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第7話 僕達と新メンバー


結局……僕はあの後キュルルともアリーチェさん達とも会うことはなく、自室に戻りその日を終えた。


そして、夜が明け……多分この学園に来て一番の静かな朝を迎えたのだった。

けど……僕は無意識のうちにあの2人の姿を探してしまっていた。


「毎朝毎朝勘弁して欲しい……なんていつも思っておきながら……

 調子がいい奴だよな、僕……」


そんなことを呟きながら、僕は1人森林地帯へと向かうのだった。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


《 校舎南側森林地帯・『(ゲート)』前 》


「各種『ポーション』やマジックアイテムの確認、ですか?」

「ああ、なんせこのチームの討伐数は頭一つ抜けているからね。

 その分アイテムの消耗率も激しい。

 万全を期すために入念に点検してから出発したいんだ」

「なるほど……了解しました。

 では我々は先に」

「ああ、こちらも準備が出来次第すぐに向かうよ」


そんなスクトさんと調査隊員さんの会話を聞きながら、僕はこっそりと周囲のチームメンバーに話しかけた。


「ミルキィさん達はスリーチェのこと、ご存じなんですか?」

「ああ、さっきスクトさんから事情は聞いたぜ。軽くだけどな」

「なんか色々あるみてぇだな……まぁ俺達としては特に文句はねぇよ」

「私……そのスリーチェって子の気持ち分かるよ……

 私も、もっと誰かの力になりたいって思うことよくあるから……」

「私としては単純に『探知魔法』の使い手がチームに入るのは戦力的な観点から歓迎する」


ミルキィさん、ヴィガーさん、バニラさん、キャリーさんからそんな返事が貰えた。

皆いい人達だ……


「おーい!!まだ行かないのかー!!??

 早く私の成り上がりストーリーの続きを展開させろー!!」


「ちなみに彼女には事情を話していない。

 何故ならふとした拍子に大声でぶちまけてしまう可能性が高いから」

「うーん、さもありなん」


僕達はぶんぶんと腕を回すコリーナさんを温かい目で見守っていた……


「なぁ、それよりもよぉ……」

「アレ……一体どうしたんだ?」


ミルキィさんとヴィガーさんがそう言いながらチラリと目を横に向ける。

そこには……


「………きゅる…………」


暗い表情で俯いているキュルルの姿があった……

普段とのギャップにその場の誰もが戸惑っているようだ。

まぁ、無理もないけど……


「それが僕にも分からなくて……

 昨日、アリーチェさん達の話を聞いてからああなっちゃったんですけど……」

「話って、その例のスリーチェって奴の話か?」


「ええ、それにアリーチェさん達のお姉さんに関するお話も……

 ―――あ」

「ん?何か心当たりあんのか?」


「キュルル……もしかして……」


「おっ!来たな!」


僕がその推測を言葉にしようとした直前、スクトさんの声がした。

振り向くと、アリーチェさんとファーティラさん達が森の入口方向からやってくるのが見える。


スクトさんの話によると、もしスリーチェが来るのならばコーディス先生に今日は休むということを伝えた後、森の入口でアリーチェさん達と合流してここまで案内する運びになっているらしい。


こうして遅れてアリーチェさん達が来たということは……


「…………………………」

「ど、どうも…………」


無言のアリーチェさんとファーティラさん達、そしてその後ろからおずおずとスリーチェが現れた。

勿論スリーチェの傍にはプランティさんも控えている。

昨日のことが尾を引いてるのか、それともコーディス先生に嘘をついてここに来たという後ろめたさからか、僕と初めて会った時のような活発さは見られなかった。


「おう!お前がアリスリーチェの妹か!

 俺はミルキィ=バーニングだ!」

「ヴィガー=マックスだ」

「キャリー=ミスティ。よろしく」

「バニラ=タリスマンです」

「コリーナ=スタンディだ!!

 それでお前は誰だ!!」


と、チームメンバーの紹介を進めている裏で僕はスクトさんに話しかけた。


「スリーチェとプランティさん、制服着てますけど……

 新しい入学者組はまだ貰ってなかったんじゃ?」

「2人だけ制服じゃなかったら目立つだろう?

 さっきアリスリーチェさんに渡しておいたんだ。

 昨日の内にリブラさんに事情を話して余っていたのを借りてきてね。

 あの人は細かいこと気にしない人だし、今回の事を話してもまぁ大丈夫だろう」


なんと用意がいい……


「あの、今回はわたくしのわがままでこんな……」

「そんなこと気にしてないよ!

 私達と一緒に討伐活動頑張りましょう!」

「『探知魔法』の使い手は貴重。

 かなり期待している」

「ま、そっちの事情はともかく、この活動に参加するってんなら単純に戦力として数えさせてもらうだけだ」

「だな、アンタらの家のことはアンタらに任せる。

 こっちは関係なく頼らせてもらうぜ」

「存分にこの私の活躍を目に焼き付けるがいい!!

 それでお前は誰だ!!」


「皆さん……!

 ええ!分かりました!

 わたくし、精一杯皆さんのお役に立って見せますわ!」


どうやらスリーチェはいつもの調子を取り戻したようだ。


「うう……知らない人がこんなに……

 しかもその人達とこれからパーティプレイだなんて……

 難易度ベリーハードなんてもんじゃない……」


と、木の陰に隠れて頭を抱えているのは勿論プランティさんだ。

この人はこの人でいつも通りだな……


「あ、皆さんにもご紹介しますわ!

 こちらはわたくしの付き人のプランタ=ガーデニングですわ!

 幼い頃からずっと一緒ですのよ!

 わたくしはプランティと呼んでますので皆さんもどうかそのようにお呼びくださいな!」

「あひぃっ!

 は、は、はじめまして!

 ぷ、プランタ=ガーデニングでしゅ!!

 プランティとお呼び頂いても、頂かなくても構いませんし!

 別にどんな呼び名でもいいですし!

 っていうか私なんて呼ぶ必要――

 ああもうコレまた同じ流れぇ!

 いやもういいです死にます!死ねばいいんでしょう!!」

「とりあえずパニくるとすぐ生を諦めるの止めて貰えません!?」


ナイフを取り出したプランティさんをすかさず羽交い絞めにした。


「まーたクセの強そうなヤツが……」

「イロモノ枠はもういっぱいいっぱいなんだけどな……」


ミルキィさんとヴィガーさんが色々と不安げにその光景を見つめている。

このチームの常識人枠として是非頑張っていただきたいものだ。


「さーて、それじゃあ新メンバーの紹介も済んだし、そろそろ僕達も出発しようか!」


そんなスクトさんの号令と共に、スリーチェ達を加えた新たな僕達のチームは『扉』へと向かうのだが……


「きゅる………………」

「…………………………」


キュルルとアリーチェさん……

妙に静かな2人の様子がどうしても僕の心に影を落としてしまうのだった……


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