ、あの……お嬢様……

 あんな感じでよろしかったでしょうか……」

「ええ!流石ですわプランティ!

 やっぱりわたくしの思った通り貴女ならば誰の力を借りずとも1人で討伐が出来ますのね!

 素晴らしいですわ!」

「え、ええ……そうですね……そうですよね……

 私にパーティプレイなんて似合わないですよね………

 ソロ専で十分………

 1人で『ロック・リザード』討伐……ぼっち・ざ・ろっく……」


スリーチェの他意の無い賞賛をプランティさんがネガティブに捉え凹んでいる……

ホントにこの2人は相性いいのか悪いのか……


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


とまあ、新メンバー2人は見事に討伐を成し遂げて見せたのだけど……


「…………………………」


アリーチェさんは今だ黙されたままだ……


「あの……アリーチェさん……」

「…………………………」


僕が話しかけても反応なし……

今回のスリーチェの参加は昨日アリーチェさんが2人で話し合ったうえで決まったことだと思うのだけど……

やはりまだアリーチェさんは納得いってないのかな……


と、僕がそんなことを考えていると……


「あの子も成長しましたのね……」

「え?」


そんな呟きが聞こえ―――


「スリーチェ!」

「っ!は、はい!お姉さま!」


アリーチェさんがスリーチェに呼びかけた。

昨日までのこともあり、スリーチェもアリーチェさん相手には緊張気味だ。


「次はわたくしと一緒に討伐を行いますわよ」

「え……ええっ!」


スリーチェは驚きと若干の嬉しさが混ざった声を上げた。


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